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行政書士資格

2025/7/22

SWOT分析で事業の現状を把握しよう! 事業開始前の棚卸方法

皆さん、こんにちは。未来行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

これから開業を控えている皆さん、いよいよですね。これから ⾃分の事務所を構え、独⽴した専⾨家として歩みを始めるという⼤きな⼀歩を前に、期待と不安が⼊り混じりますよね。

「どんな分野に特化すべきか」「どうやって顧客を獲得するか」「同業他者との差別化をどう図るか」など、様々な疑問や課題が頭をよぎります。

そこで、私自身、長年新規事業の立ち上げ時に行ってきたのですが、事業開始前に⾃分⾃⾝と事業環境をしっかり「棚卸」するためのツールとして、ビジネスの世界で広く 活⽤されている「SWOT分析」をご紹介します。この分析法を使えば、これから 始める⾏政書⼠業の可能性とリスクを客観的に把握し、戦略的な⼀歩を踏み出せるのではないでしょうか。

1. SWOT分析とは

古代中国の兵法書「孫⼦の兵法」に「彼(か)を知り⼰を知れば、百戦して殆うから ず」という有名な⾔葉があります。これは「敵(⾃分以外の外部要因)の状況や能⼒を把握し、加えて⾃分の状況や能⼒を理解して戦いに臨めば、何度戦っても危険な⽬にあうことはない」という意味です。

この考え⽅は、ビジネスの世界にも当てはまります。SWOT分析は、まさにこの「彼を知り⼰を知る」ための実践的なツールなのです。

SWOT分析とは、以下の4つの要素から成るフレームワークです:

  • S=Strength(強み):あなたや組織が持つ内部的な⻑所や優位性 

  • W=Weakness(弱み):あなたや組織の内部的な短所や劣位性

  • O=Opportunity(機会):外部環境から得られる好機やチャンス

  • T=Threat(脅威):外部環境から 受ける可能性のある危険や課題

これら の要素は、下図のようなマトリックス(4象限)で表現されます。(下図参照)

マこのマトリックスを縦軸と横軸で⾒ると:

  • 横軸:内部要因(S‧W)と外部要因(O‧T)

  • 縦軸:プラス要因(S‧O)とマイナス要因(W‧T)

に分類されます。つまり、⾃分⾃⾝の内部に存在する強みと弱み、そして外部環境から⽣じる機会と脅威を、体系的に整理する⼿法なのです。

2. ⾏政書⼠業におけるSWOT分析の意義

⾏政書⼠として開業する際、SWOT分析を⾏うことには特別な意義があります。

⾏政書⼠業は⾮常に幅広い業務領域を持ち 、在留資格申請、遺⾔‧相続、会社設⽴、各種許認可申請、補助⾦申請⽀援など多岐にわたります。しかし、すべての分野で同時に専⾨性を発揮することは困難です。

またローカルビジネスの側⾯が強い⼀⽅で、法改正や社会情勢の変化など、全国的‧国際的な動向にも影響を受けます。

つまり、⾃分の強みを活かせる専⾨分野の選定や、地域の特性を踏まえたサービス展開が重要になるのです。SWOT分析を通じて、あなたならではの強みと、あなたを取り巻く環境の機会を掛け合わせることで、独⾃のポジショニングを⾒出すことができます。

実際、成功している⾏政書⼠事務所の多くは、「特定の分野に特化している」「地域の特性を活かした業務展開をしている」「独⾃のネットワークを構築している」など、⾃⾝の強みと環境の機会を巧みに組み合わせています。

3. SWOT分析の進め方(実践編)

それでは実際に、SWOT分析を⾏っていきましょう。ただ闇雲に思いついたことを書き出すのではなく 、以下のステップで進めると効果的です。

ステップ1:分析の⽬的と前提条件を明確にする

まず、なぜSWOT分析を⾏うのかという⽬的を明確にします。

  • 「開業する地域での差別化戦略を⽴てるため」

  • 「特化すべき専⾨分野を選定するため」

  • 「効果的なマーケティング施策を検討するため」

また、分析の前提条件も整理します。

  • 対象とする地域の範囲は?(市区町村レベル?都道府県レベル?)

  • 想定する競合は?(同じ地域の⾏政書⼠?他の専⾨職?)

  • 分析の時間軸は?(開業直後?3年後?5年後?)

