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就労系ビザ

2025/7/25

経営・管理ビザの新基準と事業計画・資金計画のポイント

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所、行政書士の樋口裕昭です。

「優秀な外国人の経営パートナーと一緒に新事業を立ち上げたい」「海外展開に向けて、現地に詳しい外国人起業家の力を借りたい」といった声をいただくことがあります。ビジネス系SNSを通じて、「日本でアパレルのお店を開店したいのだけど、どうしたらよいか相談に乗ってほしい」とのお問い合わせをいただいたこともあります。

こうした場面で重要な役割を果たすのが、「経営・管理」の在留資格です。適切な準備と申請により、外国人起業家との協業を進め、新たなビジネスチャンスを創出できる可能性があります。

2025年10月16日には、「経営・管理」に関する許可基準等が改正されました。本記事では、改正後の基準を踏まえ、事業計画と資金計画について、実践的な視点からお話しします。

なお、本記事は、主に新たに「経営・管理」の取得を検討する方を念頭に説明しています。改正前から同資格で在留する方の更新などには経過措置があるため、現在の在留状況や申請時期に応じた確認が必要です。

2025年10月改正の重要ポイント

何が変わったのか

今回の改正では、事業規模、常勤職員の雇用、申請者の経歴・学歴、日本語能力、事業計画書の専門家確認などについて、要件が見直されました。

資本金等に関する事業規模要件

改正後は、3,000万円以上の資本金等が必要です。ただし、法人と個人事業では、金額の確認方法が異なります。

  • 法人の場合:株式会社の払込済資本の額(資本金の額)、または合名会社・合資会社・合同会社の出資の総額で判断されます。

  • 個人事業の場合:事業所の確保、雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額で判断されます。

法人の場合、資本金に従業員の給与や事務所の維持費などを加算して、3,000万円を満たすという扱いにはなりません。

常勤職員の雇用要件

改正後は、対象となる常勤職員を1人以上雇用することが必要です。資本金等の要件と雇用要件の両方を確認しなければなりません。

雇用要件の対象となるのは、日本人、特別永住者、または次の在留資格を持つ外国人です。

  • 永住者

  • 日本人の配偶者等

  • 永住者の配偶者等

  • 定住者

「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格を持つ外国人を雇用している場合でも、その方をこの雇用要件の人数に算入できるとは限らないため、区別が必要です。

申請者の経歴・学歴要件

申請者には、事業の経営または管理について3年以上の経験があること、または経営管理や経営する事業分野に関係する修士・博士・専門職の学位を有することが求められます。

スタートアップビザによる起業準備活動の期間については、対象となる活動に従事した期間を経験年数に算入できる取扱いがあります。単に「特定活動」で在留していた期間すべてが対象になるわけではないため、活動内容を確認する必要があります。

日本語能力要件

申請者または常勤職員のいずれかが、相当程度の日本語能力を有することが必要です。目安となるのは、「日本語教育の参照枠」のB2相当以上で、確認方法には日本語能力試験(JLPT)のN2以上などがあります。

また、雇用人数の要件に算入できる常勤職員の範囲と、日本語能力要件を満たす常勤職員の範囲は同一ではありません。日本語能力の確認では、就労資格を持つ常勤職員が対象となる場合もあるため、それぞれの要件を分けて確認しましょう。

事業計画書の専門家確認

改正後は、対象となる在留資格決定の申請について、事業計画の具体性・合理性・実現可能性を、経営に関する専門的な知識を持つ方に確認してもらう必要があります。

対象となる資格は、日本の中小企業診断士、公認会計士、税理士です。

行政書士による事業計画書の作成支援・在留資格申請支援と、この専門家確認は役割が異なります。準備の段階から、必要な確認手続と専門家との連携を計画しておくことが大切です。

事業所の確保

日本国内に、事業を行うための事業所を確保することも必要です。事業開始前の場合には、事業所として使用する施設が確保されていることを資料で示します。

所在地だけを形式的に用意するのではなく、実際の事業内容に適した施設であることや、使用権限、利用形態などを確認しましょう。

経営・管理ビザの基本的な仕組み

制度の概要と対象活動

「経営・管理」は、外国人が日本で事業の経営や管理に従事するための在留資格です。

例えば、代表取締役や取締役として事業方針の決定・運営に関わる活動や、部長・工場長などとして事業の管理に従事する活動が考えられます。

ただし、肩書だけで該当するかどうかが決まるものではありません。実際の職務内容、権限、事業の規模などを踏まえて、経営・管理への実質的な関与が判断されます。

また、個人事業として経営する場合も想定されています。会社の代表取締役に就任することだけが、対象となる活動ではありません。

2015年には、在留資格の名称が「投資・経営」から「経営・管理」に変更されました。現在の制度でも、資金を出資するだけでなく、実際に経営・管理に従事することが重要です。

