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制度・動向
2026/5/6
在留外国人376万人~「伸び率」が映す、数字が語る、これからの国籍地図〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
「日本に住む外国人が多い国といえば?」と聞かれれば、ほとんどの方が中国・ベトナム・韓国を思い浮かべるでしょう。事実、この3か国だけで在留外国人全体の半数以上を占めており、その構図は長年変わっていません。
ただ今回は、同じデータをまったく別の切り口から眺めてみたいと思います。「絶対数」ではなく「伸び率」——今どの国籍が急増しているかという視点で見ると、全く異なる国籍の顔ぶれが浮かび上がります。さらに、東京と大阪で国籍構成がどう違うか、コロナ前には目立たなかったのに2023年以降に急浮上してきた国籍はどこか、そして円安・賃金格差という経済的な背景まで、多角的な視点でデータの「景色の違い」を読み解いていきます。

まず現在地の確認——過去最高376万人
令和6年末(2024年12月末)時点の在留外国人数は376万8,977人で、前年末比10.5%増・約35万8,000人増となり、3年連続で過去最高を更新しました。
在留資格別では「永住者」が最も多く、次いで「技能実習」「技術・人文知識・国際業務」「留学」「家族滞在」の順に続いています。特定技能は前年末比36.5%増と、全在留資格の中で最も高い増加率を記録しています。
国籍別の上位5か国はこのとおりです。
1位:中国 87万3,286人
2位:ベトナム 63万4,361人
3位:韓国 40万9,238人
4位:フィリピン 34万1,518人
5位:ネパール 23万3,043人
この5か国で全体の約66%を占めており、アジア諸国が圧倒的多数という構図に変化はありません。ただ、5位に注目してください。かつて5位だったブラジルを抜いて、ネパールが初めてトップ5に入りました。これは後述する「伸び率の転換」を象徴する出来事です。
伸び率で見ると——主役が入れ替わる
同じデータを「前年末比の増加率」で並べ直すと、絶対数ランキングとはまったく別の顔ぶれが現れます。
1位:ミャンマー 55.5%増
2位:スリランカ 35.2%増
3位:インドネシア 34.0%増
4位:ネパール 32.2%増
対照的に、絶対数1位の中国の増加率は約6%台、ベトナムも同程度にとどまります。韓国にいたっては前年末比で918人の減少となっています。
絶対数で見れば「中国・ベトナム・韓国の時代」が続いているように見える。しかし伸び率で見れば、「ミャンマー・スリランカ・インドネシア・ネパールの時代」はすでに始まっているのです。この二重構造を理解することが、これからの外国人材の動向を正確に把握するうえで欠かせない視点だと思います。
なぜ増えているのか——4か国の背景
数字の背景にある事情を知ることで、今後の動向がより鮮明に見えてきます。
ミャンマー(55.5%増) には大きく2つの流れがあります。ひとつは特定技能・技能実習による就労目的の来日増加で、製造・建設・食品加工分野での受け入れが拡大しています。もうひとつが2021年の政変による影響です。政情不安を背景に日本での在留継続を選ぶ方が増えており、この2つの流れが重なった結果が55%超という突出した数字につながっています。
スリランカ(35.2%増) は近年の経済危機が背景にあります。日本での就労は現地と比べて賃金が4〜5倍程度になるともいわれており、日本語学習熱も急速に高まっています。令和6年末時点の全国ランキングで12位だったスリランカは、2025年6月末には9位へと3ランク上昇しました。
インドネシア(34.0%増) は人口2億7,000万人超を擁し、生産年齢人口が豊富で若年層の比率が高い国です。特定技能制度との親和性が高く、介護・製造・建設・農業など幅広い分野での受け入れが拡大しています。日本との二国間協力覚書(MOC)も締結済みで、制度的な受け入れ基盤が整っていることも増加を後押ししています。
