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2026/7/1

定住者から永住者へ 〜移行の要件・タイミング・準備の進め方〜   

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

定住者として日本での生活が軌道に乗ってくると、「次は永住を取りたい」と考える方が増えてきます。定住者は就労制限がなく生活の自由度は高いものの、在留期限が来るたびに更新手続きが必要です。更新のたびに書類を準備し、審査結果を待つというプロセスからようやく解放されるのが、永住許可という在留資格なんです。

ただ、定住者から永住申請を検討している方の中には、「10年住めば申請できる」という一般論しか知らなかったり、定住者には別の特例ルートがあることを知らなかったりするケースが少なくありません。また、2024年以降の入管法改正と2026年2月のガイドライン改訂によって、永住審査はこれまでより明確に厳格化されており、準備なく申請に臨むのは得策ではありません。

このコラムでは、定住者が永住申請を行う際の要件・タイミング・準備の進め方を、最新の動向を踏まえながら整理します。

永住許可の基本要件をおさえる

3つの要件が柱になる

永住許可の審査は、大きく3つの要件を軸に行われます。

まず「素行善良要件」です。犯罪歴や入管法違反、交通違反の累積がなく、日本の法令を守って生活していることが求められます。次に「独立生計要件」です。自分や家族が日本での生活を安定して維持できるだけの収入・資産があることが必要です。そして「国益適合要件」です。納税・社会保険・各種届出義務を適切に履行しており、日本社会の一員として貢献していると認められることが求められます。この3要件はどれかひとつでも問題があると不許可につながる可能性があり、特に近年は国益適合要件の審査が厳格化されています。

在留年数の原則ルールと定住者の位置づけ

永住申請の原則は、「引き続き10年以上日本に在留し、そのうち5年以上は就労資格または居住資格で在留していること」です。ここで重要なのは、定住者が「居住資格」に分類されているという点です。つまり、定住者として在留していた期間は、この「5年以上の就労または居住資格」の要件に算入されます。

定住者には「5年特例」がある

原則10年ではなく5年で申請できる

定住者にとって重要なのは、永住許可ガイドラインに定められた特例ルートの存在です。「定住者の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること」という要件を満たせば、原則の10年を待たずに永住申請が可能です。これが「定住者の5年特例」です。

「5年」の計算の考え方

この5年は、「定住者として5年」に限定されるわけではなく、一定の条件のもとで他の在留資格との通算が認められます。たとえば日本人の配偶者等として3年在留した後、離婚により定住者に変更し、さらに2年定住者として在留した場合、通算5年として要件を満たす可能性があります。ただし、通算のルールは在留資格の種類や変更の経緯によって異なるため、個別の在留歴の確認が欠かせません。

申請時に在留期間3年または5年の取得が必要

5年の在留年数と並んでもうひとつ重要な要件が、申請時点で「最長の在留期間」を有していることです。定住者の最長在留期間は5年ですが、実務上は3年を最長とみなす経過措置が長く続いてきました。しかし、2026年2月24日のガイドライン改訂により、この経過措置に明確な期限が設けられました。2027年3月31日までは在留期間3年でも最長とみなす取り扱いが継続されますが、2027年4月1日以降は原則として在留期間5年の取得が求められるようになります。現時点で3年の在留期間をお持ちの方は、この期限を意識した申請タイミングの検討が必要です。

審査で重視される3つの要件

国益適合要件 ――公的義務の完全履行が前提

国益適合要件の審査では、住民税・所得税の納付状況、国民年金または厚生年金の保険料納付状況、健康保険への加入状況が詳細に確認されます。「うっかり払い忘れた年がある」「年金の未納期間がある」という場合でも、その事実が審査に影響します。年収の目安は定住者の場合おおむね300万円程度とされることが多いですが、法律上の明確な基準はなく、扶養家族の人数や資産状況と合わせた総合判断になります。扶養家族が1名増えるごとに、おおむね70万円程度の上積みが必要と言われています。