他の在留資格との違い

「技術・人文知識・国際業務」が、契約に基づく専門的な技術・知識等を必要とする業務を対象とするのに対し、「経営・管理」は、事業の経営や管理に従事する活動を対象とします。

外国人起業家との協業や管理職の採用を検討する際は、役職名だけで判断せず、担当する仕事の内容に適した在留資格を確認する必要があります。

申請成功の鍵:事業計画の重要性

なぜ事業計画が審査の中心になるのか

「経営・管理」の申請において、事業計画書は重要な判断資料です。

どのような商品やサービスを提供するのか、誰を顧客とするのか、どのように売上を生み、事業を継続するのか。そして、申請者がどのように経営・管理に関与するのかを、具体的に説明する役割があります。

私自身、企業の事業部長として新規事業の立ち上げに携わった経験からお話しすると、事業計画は「事業の成功を約束するもの」ではありません。しかし、「事業の実現可能性と継続性を論理的に説明するツール」として、非常に重要な役割を果たします。

改正後は、対象となる申請で専門家による確認も必要となるため、数字の根拠や事業運営の方法まで説明できる計画を準備しましょう。

審査で重視される重要ポイント

事業の実質性

事業内容、取引先、提供する商品・サービス、事業所、必要な許認可などを明らかにし、計画に実態と実現可能性があることを説明します。

経営・管理への実質的な関与

申請者が名義だけの役員ではなく、実際にどのような意思決定や管理業務を担うのかを示します。役職、権限、担当業務、他の役員や従業員との役割分担を整理することが大切です。

事業の安定性・継続性

資本金等と雇用の要件を満たすことに加え、売上の根拠、必要経費、資金繰りなどを通じて、継続して運営できる見通しを説明します。

制度上の金額要件を満たすことと、事業が継続できる資金計画を持つことは、関連しながらも別の確認事項です。

資金計画の策定:改正後の事業規模要件と資金計画

資本金等の要件と支出計画を分ける

法人の場合は、資本金の額または出資の総額について要件を確認します。個人事業の場合は、事業に必要なものとして投下されている総額について確認します。

そのうえで、開業に必要な支出と、事業開始後の運転資金を計画します。

例えば、次のような項目を整理すると良いでしょう。

  • 事業所の確保・維持に必要な費用

  • 設備・備品の購入費用

  • 従業員の給与や社会保険料など

  • 商品・原材料の仕入費用

  • 広告宣伝費

  • システムの導入・開発費

  • 売上が計画を下回った場合に備える資金

これらは資金計画の検討項目です。すべての費用が、そのまま在留資格の事業規模要件に算入できるという意味ではありません。

特に法人では、資本金と事業支出を足し合わせて金額要件を満たすことはできません。個人事業でも、将来の支出予定を記載するだけで要件を満たすと考えず、投下された資金の内容と根拠資料を確認する必要があります。

