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制度・動向
2026年外国人共生総合対策を解説 〜政府方針で何が変わるか〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
2026年1月23日、政府は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対策」を閣議決定しました。2025年7月の参議院選挙でも外国人との共生は主要な争点の一つとなり、国民的な関心事として注目を集めました。少子高齢化が進む日本において、外国人材の受入れは経済成長と地域社会の維持に不可欠な要素となっています。
今回閣議決定された総合対策は、こうした課題に正面から取り組み、今後の日本における外国人受入れと共生社会の方向性を示す重要な政策です。本コラムでは、この総合対策の全体像を時系列で整理し、特に令和8年度(2026年度)、つまり今年度に実施される具体的施策について詳しく解説します。

総合対策の全体構成と目的
今回の総合対策は、単なる受入れ拡大策ではなく、「秩序ある受入れ」と「共生社会の実現」を両輪とする包括的な政策パッケージです。背景には、外国人労働者が約257万人(令和7年10月末時点)を超え、在留外国人数が過去最高を更新し続けている現状があります。
対策の3本柱として、次の構成になっています。
受入れ環境の整備:デジタル化による効率的な在留管理、適正な雇用環境の確保
共生施策の推進:日本語教育、生活支援、子どもの教育支援
不法滞在・不正行為への対策:水際対策の強化、送還体制の整備
これらの施策は単年度で完結するものではなく、令和8年度(2026年度)から令和10年度(2028年度)にかけて段階的に実施されます。
すでに進行中の基盤整備
令和7年度(2025年度)から、総合対策に向けた基盤整備が進められてきました。
デジタル化の準備段階として、在留カードのICチップ化やマイナンバーカードとの一体化に向けた技術的検証が行われました。昨年度は主にシステムの設計とテスト運用が中心でしたが、今年度からは実用段階に入ります。
日本語教育体制の整備も昨年から本格化しています。地域における日本語教室の拡充、日本語教師の質の向上、オンライン教材の開発などが進められ、外国人が日本語を学ぶ機会が徐々に増えています。
労働環境の適正化では、技能実習制度から育成就労制度への移行準備が進められてきました。昨年度は関係省庁間での制度設計と、受入れ企業への説明会開催が主な活動でした。
令和8年度(2026年度)の重点施策を詳しく解説
今年度は、総合対策の中核となる年です。多くの施策が本格実施されるため、外国人の皆さんや受入れ企業にとって影響が大きい年になります。
在留管理のデジタル化本格稼働
在留カードとマイナンバーカードの一体化が今年度から段階的に開始されます。これにより、1枚のカードで在留資格の証明と各種行政サービスの利用が可能になります。更新手続きもオンラインで完結できるケースが増え、入国管理局への来庁回数が減少します。
具体的には、まず中長期在留者を対象に、希望者から順次一体化カードへの切り替えが始まります。一体化カードを持つことで、健康保険の手続き、銀行口座の開設、携帯電話の契約など、生活に必要な各種手続きがスムーズになります。
電子申請システムの拡充も今年度の重点施策です。現在は一部の在留資格に限られている電子申請が、ほぼすべての在留資格に対応する予定です。在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請、就労資格証明書交付申請などがオンラインで可能になります。申請書類の作成支援機能も強化され、必要な添付書類のチェックリストが自動表示されるなど、申請ミスを減らす工夫も盛り込まれています。
育成就労制度の本格始動
技能実習制度に代わる育成就労制度が今年度から本格的にスタートします。この制度では、従来の技能実習と比べて大幅な改善が図られます。
転籍制限の緩和は最も大きな変更点です。一定期間(原則1年以上)の就労後、同一業種内であれば転職が認められます。これは、劣悪な労働環境からの離脱を可能にし、外国人労働者の人権保護につながる重要な改善です。
受入れ企業の監督体制強化も重要なポイントです。労働基準法違反や人権侵害に対するペナルティが厳格化され、適正な労働環境が確保されやすくなります。受入れ企業には、外国人労働者への日本語教育支援、生活オリエンテーションの実施、定期的な面談などが義務付けられます。
日本語能力要件の明確化も制度の特徴です。入国時点での基礎的な日本語能力(日本語能力試験N5レベル程度)に加え、段階的なレベルアップが求められます。受入れ企業には、就業時間内での日本語学習機会の提供が推奨されます。
