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支援計画「丸投げ」に潜む落とし穴 〜登録支援機関委託後の責任〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
特定技能外国人を受け入れる企業には、法律で定められた支援計画を実施する義務があります。多くの企業は、この支援業務の全部または一部を登録支援機関に委託していますが、委託したからといって企業側の責任がなくなるわけではありません。「委託したから終わり」という認識のまま運用を続けていると、思わぬリスクを抱えることになります。今回は、支援計画を登録支援機関に委託した後も、受け入れ企業に残る責任について整理してお伝えします。

支援計画とは何か
特定技能1号の外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、外国人が日本で安定して生活し、働き続けられるよう、支援計画を作成し実施する義務があります。この支援計画には、事前ガイダンスや空港への送迎、住居確保の支援、生活オリエンテーション、公的手続への同行、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援(人員整理等の場合)、定期的な面談の実施という、法令で定められた10項目の義務的支援を漏れなく盛り込む必要があります。この支援計画は、在留資格の申請時に提出する書類のひとつでもあります。支援計画書は日本語だけでなく、外国人本人が理解できる言語で作成し、本人に交付することも求められています。
登録支援機関への委託とは
支援計画に定めた10項目のすべて、あるいは一部を自社で実施する体制を整えることが難しい企業も少なくありません。そうした企業のために、出入国在留管理庁に登録された登録支援機関に、支援業務の実施を委託する仕組みが用意されています。委託契約を結ぶことで、専門的な知見を持つ登録支援機関が実務面を担ってくれるため、多くの企業がこの仕組みを利用しています。
委託後も企業に残る責任
支援業務の「実施」は委託できても、支援計画の履行責任そのものは受け入れ企業に残ります。これは、登録支援機関に委託した場合であっても変わりません。つまり、登録支援機関が実際に行っている支援の内容や質に問題があった場合、その責任は最終的に受け入れ企業が負うことになります。「委託したから自社では何もしなくてよい」という理解は、この制度の前提と異なるものです。
「委託したから終わり」という認識が招くリスク
支援内容を把握しないまま運用を続けるリスク
登録支援機関に委託した後、実際にどのような支援が行われているかを企業側が把握していないケースが見られます。定期面談が形骸化していたり、相談対応の記録が適切に残されていなかったりしても、企業側がそれに気づかないまま運用が続いてしまうことがあります。
委託先の業務内容を把握していないリスク
委託契約を結ぶ際に、支援計画のどの項目を委託し、どの項目を自社で対応するのかを明確に区分していないと、実際にはどちらも実施していない支援項目が生じてしまう可能性があります。委託契約書の内容と、実際の支援の実施状況が一致しているかを確認することも、受け入れ企業の役割です。
行政指導や在留資格取消しの対象になるリスク
支援が適切に行われていない状態が発覚した場合、受け入れ企業に対して行政指導が行われることがあります。悪質な場合や改善が見られない場合には、受け入れ停止の措置が取られる可能性もあります。支援計画の不備は、外国人本人が在留する在留資格の状況にも影響を及ぼしかねない問題です。
委託後も企業が確認すべき事項
登録支援機関から提出される支援実施状況の報告を定期的に確認する
登録支援機関は、実施した支援の内容について、受け入れ企業へ報告を行うのが一般的です。この報告を受け取るだけでなく、内容を確認し、疑問点があれば都度質問する姿勢が重要です。
定期面談の内容を把握する
義務的支援のひとつである定期面談は、3か月に1回以上実施し、記録を一定期間保管することが求められています。面談で外国人本人からどのような相談や意見が出ているかを、企業側も把握しておくことで、労務管理上の問題を早期に発見できる可能性があります。
出入国在留管理庁への定期届出の状況を確認する
支援計画の実施状況については、四半期ごとに出入国在留管理庁への定期届出が必要とされています。この届出が期限内に適切に行われているかどうかも、委託先任せにせず、企業側で把握しておくべき事項です。
委託契約の範囲を明確にしておく
委託契約を結ぶ際は、10項目のうちどの支援を委託し、どの支援を自社で実施するのかを契約書上で明確に区分しておくことが重要です。曖昧なまま契約を結ぶと、後になって「どちらが対応する項目だったか分からない」という事態を招きかねません。
自社支援と委託のバランスを見直す視点
すべての支援を登録支援機関に委託するのではなく、一部の支援(たとえば日本人との交流促進など、社内で対応しやすい項目)は自社で実施し、専門性が求められる部分だけを委託するという運用も可能です。自社の体制と登録支援機関の強みを踏まえて、どの範囲を委託するかを見直すことも、支援の質を維持するための一つの方法です。
2025年4月の制度改正で変わった点
2025年4月以降に提出する支援計画書からは新しい様式が使用されるようになっており、あわせて地域社会との共生に関する支援(地域住民との交流や地域の生活情報の提供など)が新たに義務化される方向での見直しが行われています。既に運用している支援計画についても、内容が現行の様式・要件に沿っているかを見直しておくことが望ましいといえます。制度は継続的に見直されているため、委託先の登録支援機関が最新の運用要領に沿った対応をしているかどうかを、受け入れ企業側でも定期的に確認しておく必要があります。
登録支援機関を選ぶ際に確認しておきたいポイント
これから登録支援機関への委託を検討する企業にとっては、委託先選びの段階からリスク管理が始まっているといえます。対応可能な言語の範囲、過去の支援実績、支援担当者の配置体制、緊急時の連絡対応の有無などは、契約前に確認しておきたいポイントです。また、費用の安さだけで選んでしまうと、実際の支援の質が伴わず、結果的に企業側が行政指導のリスクを負うことにもなりかねません。委託先選びの段階から、支援の質を重視した比較検討を行うことが望まれます。
具体的なケースで考える
たとえば、外国人本人が職場での人間関係に悩みを抱えていたにもかかわらず、定期面談が形式的なやり取りにとどまり、悩みが表面化しないまま数か月が経過してしまったケースを考えてみます。この場合、面談自体は実施されているため、形式上は義務的支援を履行しているように見えます。しかし、面談の質が伴っておらず、本人の相談内容が十分に汲み取られていなければ、実質的な支援としては不十分と評価される可能性があります。受け入れ企業としては、面談の実施の有無だけでなく、面談を通じてどのような情報が得られているかにも関心を持つことが重要です。
まとめ
特定技能外国人の支援計画は、登録支援機関に委託した場合でも、その履行責任は受け入れ企業に残ります。委託後も、支援の実施状況や定期届出の状況を定期的に確認し、委託契約の範囲を明確にしておくことが、行政指導や受け入れ停止といったリスクを避けるために重要です。「委託したから終わり」ではなく、委託後も継続的に関与する姿勢が求められています。特定技能外国人の受け入れは今後も分野が拡大していくと見込まれており、支援体制の整備は企業にとって避けて通れない課題になっています。
「特定技能 支援計画 委託 責任」「登録支援機関 委託 リスク」といった形で検索して情報を探している採用担当者の方も多いかと思いますが、支援計画の運用体制は企業ごとに事情が異なります。委託契約の内容や自社の支援体制について不安がある場合は、専門家に相談しながら整理することをおすすめします。
今回の内容はいかがでしたでしょうか。皆さんのご感想やご意見を、お問合せフォームから気軽にお聞かせください。
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