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特定技能と資格外活動の落とし穴 〜神戸の摘発事例から〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
2025年12月、神戸・三宮でスナックを経営する女性が、入管難民法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕されたという報道がありました。特定技能の在留資格で介護分野の仕事をしていた中国人女性を、その資格では認められていない飲食店の接客業務に従事させていた疑いです。あわせて、就労していた本人も資格外活動の疑いで先に逮捕されていたことが報じられています。特定技能外国人の受け入れは年々広がっており、こうした事例は今後も他の企業にとって他人事ではありません。今回は、この事例をきっかけに、特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用する際に企業が確認すべきポイントを整理してお伝えします。なお、本記事の事件に関する記述はあくまで報道ベースの情報であり、詳細や最終的な処分については、出入国在留管理庁など公式情報でのご確認をお願いいたします。

特定技能とはどのような制度か
特定技能は、人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるための在留資格です。介護、外食業、建設、宿泊など複数の分野が対象となっており、分野ごとに従事できる業務の範囲が定められています。今回報じられた事例では、介護分野の特定技能で在留していた女性が、対象とされていない飲食店(スナック)での接客業務に従事していた点が問題とされました。
何が問題だったのか
特定技能は「分野」と「業務区分」が固定されている
特定技能の在留資格は、単に「特定技能を持っている」というだけで様々な仕事に従事できるものではありません。あらかじめ指定された産業分野の中で、さらに細かく定められた業務区分の範囲内でのみ就労が認められます。介護分野の特定技能であれば、介護に関連する業務が対象であり、飲食店の接客業務はこの範囲に含まれません。
資格外活動許可がなぜ必要か
在留資格で認められた活動以外の業務に従事する場合には、あらかじめ資格外活動許可を得る必要があります。留学生がアルバイトをする際に資格外活動許可を得る仕組みと基本的な考え方は同じですが、特定技能の場合は分野・業務区分が明確に定められているため、許可を得ずに範囲外の業務に従事すること自体が入管難民法違反となります。今回の報道では、この許可を得ないまま飲食店で稼働していた点が焦点となっています。
採用時に企業が確認すべきポイント
在留カードの記載内容を確認する
外国人を雇用する際は、在留カードに記載された在留資格の種類だけでなく、特定技能であれば分野・業務区分の記載まで確認することが重要です。「特定技能」という表記だけを見て安心してしまい、対象分野の確認を怠ると、意図せず資格外の業務に従事させてしまうリスクがあります。
分野・業務区分と実際の業務内容にズレがないか確認する
採用時点だけでなく、実際に配置する業務内容が在留資格上認められた範囲に収まっているかを、継続的に確認する体制も必要です。特に副業やダブルワークとして別の店舗・業種で稼働させる場合は、その業務が対象分野に含まれるかどうかを個別に確認しなければなりません。
資格外活動許可の有無を確認する
対象分野外の業務に従事させたい場合は、資格外活動許可を取得しているかどうかを必ず確認する必要があります。本人が許可を得ていると説明していても、実際に許可書や在留カードの記載を確認せずに信用してしまうと、企業側も不法就労助長のリスクを負うことになります。
「特定技能を持っているから大丈夫」という誤解
今回の事例で見られたように、「特定技能の在留資格を持っているのだから、どのような仕事をさせても問題ない」という誤解は、雇用主・本人の双方に起こりやすいものです。特定技能は分野・業務区分ごとに許可された制度であり、他の分野や業務区分への横展開は原則として認められていません。副業やアルバイトとして別の業種で働かせる場合には、特定技能とは別に資格外活動許可の取得を検討する必要があります。
発覚した場合のリスク
不法就労助長にあたると判断された場合、雇用主側には入管難民法に基づく罰則が科される可能性があります。また、就労していた外国人本人についても、資格外活動の在留資格違反として、在留資格の取消しや退去強制の対象となるリスクがあります。今回の報道でも、就労していた本人が先に資格外活動の疑いで逮捕され、その後、雇用主側も不法就労助長の疑いで逮捕されたと伝えられています。企業にとっても、外国人本人にとっても、双方にリスクが生じる点を理解しておく必要があります。
特定技能で認められている分野の広がり
特定技能制度は介護、外食業、建設、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、宿泊業などをはじめとして、複数の分野で運用されています。分野によって求められる技能水準や試験内容が異なり、同じ「特定技能」という在留資格であっても、分野が変われば従事できる業務も大きく変わります。今回の事例のように介護分野の特定技能を持つ人が飲食店の接客業務に従事することは、たとえ同じ特定技能という枠組みの中であっても、分野をまたぐ時点で認められない行為にあたります。
登録支援機関との関係で見落とされやすい点
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、法定の支援計画を実施する義務があります。多くの企業はこの支援業務を登録支援機関に委託していますが、支援計画はあくまで本来の受け入れ分野・業務区分を前提に組まれているものです。本人が本来の業務以外で副業的に働いている実態を、受け入れ企業や登録支援機関が把握していないケースも起こり得ます。定期的な面談や生活状況の確認を通じて、こうした実態を早期に把握できる体制を整えておくことも重要です。
外食業や宿泊業など接客を伴う分野との違い
外食業や宿泊業の特定技能では、接客業務自体が対象業務に含まれています。そのため、今回のようなケースが「接客業務だから一律に問題」というわけではなく、あくまで本人が保有する特定技能の分野・業務区分と、実際の業務内容が一致しているかどうかが判断の分かれ目になります。分野ごとに認められる業務の範囲を正しく理解しないまま「接客はどの分野でも問題ない」と誤解してしまうと、今回のようなケースにつながりかねません。
特定技能の外国人本人から副業を相談された場合の対応
近年、生活費の補填や貯蓄の目的で、本業以外の副業を希望する特定技能外国人からの相談が増えていると言われています。企業や登録支援機関としては、本人の希望を頭ごなしに否定するのではなく、まず現在保有している特定技能の分野・業務区分では副業先の業務が対象になるのかどうかを確認し、対象外であれば資格外活動許可が必要になることを丁寧に説明することが望まれます。許可を得ないまま副業を始めてしまうと、今回の報道のように本人にも雇用主にも法的なリスクが及ぶ可能性があるため、早い段階で正しい情報を伝えることが予防につながります。
企業が取り組める予防策
このようなリスクを避けるためには、採用段階での在留カード確認を徹底することに加え、既存の従業員についても定期的に在留資格の状況を確認する仕組みを社内に設けることが有効です。特に複数店舗を展開する飲食・サービス業では、店舗間での配置転換や兼務が発生しやすく、担当者が在留資格の制約を十分に把握していないまま配置してしまうケースも見られます。人事担当者向けに在留資格の基本的な区分について研修を行っておくことも、予防策の一つとして考えられます。
まとめ
特定技能の在留資格は、分野と業務区分によって従事できる仕事の範囲が明確に定められています。「特定技能があるから大丈夫」という思い込みで採用・配置を行うと、企業・本人双方に法的なリスクが生じる可能性があります。採用時だけでなく、配置転換や兼業の際にも在留カードの記載内容を確認する習慣を持つことが、こうしたリスクを避ける第一歩になります。
「特定技能 資格外活動 副業」「特定技能 業務範囲 確認方法」といった形で情報を探している採用担当者の方も多いかと思いますが、分野・業務区分の判断は個別の在留資格ごとに異なるため、少しでも判断に迷う場合は、採用前の段階で在留カードの写しを確認しながら専門家に相談することをおすすめします。繰り返しになりますが、本記事で取り上げた事件の詳細は報道に基づく情報であり、正式な処分結果等については公式発表をご確認ください。
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