ステップ2:外部要因(O‧T)から 分析する

SWOT分析は通常、外部要因から 分析します。なぜなら 、外部環境は⾃分ではコントロールできない要素であり、その中で⾃分の内部要因をどう活かすかを考えるためです。

Opportunity(機会)の例:

  • 地域の産業特性(製造業が多い、外国⼈が多いなど)

  • 法改正による新たな需要(働き⽅改⾰関連法、改正⼊管法など)

  • デジタル化の進展(オンライン相談の普及など)

  • ⾼齢化による相続‧遺⾔需要の増加

  • 創業⽀援施策の充実による起業増加

Threat(脅威)の例:

  • 地域の⾏政書⼠の飽和状態

  • 他⼠業(司法書⼠、社労⼠など)との業務境界の曖昧さ

  • AI‧⾃動化による定型業務の代替可能性景気後退による許認可申請件数の減少

  • 法改正による業務領域の変化

できるだけ具体的に、そして⾃分の置かれている環境に即して挙げていく ことが⼤切です。

ステップ3:内部要因(S‧W)を分析する

次に、⾃分⾃⾝の内部要因を分析します。

Strength(強み)の例:

  • 前職での経験(業界知識、専⾨スキルなど)

  • 保有資格(⾏政書⼠以外の資格や語学⼒など)

  • ⼈的ネットワーク(前職の同僚、友⼈、地域のつながりなど)得意分野の専⾨知識(相続税、会社法など)

  • 個⼈的な特性(コミュニケーション能⼒、⽂章⼒など)

Weakness(弱み)の例:

  • 実務経験の不⾜

  • 特定分野の知識不⾜

  • 営業‧マーケティングスキルの弱さ

  • 資⾦⼒の制約

  • 時間管理の課題

内部要因を分析する際は、⾃⼰評価のバイアスに注意しつつ、できるだけ客観的に⾃分を⾒つめることが重要です。時には信頼できる第三者の意⾒を聞く ことも有効です。

ステップ4:情報の整理と優先順位づけ

各象限に項⽬が出揃ったら 、それぞれの重要度や影響度を考慮して優先順位をつけます。すべての項⽬が同じ重要性を持つわけではありません。特に重視すべき項⽬には印をつけるなど、視覚的にわかりやすくすると良いでしょう。

4. 分析事例:新人行政書士のSWOT分析例

ここで、これまでの内容をより分かりやすくご理解いただけるように、架空の新人行政書士A氏に登場いただいて、彼のSWOT分析例を見たいと思います。実際はなかなかS・W・O・Tにきれいに分類できなかったり、コントラストのあいまいな特徴が出てきたりしますが、ひとまずは架空事例ということで見てください。

【A氏のプロフィール】

  • 製造業での実務経験と業界知識

  • 英語・ベトナム語の語学力

  • 外国人技能実習制度についての知識

  • 地元出身で地域のネットワークがある

Strength(強み):

  • 製造業での実務経験と業界知識

  • 英語・ベトナム語の語学力

  • 外国人技能実習制度についての知識

  • 地元出身で地域のネットワークがある

Weakness(弱み):

  • 行政書士としての実務経験がない

  • 営業経験が少ない

  • 遺言・相続分野の知識が浅い

  • 開業資金に限りがある

  • 認知度やブランド力はこれから

Opportunity(機会):

  • 地域に製造業が多く、外国人労働者のニーズがある

  • 市の創業支援センターが充実している

  • 近隣に大規模工業団地の拡張計画がある

  • 外国人技能実習制度の見直しで企業の対応ニーズが高まっている

Threat(脅威):