キャリアパスの明確化により、単なる労働力としてではなく、技能を習得しキャリアアップできる制度設計になっています。3年間の育成期間を経て、特定技能への移行がスムーズに行えるよう、移行要件も整理されました。
生活支援体制の充実
多言語相談窓口の拡充が今年度から全国的に進められます。現在、全国約200か所に一元的相談窓口が設置されていますが、今年度は300か所まで拡大する計画です。相談内容は、在留手続き、労働問題、医療、教育、住宅など多岐にわたります。専門的な相談には、弁護士、社会保険労務士、行政書士などの専門家が対応する体制も整備されます。
医療通訳制度の整備も今年度の重点項目です。救急医療を扱う主要病院への医療通訳配置が優先的に進められます。また、遠隔医療通訳サービスも拡充され、地方の医療機関でもタブレット端末を通じて通訳サービスが利用できるようになります。
子どもの教育支援では、公立学校における日本語指導の充実、進学・就職支援の強化が図られます。日本語指導が必要な児童生徒に対する支援員の配置拡大、オンライン日本語学習教材の開発、母語による学習支援の充実などが進められます。
不法滞在対策の強化
適正な外国人受入れを実現するため、不法滞在や不正行為への対策も同時に強化されます。
入国審査の高度化として、AIを活用した顔認証システムや不審者の自動検知システムが今年度から導入されます。これにより、適法に入国する方の審査はスムーズになる一方、不法入国の防止が強化されます。
送還体制の整備も今年度進められます。長期収容者の削減と適切な送還を両立させるため、送還前の仮放免制度の見直しや、出国命令制度の活用が図られます。
悪質ブローカーの排除も重要な施策です。外国人を不当に搾取する仲介業者に対する取り締まり強化、情報提供窓口の設置、被害者救済制度の整備などが進められます。
令和9年度(2027年度)以降の展望
令和9年度以降は、今年度に整備された仕組みの定着と更なる改善が図られます。
デジタル技術の更なる活用として、ブロックチェーン技術を用いた在留資格情報の管理、AI翻訳技術の行政手続きへの本格導入などが検討されています。
共生社会の深化では、地域コミュニティにおける外国人の参画促進、多文化共生の担い手育成などが進められます。日本人住民と外国人住民が共に地域づくりに参加できる仕組み、多文化共生推進員の育成などが計画されています。
グローバル人材の戦略的受入れとして、高度人材ポイント制の見直し、スタートアップビザの拡充なども予定されています。
外国人と企業が今から準備すべきこと
外国人の方へ
マイナンバーカードの取得を検討しましょう。在留カードとの一体化が今年度から進むため、早めの取得が便利です。申請から交付まで1か月程度かかるため、計画的に手続きを進めることをお勧めします。
日本語学習の継続も重要です。育成就労制度では日本語能力がより重視されるため、地域の日本語教室、オンライン学習アプリなど、様々な学習機会を活用してください。
電子申請への対応準備も必要です。マイナポータルの使い方、電子署名の方法など、基本的なデジタルスキルを身につけておきましょう。
受入れ企業の方へ
育成就労制度への移行準備を今すぐ進めましょう。特に、日本語教育支援体制、生活サポート体制、キャリアパス設計などを見直してください。
外国人材の定着支援も重要です。定期的な面談を通じて、仕事上の悩みや生活上の困りごとを把握し、早期に対応することが定着率向上につながります。
電子申請システムの活用準備も始めましょう。複数の外国人社員を雇用している企業では、電子申請の一括管理システム導入も検討する価値があります。
まとめ
2026年1月23日に閣議決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対策」は、今後の日本における外国人施策の方向性を示す重要な政策です。
特に今年度(令和8年度)は、在留管理のデジタル化、育成就労制度の本格始動、生活支援体制の充実など、外国人の皆さんと受入れ企業双方に大きな影響を与える施策が集中しています。
これらの変化を前向きに捉え、早めの準備と対応を進めることで、より良い就労環境と生活環境が実現できます。不明な点や具体的な手続きについてご不安がある場合は、専門家である行政書士にお気軽にお問い合わせください。
当事務所 YouTube公式チャンネルでも関連記事「速報!政府外国人政策の閣議決定全体像解説」を取り上げておりますので、よろしければご参照ください。
今回のコラムは、政府の総合対策を分かりやすく解説することを心がけましたが、いかがでしたでしょうか。皆さんのご意見やご感想、また「こんなテーマを取り上げてほしい」といったリクエストがございましたら、お気軽にお問合せフォームからお聞かせください。皆さんの声が、より役立つ情報発信の源となります。
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