段階的な支出と成長計画

事業運営の実務経験から申し上げると、設備の追加や新たな事業への支出は、事業の進捗に合わせて段階的に行うことが、リスク管理の面で合理的な場合があります。

ただし、これは申請に必要な資本金等の要件を、将来の投資予定で代替できるという意味ではありません。

申請に必要な事業基盤を整えたうえで、売上や顧客の反応を確認しながら、その後の資金の使い方を計画しましょう。

実践的な事業計画書作成のポイント

説得力のある計画作成の重要要素

市場分析の具体性

「大きな市場がある」という抽象的な説明ではなく、対象顧客、市場の規模、競合の状況、自社の差別化ポイントなどを整理します。

統計や調査資料、顧客への聞き取りなどを活用し、確認できた事実と、これから検証する仮説を区別すると、計画の根拠が伝わりやすくなります。

収益計画の現実性

月次・年次の売上予測とその根拠、固定費・変動費、損益分岐点、資金繰りの見通しを示しましょう。

常勤職員の雇用を前提とした人件費などを織り込み、売上が入るまでに必要な運転資金も確認します。売上目標だけでなく、入金と支払いの時期まで考えることが大切です。

リスク分析と対応策

市場、競合、財務などのリスクを把握し、対応策を準備します。

売上が計画を下回る場合、仕入価格が上昇する場合、主要な取引先との契約が終了する場合など、事業に応じた状況を想定すると良いでしょう。

段階的な事業拡大計画の効果

第1段階では事業基盤の確立と安定収益の確保、第2段階では顧客や販路の拡大、第3段階では新商品・新市場への展開というように、成長段階ごとの計画を考える方法があります。

ただし、段階を設けるだけで審査上の評価が高まるとは限りません。各段階で何を達成し、どの条件が整ったら次に進むのかを具体的に示すことが重要です。

会社設立と事業開始のタイミング

事業形態の選択

事業形態には、法人と個人事業があります。法人設立が「経営・管理」の取得に一律に必須というわけではありません。

事業内容、出資者、責任の範囲、税務・会計、将来の事業展開などを踏まえて選択し、それぞれの形態に応じた在留資格の要件を確認しましょう。

会社を設立する場合には、実際に行う予定の事業内容を定款に記載し、資本金等の要件を確認するとともに、申請者の経営・管理への関与が分かる役員構成や業務分担を検討します。

申請と事業開始のタイミング

申請のタイミングは、事業所、資本金等、雇用体制、事業計画など、必要な要件と資料を確認して判断します。

「一定の準備が整えば申請できる」と一律に考えるのではなく、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請など、手続の種類や現在の状況に応じた検討が必要です。

また、会社を設立したことだけで、外国人本人が日本で経営活動に従事できるわけではありません。現在の在留資格で認められる活動範囲にも注意しましょう。

事業所の契約、会社設立、資金移動、採用、許認可、在留資格申請の順序を整理することで、準備の手戻りを減らしやすくなります。

支援制度の活用と協業パターン

創業支援制度の活用

自治体や支援機関の相談窓口、商工会議所・産業振興機関の支援、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」など、創業に関する支援を検討できます。

ただし、外国人起業家が利用できるかどうかは、制度ごとの対象者、在留状況、事業内容などによって異なります。融資や保証には審査があり、利用が保証されるものではありません。

また、融資で調達した事業資金と、在留資格の審査で確認される資本金等は、同じものとして扱えるとは限りません。資金調達と在留資格の要件を分けて確認することが大切です。

日本企業との協業パターン

外国人起業家と日本企業が協業する場合には、合弁会社の設立、業務提携、技術協力などが考えられます。

日本企業の信用力や顧客基盤と、外国人起業家のアイデア、技術、海外ネットワークを組み合わせることで、互いの強みを活かせる可能性があります。

協業を進める際は、出資割合、意思決定の方法、担当業務、利益の分配、契約終了時の取扱いなどを整理しましょう。

既存企業の管理職として迎える場合も、役職名だけでなく、実際の職務内容と権限に応じて在留資格を検討する必要があります。

新基準下での戦略的選択肢:スタートアップビザの活用

スタートアップビザは、日本で起業を目指す外国人が、一定の要件のもとで起業準備活動を行うための制度です。在留資格は「特定活動」で、最長2年間の起業準備期間を設ける仕組みがあります。

通常の「経営・管理」を取得するための事業基盤を、起業準備期間中に整えるという選択肢になります。

ただし、無条件に利用できる制度ではありません。実施機関による起業準備活動計画の確認、対象となる事業分野、生活資金、活動状況の確認など、制度ごとの要件があります。

対応地域や実施機関は変更されることがあるため、利用を検討する時点で、経済産業省や各実施機関の最新情報を確認しましょう。

起業準備期間が終了すれば、自動的に「経営・管理」へ移行できるわけではありません。在留資格変更に適用される基準と、経過措置の有無を確認して準備を進める必要があります。

