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制度・動向

2026/2/11

民泊事業と在留資格 ~外国人が日本で始める際の要件~ 

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

ここ数年、日本各地で民泊をめぐる様々な問題が報じられています。外国人観光客が深夜まで騒ぐ声がうるさい、ゴミの分別がされていない、マンションの共用部分に大きなスーツケースが放置されている――こうした声を耳にされたことのある方も多いのではないでしょうか。特に京都や大阪といった人気観光地では、観光公害、いわゆるオーバーツーリズムの問題として深刻化しているケースもあるようです。

政府の「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対策」においても、民泊やオーバーツーリズムへの対応が重点項目の一つに位置づけられており、無届民泊に対する取り締まり強化や地域の実情に応じた規制の検討が進められています。このような社会的な背景の中で、外国人の方が日本で民泊事業を始める場合、在留資格の面ではどのような要件があるのでしょうか。今回は、この点について詳しく解説していきたいと思います。

民泊事業の法的枠組み

日本における民泊事業には、大きく分けて3つの形態があります。それぞれ適用される法律や規制が異なるため、まずは基本的な枠組みを理解しておく必要があります。

住宅宿泊事業法に基づく民泊(いわゆる「民泊新法」)は、住宅宿泊事業法(2018年6月施行)に基づいて、年間180日を上限として自宅などを旅行者に有料で提供する事業形態です。都道府県知事への届出が必要で、比較的参入しやすい制度設計となっています。

旅館業法に基づく簡易宿所営業は、旅館業法に基づく許可を取得して営業する形態で、年間の営業日数制限がありません。ただし、許可取得には一定の設備基準を満たす必要があります。

国家戦略特区における特区民泊は、国家戦略特別区域法に基づき、一部の地域(東京都大田区、大阪府など)で認められている制度で、最低滞在日数が2泊3日以上(または6泊7日以上)などの条件があります。

外国人が民泊事業を行う場合の在留資格

外国人の方が日本で民泊事業を行う場合、その事業形態や関わり方によって、必要となる在留資格が異なります。ここでは主なパターンについて解説します。

経営管理ビザでの民泊事業

民泊事業を自ら経営する場合、最も一般的なのが「経営・管理」の在留資格です。ただし、単に民泊を運営するだけでは経営管理ビザの要件を満たさない可能性があります。なぜなら、経営管理ビザは「事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」を対象としており、一定の事業規模が求められるからです。

経営管理ビザで民泊事業を行う場合の主な要件は、2025年10月16日の法改正により大幅に厳格化されました。新たな要件としては、資本金または投資額3,000万円以上が必須となり、さらに常勤職員1名以上(日本人または身分系在留資格者)の雇用も同時に必要です。従来は「資本金500万円以上」または「常勤職員2名以上」のいずれかで要件を満たせましたが、現在は資本金3,000万円と常勤職員1名の両方が必須となっています。

加えて、申請者または常勤職員のいずれかが相当程度の日本語能力(日本語能力試験N2以上またはそれに相当する能力)を有すること、申請者が一定の学歴または経営経験を有すること、事業計画について専門家(公認会計士、税理士、中小企業診断士)による評価・確認を受けることなどが求められます。実際の事業所(オフィス)の確保も必要で、物件そのものだけでは不十分とされます。複数の物件を運営する本格的な民泊事業であることを示す、実現可能性の高い事業計画が不可欠です。

ここで重要なポイントがあります。投資目的での不動産取得は経営管理ビザの対象外です。例えば、「民泊用の不動産を購入して運用し、値上がりしたら売却する」という投資目的での不動産取得は、経営管理ビザの趣旨に合致しません。経営管理ビザはあくまでも「事業の経営・管理」を行うための在留資格であり、単なる不動産投資や資産運用は対象外とされています。

実際の事業計画においては、どのような顧客層をターゲットとするのか、年間の稼働率見込み、収益計画、リスク対策などを具体的に示す必要があります。また、住宅宿泊事業法に基づく届出や旅館業法の許可など、必要な法的手続きを完了していることも重要な審査ポイントとなります。さらに、2025年10月の法改正により、事業計画について専門家(公認会計士、税理士、中小企業診断士)による評価・確認が必須となっている点にも注意が必要です。

技術・人文知識・国際業務ビザとの関係

既存の民泊運営会社に雇用される形で、専門的な業務に従事する場合は、技術・人文知識・国際業務の在留資格が該当する可能性があります。ただし、単なる清掃や受付業務では該当しません。

該当する可能性がある業務としては、外国人観光客向けのマーケティング戦略立案、多言語での予約サイト運営・顧客対応、民泊物件の企画・開発業務などが考えられます。これらの業務は、大学等で習得した知識(例えば観光学、経営学、語学など)を活用する専門的な業務である必要があります。

永住者・定住者・配偶者ビザの場合

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者といった身分系の在留資格をお持ちの方は、就労に制限がないため、民泊事業を含むあらゆる事業を行うことができます。ただし、当然ながら住宅宿泊事業法や旅館業法などの関連法令は遵守する必要があります。

民泊事業における社会問題と規制の動向

外国人による民泊事業を考える上では、現在日本社会で起きている問題についても理解しておく必要があります。

オーバーツーリズムと地域住民との摩擦

京都や大阪などの人気観光地では、民泊施設の急増により、深夜の騒音問題、ゴミの不適切な処理、住民の生活道路の渋滞、マンション共用部分の無断使用などの問題が報告されています。こうした問題は、単に民泊事業者の国籍に関係なく発生していますが、特に外国人が運営する民泊では、日本の生活習慣や地域のルールへの理解不足から問題が深刻化するケースも見られます。