  • 同じ地域に在留資格に強い行政書士が2名いる

  • コロナ禍で外国人の入国制限がある

  • オンライン申請の拡大で単純業務の価格競争が激化

  • 地域の人口減少で長期的な市場縮小の可能性

5. クロスSWOT分析で戦略を立てる

SWOT分析で4つの象限を整理したら 、次は「クロスSWOT分析」を⾏います。これは、4つの要素を掛け合わせて、具体的な戦略を導き出す⼿法です。

①SO戦略(強み×機会):積極展開戦略

⾃分の強みを活かして、市場の機会をつかむ戦略です。

  • 例:語学⼒と外国⼈技能実習の知識を活かし、地域の製造業向けに「外国⼈雇⽤トータルサポート」サービスを展開する

  • 例:地域ネットワークを活⽤し、市の創業⽀援センターと連携した「起業家向け許認可取得⽀援」パッケージを提供する

②ST戦略(強み×脅威):差別化戦略

⾃分の強みを活かして、脅威に対抗する戦略です。

  • 例:単なる申請代⾏ではなく 、製造業での実務経験を活かした「企業内体制構築⽀援」まで含めたコンサルティングで差別化を図る

  • 例:地域の⼯業団地企業向けに定期訪問型の顧問サービスを提供し、継続的な関係構築で他の⾏政書⼠との差別化を図る

③WO戦略(弱み×機会):弱点補強戦略

市場の機会を活⽤して、⾃分の弱みを克服する戦略です。

  • 例:実務経験不⾜を補うため、市の創業⽀援センターと連携し、無料相談会を定期開催して経験を積む

  • 例:営業経験の少なさをカバーするため、製造業の経営者が集まる地域の勉強会に参加し、セミナー講師として知名度を上げる

④WT戦略(弱み×脅威):リスク回避戦略

弱みと脅威の両⽅に対処するための防御的な戦略です。

  • 例:資⾦⼒の制約を考慮し、当初はコワーキングスペースや⾃宅を活⽤して固定費を抑える

  • 例:遺⾔‧相続分野の知識不⾜を補うため、同分野を得意とする他の⾏政書⼠と協⼒関係を構築し、案件を相互紹介する体制を作る

クロスSWOT分析を通じて、4つの⽅向性から 戦略を検討することで、バランスの取れた事業計画を⽴てることができます。特に新⼈⾏政書⼠の場合、SO戦略(強み×機会)で早期に成果を出しつつ、WO戦略(弱み×機会)で段階的に弱点を補強していく アプローチが有効でしょう。

6. SWOT分析から得られるメリット

SWOT分析を行うことで、以下のようなメリットが得られます:

  1. 客観的な自己認識と環境理解

    :自分自身と事業環境を客観的に把握することで、現実的な計画立案が可能になります。

  2. 明確な差別化ポイントの発見

    :自分の強みと市場の機会を掛け合わせることで、他の行政書士との差別化ポイントを見出せます。

  3. リスク要因の早期発見

    :事前に脅威と弱みを認識することで、開業後のリスクに備えることができます。

  4. 効率的な資源配分の指針

    :限られた時間や資金をどこに投入すべきかの判断材料になります。

  5. 説得力のある事業計画の土台

    :融資申請や協力者への説明など、第三者に事業計画を説明する際の論理的な根拠となります。

7. 分析を行う上での注意点

①主観性と客観性のバランス

SWOT分析は分析者の主観に基づく部分が大きいため、自己評価のバイアスが入りやすくなります。例えば:

  • 自己肯定感の低さから強みを過小評価してしまう

  • 楽観的な性格から脅威を軽視してしまう

  • 興味のある分野にばかり機会を見出してしまう

このようなバイアスを軽減するためには、複数の視点を取り入れることが重要です。信頼できる友人や開業に共感してくれている前/現職場の同僚や先輩など、または他の専門家などに意見を求め、多角的な視点で分析しましょう。

②要素の粒度とバランス

分析を行う際、項目の粒度(大きさ・詳細さのレベル)が不揃いになりがちです。

  • 大きすぎる粒度:「コミュニケーション能力が高い」(具体性に欠ける)

  • 小さすぎる粒度:「Excelの関数が使える」(全体像が見えない)

適切な粒度で、かつバランスよく項目を挙げることを心がけましょう。また、すべての要素を無理に4つの象限に分類する必要はありません。分類が難しい要素は、「今後の検討課題」として別途リストアップしておくという方法もあります。

③定期的な見直しの必要性

SWOT分析は一度行って終わりではありません。外部環境は常に変化し、自分自身も成長します。半年に一度、あるいは法改正や社会情勢の大きな変化があったタイミングで、定期的に分析を見直すことをお勧めします。

8. まとめ:定期的な見直しの勧め

SWOT分析は、事業オーナーとして開業する前の「自己と環境の棚卸」として非常に有効なツールです。強み・弱み・機会・脅威を整理し、クロスSWOT分析で具体的な戦略を立てることで、より戦略的に事業をスタートすることができます。

しかし、分析結果はあくまで「現時点での認識」であり、絶対的な正解ではありません。実際に事業を進めていく中で新たな発見があったり、環境が変化したりすることは当然です。

そのため、SWOT分析は定期的に見直し、常に最新の状況を反映させることが大切です。特に開業後半年、1年といった節目では、当初の分析と実際の経験を照らし合わせて再評価することをお勧めします。

また、分析の結果を机上の空論で終わらせないために、具体的なアクションプランに落とし込むことも重要です。「いつまでに」「何を」「どのように」実行するかを明確にし、小さな一歩から着実に実践していきましょう。

新規事業の新たな旅の第⼀歩が、SWOT分析という羅針盤によって、より確かなものになることを願っています。

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