資金の透明性確保と海外送金の実務

海外からの資金移転における注意点

外国人起業家の資金計画では、金額だけでなく、資金の出所や移動の経緯を説明できることも大切です。

自己資金、家族からの贈与、借入れ、共同出資など、資金の性質に応じて資料を整理します。

例えば、次のような資料が説明に役立ちます。

  • 資金を蓄積してきた口座の取引履歴

  • 給与や事業所得などを示す資料

  • 海外送金の記録と日本側の入金記録

  • 贈与契約書、借入契約書、出資に関する資料

  • 必要に応じた、税務・外為法等に関する届出資料

必要な資料は、国や送金方法、資金の取得経緯によって異なります。これらをすべて一律に提出するという意味ではありません。

送金方法を選ぶ際の考え方

金融機関の名称だけで「最も信頼できる方法」を判断するのではなく、資金の出所、送金経路、出資者との関係を資料で説明できる方法を選びましょう。

銀行送金など、送金元・送金先・金額・日付が記録に残る方法は、経緯を整理しやすくなります。

第三者名義の送金や現金の持込みなどについては、資金の帰属や移動経路の説明が複雑になる場合があります。利用する場合は、法令上必要な手続と、説明に必要な資料を事前に確認することが大切です。

送金方法だけで許可・不許可が決まると考えず、取引の適法性と、資金の流れを説明できることを重視しましょう。

行政書士による専門サポートの活用について

「経営・管理」の申請では、事業計画、資金計画、事業所、雇用体制、申請者の経歴など、多くの事項を整理する必要があります。

行政書士による支援では、在留資格の要件を踏まえた申請準備、事業計画書の作成支援、必要資料の整理、申請書類の作成などをお手伝いできます。

また、事業計画書の専門家確認が必要な場合には、中小企業診断士、公認会計士または税理士による確認と、行政書士による申請支援を区別して進めます。

会社設立登記は司法書士、税務は税理士など、必要に応じて他の専門家と連携することも大切です。

準備段階からの総合的なサポート

海外から日本での起業を目指す方の場合には、ビジネスモデルの検討、会社設立、事業所の確保、在留資格申請までの流れを、準備段階から整理することが役立ちます。

短期滞在中に準備を行う場合も、その資格で認められる活動範囲を確認し、実際の事業経営や就労と区別する必要があります。

当事務所では、樋口自身の事業運営・新規事業開拓の経験を活かし、事業計画の検討と在留資格申請準備を支援します。

事業計画策定などのコンサルティング業務は、在留資格申請手続とは別のサービスとして、対応範囲と費用をご案内します。必要となる専門家確認についても、申請支援との役割の違いを明確にしてご説明します。

既に「経営・管理」で在留している方への経過措置

改正前から「経営・管理」で在留している方の更新については、経過措置が設けられています。

2028年10月16日までの間は、改正後の基準に適合していない場合でも、経営状況や今後基準を満たす見込みなどを踏まえて判断されます。基準を満たしていなくても、自動的に更新が認められるという意味ではありません。

また、この期間を過ぎた後も、資本金等が3,000万円に満たないという理由だけで、一律に不許可となるわけではありません。経営状況、納税などの義務の履行、次回更新までに基準を満たす見込み、その他の在留状況などを総合的に考慮する取扱いが示されています。

新規申請、更新、スタートアップビザからの変更などでは適用される取扱いが異なる場合があるため、ご自身の状況に応じた確認が必要です。

まとめ:新基準下での実質性重視の事業構築

「経営・管理」は、2025年10月の改正によって要件が大きく見直されました。

新たに取得を目指す場合には、法人・個人事業に応じた資本金等の要件、対象となる常勤職員の雇用、申請者の経歴・学歴、日本語能力、事業所、事業計画書の専門家確認などを、一つずつ整理する必要があります。

そのうえで重要なのは、在留資格の取得だけを目的とせず、実質的で継続可能な事業を構築することです。

私自身の事業運営経験から申し上げると、事業計画は申請のためだけでなく、実際の経営判断においても大切な指針になります。

申請に必要な要件を満たすことと、その後の事業を段階的に成長させることを分けて考え、資金の出所と使い方を明確にしておきましょう。

地域の創業支援制度や専門家の支援も活用しながら、外国人起業家との互いにメリットのある協業関係を築いていただければと思います。

当事務所でも、制度や実務上の情報を継続して確認し、皆さんの新たな一歩を支援してまいります。


この記事についてご質問やご感想がございましたら、お気軽にお問い合わせフォームからお聞かせください。「事業計画書の作成で具体的に困っている点がある」「当社の場合はどのような協業形態が適しているだろうか」といったご相談もお待ちしております。

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