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2026/7/27
海外出張が永住許可に響く理由 〜「引き続き10年」の落とし穴〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
海外出張の多い方や、グローバルに事業を展開する企業に勤めている方から、永住許可申請を検討する段階になって初めて「実はこれが弱点になる」と気づかれるポイントがあります。それが、海外への出張や一時帰国の頻度です。仕事で評価され、海外を飛び回るキャリアを積んできた方ほど、この落とし穴にはまりやすい傾向があります。日本での在留年数が長く、日本語も堪能で、会社からの信頼も厚い。それなのに、いざ永住許可申請の準備を始めてみたら出国日数がネックになっていた、というケースは決して珍しくありません。今回は、永住許可の要件のひとつである「引き続き10年以上在留」という条件が、海外出張とどう関係しているのかをお伝えします。

「引き続き10年以上在留」とはどういう意味か
出入国在留管理庁が公表している永住許可に関するガイドラインでは、永住許可の要件のひとつとして、原則として引き続き10年以上日本に在留していることが挙げられています。このうち、就労資格または居住資格をもって引き続き5年以上在留していることも求められます。ポイントは「引き続き」という言葉です。単純に合計10年分の在留期間があればよいわけではなく、途切れることなく日本を生活の本拠としてきたことが問われているのです。
住民票が日本にあり、在留カードを継続して更新していたとしても、それだけでは「引き続き在留している」と認められるとは限りません。海外への出国が一定以上の頻度や期間に及ぶと、生活の本拠が本当に日本にあるのかどうかが審査で疑問視されることになります。在留カードの更新が問題なく続いていたことと、永住許可の「継続性」が認められることは、実は別の話なのです。就労系の在留資格を更新する際には、日々の業務内容や勤務先との関係が主に見られますが、永住許可の審査ではそれに加えて、より長期的な視点で「日本での生活実態そのもの」が問われることになります。
実務上の目安となる出国日数
明確に数字が法令で定められているわけではありませんが、実務上の目安として、1回の出国が90日を超える場合、または年間の出国日数の合計が150日程度に達する場合には、継続性が途切れたと判断されるリスクが高まるといわれています。これはあくまで行政書士の実務経験や過去の審査傾向から導かれている目安であり、この日数を1日でも超えたら即座に不許可になるという性質のものではありませんが、判断の分かれ目として意識しておく価値のある数字です。
出張が頻繁にある方の場合、1回あたりは短くても、積み重なると年間の合計日数が想像以上に大きくなっていることがあります。1回10日程度の出張であっても、月に1回のペースで繰り返せば年間120日に達することもあります。「1回あたりは短いから大丈夫」という感覚だけで判断するのは危険です。
さらに注意したいのは、審査では直近1年だけでなく、数年単位での累積的な出国パターンも見られるという点です。ある年だけ出国日数が多かったとしても、それ以外の年は日本での在留が安定していれば、総合的に判断される余地はあります。逆に、毎年コンスタントに出国日数が多い状態が続いていると、単年の事情では説明しきれず、生活の本拠についての疑問が強まりやすくなります。永住許可申請を見据えているのであれば、直前の1年だけでなく、申請を検討し始めた段階から複数年にわたって出国記録を意識しておくことが望ましいといえます。
なぜ「継続性」がここまで重視されるのか
永住許可は、更新の必要がなくなり、就労活動にも制限がかからなくなる非常に強い在留資格です。だからこそ審査では、その方が本当に日本社会の構成員として長期的に根を下ろしているかどうかが慎重に確認されます。「長期間にわたり日本国社会の構成員として居住していると認められること」という国益要件の趣旨に照らせば、生活の大半を海外で過ごしている方に永住許可を与えることは、この趣旨と整合しにくいと判断されやすいのです。海外出張が多いこと自体が悪いわけではなく、日本を生活の本拠としている実態がどれだけ客観的に示せるかが問われていると理解しておくとよいと思います。
これは、在留期間更新許可申請とは審査の視点が異なる部分でもあります。更新申請では「今後も引き続き同じ活動を行う予定であること」が中心に見られるのに対し、永住許可申請では「これまで長期間にわたって日本に根を下ろしてきた実績」そのものが問われます。過去の在留実態を振り返る審査だからこそ、日頃からの記録の積み重ねが重要になってくるのです。
