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制度・動向
2026/7/21
在留カードの「就労不可」と「在留資格の範囲内で就労可」は何が違うのか
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
外国人を採用する際、在留カードを提示してもらって内容を確認したはずなのに、あとになって「実はこの人、この仕事はできなかった」と発覚するケースが後を絶ちません。原因の多くは、在留カード裏面に記載されている就労条件の表記を正しく読み取れていなかったことにあります。カードを見せてもらい、コピーを取り、写真つきの本人確認ができれば手続きは終わり、と考えている採用担当者は少なくありませんが、実はそこから先に確認すべき情報がまだ残っているケースがほとんどなんです。今回は、在留カードの就労関連の表記が持つ本当の意味と、採用担当者が確認すべきポイントについてお伝えします。

在留カード裏面「就労制限の有無」欄の3パターン
在留カードの裏面には「就労制限の有無」という欄があり、そこには主に次の3つのいずれかが記載されています。「就労不可」、「在留資格の範囲内で就労可」、そして「指定書により指定された就業活動に従事する」です。この3つは似ているようで意味がまったく異なり、採用の可否や労働条件に直結します。順番に見ていきましょう。
「就労不可」は本当に一切働けないという意味か
「就労不可」と記載されている場合、原則としてその在留資格では働くことができません。留学や家族滞在といった、就労を目的としない在留資格を持つ方に多い表記です。ただし、ここで注意が必要なのは、「就労不可」イコール「絶対に働けない」ではないという点です。地方出入国在留管理局から「資格外活動許可」を得ていれば、決められた範囲内でアルバイトなどの就労が認められます。
この資格外活動許可を受けているかどうかは、在留カードの表面ではなく、裏面の「資格外活動許可欄」で確認する必要があります。許可を受けている場合はここにその旨と条件が記載されており、多くの場合「1週28時間以内」といった上限時間が定められています。「就労不可」という表記だけを見て採用を諦めてしまう、あるいは逆に何も確認せずに雇ってしまうというのは、どちらも正確な理解とはいえません。裏面の資格外活動許可欄まで含めて確認することが欠かせないんです。
例えば、留学生をアルバイトとして採用する場面を考えてみます。在留カード表面には「留学」としか記載されておらず、就労が可能かどうかは裏面を見なければ判断できません。資格外活動許可を受けていれば週28時間以内という上限の中でアルバイトが可能ですが、この上限は在籍する学校の長期休業期間中は1日8時間以内まで緩和される場合があるなど、時期によって条件が変わることもあります。上限時間を超えて働かせてしまうと、本人が資格外活動の許可条件に違反することになり、雇用主側の管理責任も問われかねません。
「在留資格の範囲内で就労可」は何を意味するのか
技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、教育といった、いわゆる就労系の在留資格を持つ方の在留カードには「在留資格の範囲内で就労可」と記載されます。これは、その方が許可を受けた在留資格に対応する活動であれば、就労が認められるという意味です。
ここで重要なのは、「就労が可能」であることと「どんな仕事でもできる」ことはイコールではないという点です。例えば技術・人文知識・国際業務の在留資格は、技術者や通訳、企画職といった専門的・技術的な業務を前提に許可されています。同じ会社の中であっても、単純作業を中心とする業務に配置転換した場合、在留資格の範囲を外れてしまう可能性があります。「在留資格の範囲内で」という言葉の意味を、採用時だけでなく配置転換のたびに意識しておく必要があります。
実務上起こりやすいのが、繁忙期に一時的に現場作業を手伝ってもらった、営業職として採用したはずが在庫管理や倉庫作業が業務の中心になっていた、といったケースです。本人に悪意がなくても、会社側の業務命令によって在留資格の範囲を外れる業務に従事させてしまえば、次回の在留期間更新の際に「実際の業務内容が在留資格に合っていない」と判断され、更新が不許可になるリスクが生じます。日々の業務アサインが、将来の在留資格更新に影響するという意識を持っておくことが大切です。
「指定書により指定された就業活動に従事する」の注意点
特定活動や高度専門職など一部の在留資格では、「指定書により指定された就業活動に従事する」と記載されることがあります。この表記が出てくる場合、実際に何の活動が許可されているのかは、在留カードの記載だけではわかりません。活動内容は「指定書」という別の書面に記載され、パスポートに添付される形で交付されているためです。