ネパール(32.2%増) は絶対数でも5位に浮上しながら、伸び率でも32%を超えるという、規模と勢いを両立した国籍です。国土の大半が山岳地帯という地理的な制約から国内での大規模な雇用創出が難しく、海外就労が若者のキャリアとして広く定着しています。日本語学校から専門学校・就労へのルートと、特定技能・技能実習による直接就労ルートの両方が確立されており、東京・埼玉・神奈川・愛知を中心に定着が進んでいます。
なぜ「今この国々」なのか——円安と賃金格差という経済的背景
伸び率の転換を読み解くうえで、もうひとつ欠かせない視点があります。円安の進行と、国ごとの賃金水準の違いです。
2022年以降に加速した円安は、長年日本の主力供給国だったベトナムや中国の労働者にとって、日本で稼ぐ魅力を大きく損なう結果をもたらしました。ベトナムドンは2019年時点で1円あたり約220ドンだったものが、2022年10月には約162ドンまで下落しました。同じ給与を受け取っても、母国への送金額が実質的に大きく目減りしたのです。それだけでなく、ベトナム国内の最低賃金も同時期に約33%上昇しており、日本との賃金格差は着実に縮まってきています。
こうした変化を背景に、ベトナム人の新規来日希望者が減少し、オーストラリアや韓国など「より稼げる国」への流出が進んでいると指摘されています。実際、韓国の製造業における外国人労働者の平均給与は日本の技能実習生の平均を大幅に上回る水準にあり、日本語学習者の一部が韓国を就労先に切り替えるという現象も起きています。
一方で、現在急増しているミャンマー・スリランカ・インドネシアといった国々は、まだ日本との賃金格差が大きく残っています。ミャンマーの製造業作業員の月額基本給は約112ドル(約1万7,000円前後)、スリランカも同程度の水準で、日本で就労すれば母国の4〜5倍の収入が得られる計算になります。インドネシアも、最低賃金は上昇中とはいえ日本との差は依然として大きい状況です。
つまりこの国籍の転換は、「円安+送り出し国の賃金上昇によってベトナム・中国の相対的メリットが低下し、日本との賃金格差がまだ大きい国々が特定技能制度の拡大という追い風を受けて急速に参入してきた」という多重構造で起きているのです。
ひとつ重要な点も加えておきます。今後カンボジアやバングラデシュなど、さらに賃金水準の低い国々も注目されつつありますが、送り出し機関の整備や二国間の制度的な基盤が未成熟な段階では、量的な拡大には限界があります。伸び率の転換が起きるには、賃金格差だけでなく制度・語学・送り出しの仕組みが三位一体で整うことが必要です。
東京と大阪—同じ「外国人の多い都市」でも構成は全く違う
都道府県別では東京都が73万8,946人(前年末比11.4%増)で全国の19.6%を占め、次いで大阪府33万3,564人、愛知県33万1,733人と続いています。
東京と大阪はいずれも外国人人口の多い都市ですが、国籍の構成が対照的です。
東京は中国籍が最多で、ベトナム・韓国・フィリピン・ネパールが続く構成です。新宿区大久保地区に韓国・中国のコミュニティが集中し、池袋周辺には中国系の住民が多く、近年はベトナムやネパールからの留学生・就労者も増加しています。在留資格の構成を見ると、技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザ保有者の割合が高く、IT・専門職・国際業務系の就労者が多い点が東京の特色です。
大阪の構成はこれと大きく異なります。大阪の在留外国人で最も多い国籍は韓国であり、全体の約31%を占めています。大阪市生野区の鶴橋コリアンタウンに象徴されるように、戦前・戦後からの長い歴史を持つ在日コリアンのコミュニティが大阪の外国人人口の土台を形成しています。そのため大阪では、「特別永住者」が在留資格の中で最も多く全体の約25%を占めるという、東京とは大きく異なる構造を持っています。また中国・ベトナムに次いでネパール人の増加が顕著になってきており、新しい就労系外国人の流入という波も同時に起きています。