規制強化の流れ

こうした状況を受けて、政府は民泊規制の強化を進めています。具体的には、無届民泊に対する厳正な取り締まりの推進、各種民泊データの一元管理を通じた違法民泊の排除、地域の実情に応じた条例制定等のためのガイドライン見直し、不適切な民泊への厳正な処分・規制方策の検討などです。

また、出入国在留管理庁との連携方策も検討されており、在留資格審査の際に民泊事業の適正性がより厳格にチェックされる可能性があります。

外国人による土地取得と民泊

民泊事業を目的とした不動産取得については、特に注意が必要です。近年、外国人による不動産取得をめぐっては様々な問題が報じられています。

例えば、2021年12月から2022年1月にかけて、山梨県富士河口湖町でホテルを経営していた中国籍の男性が、ホテルからの富士山の眺望を確保するために、隣接する他人の敷地の樹木23本を無断で伐採したという事件がありました(2025年8月18日、甲府地方裁判所で懲役1年・執行猶予3年の有罪判決。テレビ朝日、YBS山梨放送等で報道)。また、人気観光地での外国人による不動産の大量取得により、地域住民が住宅を購入できないという問題や、景観破壊、地域コミュニティの崩壊といった問題も指摘されています。

政府の総合的対策においても、安全保障の観点からの土地取得等のルールについて検討が進められており、不動産登記における国籍把握、外国人によるマンション取得実態の把握、必要に応じた対応策の検討などが進行中です。

こうした社会的背景を踏まえると、外国人が民泊目的で不動産を取得し、経営管理ビザを申請する場合、事業の実質性や地域社会への配慮について、これまで以上に厳格な審査が行われる可能性があります。

適正な民泊事業運営のために

外国人の方が日本で民泊事業を成功させるためには、法令遵守はもちろんのこと、地域社会との良好な関係構築が不可欠です。

法令・条例の遵守

住宅宿泊事業法に基づく届出または旅館業法に基づく許可を確実に取得すること、自治体の条例(営業日数制限、地域制限など)を確認し遵守すること、消防法、建築基準法などの関連法令への適合、適切な民泊管理業者への委託(自ら管理しない場合)などが必要です。

地域社会への配慮

宿泊者に対する日本の生活マナー、ゴミ出しルールの徹底した説明、騒音防止対策の実施、近隣住民への事前説明と緊急連絡先の提供、地域の自治会・管理組合との良好なコミュニケーションなどが求められます。

私自身、板橋区で日本語教室のボランティアをしていますが、外国人の方々が日本の生活習慣に戸惑うことが多いのを目の当たりにしています。民泊事業を運営する場合、宿泊者に対してこうした点を丁寧に説明することが、地域との摩擦を避ける上で非常に重要です。

事業計画と在留資格審査のポイント

経営管理ビザで民泊事業を行う場合、在留資格の審査では事業計画の実質性が厳しくチェックされます。

事業の継続性・安定性の証明

複数物件の運営計画や、年間を通じた安定的な収益見込み、競合他社との差別化戦略、リスク管理計画(空室リスク、規制変更リスクなど)を具体的に示す必要があります。

投資の実質性

投資した3,000万円が実際に事業運営に使われていることを示す必要があります。物件取得費、内装・設備費、運転資金、常勤職員の給与(1年分)、広告宣伝費などの具体的な支出計画と実績を提示します。単に不動産を購入しただけでは、経営管理ビザの投資要件を満たさないとされるケースがあります。

経営への実質的関与と人材確保

申請者自身が実際に事業の経営・管理を行っていることを示す必要があります。事業計画の策定、物件の選定・契約、宿泊者対応の仕組み構築、収支管理などに実質的に関与していることが求められます。また、2025年10月の法改正により、常勤職員1名以上(日本人または身分系在留資格者)の雇用が必須となっており、その雇用契約や給与支払いの実態も審査されます。さらに、申請者または常勤職員のいずれかが日本語能力試験N2以上またはそれに相当する日本語能力を有していることも要件となっています。事業計画については、専門家(公認会計士、税理士、中小企業診断士)による評価・確認を受けることが必須です。

まとめ

外国人の方が日本で民泊事業を行う場合、適切な在留資格の取得と、法令遵守、地域社会との調和が不可欠です。特に経営管理ビザでの民泊事業については、単なる不動産投資ではなく、実質的な事業経営として成り立つ計画が求められます。

2025年10月16日に施行された法改正により、経営管理ビザの要件は資本金3,000万円以上、常勤職員1名以上の雇用、日本語能力要件、専門家による事業計画の評価など、大幅に厳格化されました。民泊事業をめぐる様々な社会問題が顕在化している現状において、外国人が民泊事業を始める場合、在留資格の審査はこれまで以上に厳格になっています。

そのため、事業計画の段階から専門家のアドバイスを受け、適法かつ地域社会に受け入れられる形での事業運営を目指すことが重要です。民泊は単なるビジネスではなく、外国人観光客と日本の地域社会をつなぐ架け橋となり得る事業です。適正な運営により、訪日観光客にとって快適な滞在を提供するとともに、地域経済の活性化にも貢献できる可能性を秘めています。


今回のコラムでは、民泊事業と在留資格の関係について解説させていただきました。いかがでしたでしょうか。民泊事業をめぐる社会問題と在留資格の要件について、皆さんのご理解の一助となれば幸いです。この記事についてご質問やご感想がございましたら、お気軽にお問い合わせフォームからお聞かせください。皆さんからのご意見は、今後のコンテンツ作りの参考にさせていただいております。

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