ここは採用実務で見落とされやすいポイントです。在留カード等読取アプリケーションを使ってICチップの情報を読み取っても、指定書の内容そのものは表示されません。在留カードの券面にも指定書の具体的な内容までは記載されていないため、在留カードを確認しただけでは、その方が実際にどのような業務に従事できるのかを正確に把握することができないのです。この表記の在留カードを持つ方を採用する場合は、在留カードに加えて必ずパスポートの提示を求め、貼付されている指定書の原本を確認するようにしてください。指定書を確認しないまま採用してしまうと、実際には許可されていない業務に従事させてしまうリスクが残ります。
特定活動の在留資格は、活動内容が個々の事情に応じて個別に指定されるという性質上、同じ「特定活動」という肩書きであっても、人によって認められている活動範囲がまったく異なります。ある方には認められている業務が、別の方には認められていないということも珍しくありません。「特定活動だから大丈夫だろう」という一括りの判断は禁物で、必ず一人ひとりの指定書を確認する必要があります。パスポートを紛失している、あるいは指定書のページが破損しているといった場合には、本人に再発行の手続きを案内し、原本が確認できるまで採用の判断を保留することも検討してください。
採用担当者が実務で確認すべきこと
在留カードの表記を正確に読み取ることに加えて、より確実な確認方法として「就労資格証明書」の活用もあります。これは、外国人本人が特定の会社での特定の業務に従事できることを、入管があらかじめ証明してくれる書類です。取得は任意であり必須ではありませんが、在留資格の範囲について少しでも不安がある場合には、本人に取得を依頼し、内定から入社までの間に提出してもらうという運用も検討に値します。特に、業務内容が専門職と現場作業の中間に位置するような職種では、この証明書を取得しておくことで、後日の在留期間更新の際にも業務内容の適合性を説明しやすくなるという利点があります。
また、在留カードそのものが有効かどうかの確認も欠かせません。在留カード番号を出入国在留管理庁の失効情報照会サービスで確認する、カードの厚みや印字のずれなど偽造の兆候がないか目視で確認するといった基本動作も、採用時には必ず行っておきたいところです。こうした確認作業は、採用面接を担当する部署だけでなく、実際に配属先で日々の業務指示を出す現場責任者にも共有しておくと、配置転換の際にも在留資格の範囲を意識した判断ができるようになります。採用時の一度きりの確認で終わらせず、社内のマニュアルとして定着させておくことをおすすめします。
見落としが招くリスクは「知らなかった」では済まない
在留資格の範囲外の業務に従事させてしまったり、資格外活動許可の範囲を超えて働かせてしまったりした場合、雇用した企業側にも「不法就労助長罪」が成立する可能性があります。これは、外国人本人が不法就労であることを知らなかったとしても、確認を怠ったことについて過失があると判断されれば、企業側が処罰の対象になり得るという厳しい制度です。「本人が持ってきた在留カードを見せてもらった」というだけでは、確認義務を果たしたとは言い切れません。裏面の記載、資格外活動許可欄、必要であれば指定書やパスポートまで、一つひとつ丁寧に確認する姿勢が、結果として企業自身を守ることにつながります。
不法就労助長罪が成立すると、行政上の不利益にとどまらず、刑事罰の対象にもなり得ます。人手不足を背景に、確認作業を後回しにして採用を急いでしまう企業も見受けられますが、採用のスピードを優先するあまり在留カードの確認をおろそかにすることは、結果的に大きなリスクを抱え込むことになりかねません。外国人採用 在留カード 確認方法といったキーワードで検索する採用担当者が多いのも、この点への不安の表れだといえるでしょう。
まとめ
在留カードの就労関連の表記は、一見するとシンプルに見えて、実際には確認すべきポイントが何層にも重なっています。「就労不可」でも資格外活動許可があれば働ける場合がある、「在留資格の範囲内で就労可」でも業務内容によっては範囲を外れる場合がある、「指定書により指定された就業活動」の場合はパスポートの指定書まで確認しないと活動内容がわからない。こうした細かな違いを知っているかどうかが、採用後のトラブルを防げるかどうかの分かれ目になるんです。
今回のコラムの内容はいかがでしたでしょうか。皆さんの感想やご意見を、お問合せフォームからお気軽にお聞かせいただけますと嬉しいです。
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