出張理由に合理性があれば考慮される余地もある
出国日数が多いからといって、一律に永住許可が遠のくわけではありません。出国の理由が会社からの業務命令に基づくものであり、日本での雇用関係や生活基盤が維持されていることを客観的な資料で示せれば、審査上考慮される余地があります。具体的には、出張命令書や出張報告書、渡航のたびの行程表を整理しておくこと、給与が継続して日本の口座に振り込まれていること、税金や社会保険料の納付が日本で継続していること、日本国内の住居契約が維持されていることなどが、生活の本拠が日本にあることを裏づける材料になります。
これらの資料は、永住許可申請の直前になって慌てて集めようとすると、何年も前の出張命令書が見つからない、当時の給与明細が手元にないといった事態に陥りがちです。日頃から出張のたびに関連書類を一つのフォルダにまとめておく、あるいは会社の総務・人事部門に長期保管を依頼しておくといった小さな工夫が、いざというときに大きな差を生みます。
コロナ禍のように、本人の意思とは関係なく長期間帰国できなかったといった不可抗力の事情がある場合も、航空便の欠航証明や入国制限に関する通知など、事情を裏づける資料を残しておくことで、考慮される可能性が高まります。出張が多いこと自体を恐れるのではなく、日頃から記録を残しておく習慣をつけておくことが、いざ永住許可申請を行う段階での安心材料になります。
2026年の永住許可ガイドライン改定にも注意
出入国在留管理庁は2026年2月24日に永住許可に関するガイドラインを改定しています。この改定では、10年のうち就労資格または居住資格で5年以上在留していることという要件について、経過措置の区切りが明確化されるなど、細かな運用の見直しが行われました。継続性そのものの考え方に大きな変更はありませんが、永住許可の審査全体が年々精緻化していく流れの中にあることは間違いありません。海外出張が多い方は、出国日数の管理に加えて、こうした制度改定の動きにもアンテナを張っておくことをおすすめします。
企業の人事担当者が準備しておきたいこと
グローバルに事業を展開する企業では、優秀な外国人社員ほど海外拠点との連携や出張を任されることが多く、結果として永住許可申請の際に不利になりやすいという、なんとも皮肉な構造があります。人事担当者としては、海外出張の多い外国人社員について、出張命令書や渡航記録を会社側でも整理し、本人が永住許可申請を検討する段階になったときにすぐ提出できる状態にしておくと、本人の負担を大きく減らすことができます。単身赴任や海外拠点への一時的な異動を検討する際にも、対象となる社員が永住許可を見据えているかどうかを事前に確認し、出国日数への影響について情報提供しておくことは、社員の定着という観点からも意味のある取り組みだと思います。
特に、海外拠点の立ち上げや大型プロジェクトのために特定の社員を数か月単位で海外に派遣するようなケースでは、本人が永住許可申請を見据えていることを事前に把握できていれば、出張の分割や一時帰国のタイミングの調整など、会社側でも対応できる余地が生まれます。外国人社員の永住許可は、本人にとってはキャリアと生活の安定につながる大きな意味を持ちますが、企業にとっても、長期的に活躍してくれる人材をつなぎとめるという意味で無関係ではありません。人事評価の一環として、海外出張の多い外国人社員の在留状況を定期的に確認する仕組みを設けている企業もあります。
まとめ
永住許可の「引き続き10年以上在留」という要件は、海外出張が多い方ほど見落としやすいポイントです。1回90日、年間150日という数字はあくまで実務上の目安ではありますが、この基準を意識しながら出張記録や生活基盤を裏づける資料を日頃から整理しておくことが、将来の永住許可申請をスムーズに進める一番の近道になります。永住許可 出国日数といったキーワードで検索する方の多くは、まさに今、海外出張のスケジュールと将来の申請時期をどう両立させるかで悩んでいる方だと思います。グローバルな働き方をしているからこそ、日本に根を下ろしている実態を、記録という形でしっかり残しておいていただければと思います。
今回のコラムの内容はいかがでしたでしょうか。皆さんの感想やご意見を、お問合せフォームからお気軽にお聞かせいただけますと嬉しいです。
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