一言でいえば、東京は「新来の就労・留学系外国人が牽引する都市」、大阪は「歴史的な定住コミュニティを土台に、新しい就労系外国人が加わっていく都市」という対照的な構造です。
在留資格ごとに異なる国籍の棲み分け
「どの国籍の方がどの在留資格で在留しているか」を把握しておくと、採用計画や申請手続きの準備に役立ちます。
永住者・特別永住者は中国・韓国・フィリピン・ブラジルが多数を占めます。長期定住の積み重ねが反映されており、特別永住者は在日コリアンを中心とする歴史的な在留資格です。
技術・人文知識・国際業務(技人国)は中国が突出して多く、IT・国際業務・専門職就労の主力です。中国籍の在留者は永住者(約35万人)や留学生(約14万人)が大きな割合を占め、技人国ビザで働く人も約11.4万人にのぼります。
技能実習・特定技能はベトナム・インドネシア・フィリピン・ミャンマーが主力です。就労現場系(製造・建設・農業・食品加工)での受け入れが中心で、近年はベトナムの比率が落ち着く一方でインドネシア・ミャンマーが急速に伸びています。
留学は中国・ベトナム・ネパールが上位を占めます。留学から技人国や特定技能への在留資格変更というキャリアルートが確立されており、留学生の国籍分布は5〜10年後の就労者国籍構成の「予告編」ともいえます。
コロナ前にはいなかった—2023年以降に急浮上した国籍
もう一つ見逃せない視点が、コロナとの関係です。コロナ禍は国際的な人の往来を著しく制限し、在留外国人数も一時的に減少しました。しかし2022年以降に水際措置が解除されると、単純に「元に戻った」のではなく、国籍の顔ぶれが変わって戻ってきたという点が重要です。
コロナ禍前の2019年時点では、ミャンマー・スリランカ・インドネシアの存在感は現在ほど大きくありませんでした。2023年末時点で11位だったミャンマーは2024年末に8位へ急上昇し、スリランカも2024年末の12位から2025年6月末には9位へ浮上しています。
この急変の背景には2つの構造的な変化があります。ひとつは特定技能制度の本格的な普及です。2019年に始まった制度がコロナ明けの2022〜2023年以降に急拡大し、ベトナムに比べてまだ供給が飽和していないミャンマー・インドネシア・スリランカが、この拡大の受け皿になりました。もうひとつは送り出し国側の事情の変化です。ミャンマーの政変、スリランカの経済危機という国内事情が「日本への移動」を後押しする要因として重なりました。
2025年以降——この転換はさらに続く
「ベトナム人材一択」という時代から、ミャンマー・インドネシア・ネパール・スリランカといった多様な国籍を視野に入れた時代へ——その転換は、数字のうえではすでに始まっています。
ただしこの構造は永続するわけではありません。ミャンマー・インドネシアの賃金水準も年々上昇しており、10〜20年のスパンで見れば、さらに別の国籍が「次の主役」として台頭してくる可能性があります。外国人材の供給国は、経済発展の段階とともに移り変わるものだからです。
在留資格の申請においても、国籍によって必要書類・審査のポイント・送り出し機関の確認事項が異なります。特定技能については国ごとに二国間協力覚書(MOC)の有無と内容の確認も必要です。採用計画を立てる段階から在留資格の要件を把握しておくことが、スムーズな受け入れへの第一歩になります。
今回のコラムはいかがでしたでしょうか。 「絶対数・伸び率・円安と賃金格差・都市別の違い・コロナ後の変化・在留資格別の国籍分布」と、多角的な視点から在留外国人の動向を読み解いてみました。「同じデータでも切り口が変わると全く違う景色が見えてくる」ということを感じていただけたなら嬉しく思います。在留資格の申請や外国人材の受け入れ準備についてのご質問、またコラムの感想やご意見は、お問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
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