また、2024年の入管難民法改正(令和6年法律第43号)により「永住許可取消制度」が新設されました。これにより、税金の未納は永住許可後の取り消し事由にもなります。許可を得ることと許可を維持することの両面で、公的義務の履行が求められる時代になっているんです。

素行善良要件 ――小さな積み重ねも記録に残る

刑事事件への関与はもちろん、交通違反の累積や入管法上の届出義務違反も素行面での評価に影響します。2025年後半からは、過去の入管への届出漏れが審査に影響するケースも報告されています。「一度だけだから大丈夫」という判断は禁物です。飲酒運転・無免許運転といった重大な交通違反は一度でも審査を大きく左右する可能性があります。

独立生計要件 ――世帯全体での安定が評価される

定住者の中にはシングルマザーや単身で生活している方も多く、独立生計要件の判断は世帯の実情に即して行われます。就労系在留資格と比較すると、定住者・配偶者等の身分系在留資格は世帯収入や資産での補強がある程度考慮される傾向がありますが、安定した収入の裏付けがあることに越したことはありません。雇用形態(正規・非正規)、継続雇用の見込み、社会保険の加入状況なども確認されます。

永住審査の厳格化という現実

2024年の入管難民法改正と2026年2月のガイドライン改訂を経て、永住審査の環境は大きく変わっています。かつては「長く住んでいれば通る」という感覚もありましたが、現在は公的義務の履行状況・在留期間の長さ・届出義務の遵守が一体として審査される仕組みになっています。

定住者からの申請も例外ではありません。5年特例で申請資格を得られるとしても、3要件のいずれかに不備があれば不許可になる可能性があります。申請を急ぐより、要件をしっかり整えてから臨む姿勢が、結果的に最短ルートになることを覚えておいてください。

申請タイミングと準備の進め方

5年到達前からできる準備

永住申請の準備は、5年の在留年数を満たした後ではなく、その前から始めておくのが理想です。具体的には以下の点を定期的に確認しておきましょう。

  • 住民税・所得税の納付漏れがないか

  • 国民年金・厚生年金の加入と保険料納付に問題がないか

  • 在留カードの住所と住民登録の住所が一致しているか

  • 源泉徴収票・確定申告書控えを毎年保管しているか

  • 交通違反・法令違反が積み重なっていないか

在留期間5年の取得を見据える

2027年4月以降の申請を見据えると、定住者として在留期間5年を取得していることが実質的な申請準備完了の目安になります。更新のたびに「次は5年を狙えるか」を意識しながら、生活実態を積み重ねておくことが大切です。

申請から許可までのスケジュール感

永住申請の審査期間は、申請が集中する時期や個別の事情によって異なりますが、許可まで4か月から8か月程度かかることが多いです。在留期限が切れる前に申請を行っていれば特例期間が適用されますが、精神的な余裕のためにも、在留期限の半年以上前を目安に申請できる状態を整えることをおすすめします。

なお、永住申請には身元保証人が必要です。身元保証人は日本に居住する成人で、永住者または日本国籍者が望ましいとされています。申請の準備と並行して、身元保証人を依頼できる方を早めに確保しておきましょう。

まとめ

定住者から永住者への移行は、原則10年ではなく「5年特例」という短縮ルートが用意されています。ただし、在留年数の要件を満たすだけでは不十分で、素行・独立生計・国益適合の3要件をすべてクリアしていることが前提です。2026年2月のガイドライン改訂により、在留期間5年の取得が2027年4月以降は原則として求められるようになる点も、タイミングを考える上で見逃せません。

「そろそろ5年になる」「永住を考え始めた」という段階で、まず自分の在留歴・納税履歴・社会保険の状況を整理することから始めてみてください。


今回のコラムを読んで、「自分の場合は5年の計算がどうなるのか」「今の在留期間で申請できるのか」など、気になる点が出てきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ご感想やご質問がございましたら、ぜひお気軽にお問合せフォームからお聞かせください。皆さんからのご意見が、今後のコラムづくりの力になります。

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