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制度・動向
在留期間の更新申請は「いつ」出す? 〜満了日ギリギリの落とし穴〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
在留資格の更新手続きについて、「在留期限までに申請すればいい」と考えている方は少なくありません。たしかに制度上、期限を過ぎてから何もせず放置すれば不法滞在になりますが、期限の直前ギリギリに申請しても間に合うという理解は、実務の実態とはずれています。今回は、在留期間更新許可申請を「いつ出すか」という、意外と見落とされがちなタイミングの話をお伝えします。

申請できるのは満了日の3か月前から
在留期間更新許可申請は、原則として在留期間満了日のおおむね3か月前から申請できます。入院や長期の出張など特別な事情がある場合は、それ以前から受け付けてもらえることもありますが、基本的にはこの3か月という期間が申請可能な窓口として設定されています。裏を返せば、この制度設計そのものが、審査には一定の時間がかかることを前提にしていると考えることができます。3か月という数字は、入管が経験的に必要と判断してきた準備期間の目安でもあるのです。
多くの方が誤解しやすいのは、「申請可能な期間=審査に必要な期間」ではないという点です。3か月前から申請できるということは、逆にいえば3か月かけてようやく処理が終わるケースが珍しくないということでもあります。満了日の直前になってから慌てて動き出しても、そこから3か月分の余白を取り戻すことはできません。
なお、満了日の3か月以上前に申請したい特別な事情がある場合、オンライン申請では受け付けてもらえず、窓口での申請に限られる点にも注意が必要です。出張や留学などで日本を長期間離れる予定がある方は、この点もあわせて確認しておくとよいでしょう。逆に通常の3か月前からの申請であれば、在留申請オンラインシステムを使って自宅や職場からでも手続きを進めることができ、窓口に出向く手間を減らせます。
実際の審査日数は延びている
では実際の審査には、どれくらいの日数がかかっているのでしょうか。出入国在留管理庁は、在留資格ごとの平均処理日数を「在留審査処理期間」として毎月公式サイトで公表しています。申請のタイミングを判断するうえで一次情報として非常に参考になりますので、申請前に一度目を通しておくことをおすすめします(出入国在留管理庁「在留審査処理期間」)。
このデータをもとに、在留期間更新許可申請にかかる平均日数を、令和7年3月許可分と令和8年3月許可分で比較したものが下の表です。同じ3月同士で比べることで、季節による申請の混み具合の違いを排除しています。
在留資格 | 令和7年3月(日) | 令和8年3月(日) | 増減率 |
経営・管理 | 36.3 | 54.2 | +49% |
特定技能2号 | 19.0 | 37.1 | +95% |
高度専門職1号イ | 24.0 | 37.3 | +55% |
日本人の配偶者等 | 36.0 | 44.6 | +24% |
定住者 | 32.6 | 38.2 | +17% |
家族滞在 | 31.4 | 35.1 | +12% |
技術・人文知識・国際業務 | 29.0 | 35.0 | +21% |
特定技能1号 | 38.9 | 40.8 | +5% |
留学 | 29.5 | 24.6 | ▲17% |
技能 | 35.8 | 29.4 | ▲18% |
(出典:出入国在留管理庁「在留審査処理期間」公表データ、令和7年3月許可分・令和8年3月許可分、2026年7月3日確認)
表を見ると、就労系・身分系を問わず多くの在留資格で処理日数が延びている一方、留学や技能のように短縮している資格もあることがわかります。すべてが一律に長期化しているわけではないという点は、意外と見落とされがちです。
とりわけ変化が大きいのは経営・管理と特定技能2号です。経営・管理は2025年10月の許可要件厳格化により新規申請そのものが大幅に減った一方で、残った申請の内容がより丁寧な審査を要するものに絞られてきた、という事情が影響していると考えられます。数字の増減には、それぞれ制度上の理由があるということです。
ここで大切なのは、個々の数字そのものよりも、「在留資格ごとに審査にかかる時間はまったく違う」という事実です。自分の在留資格が何日程度で処理される傾向にあるのかを、公式データで事前に確認しておくだけでも、申請のタイミングを判断する材料になります。同じ更新申請でも、去年は1か月で終わったから今年も同じだろうという前提は、必ずしも成り立たないということを、この数字は教えてくれています。
平均1か月前後、資格によっては2か月近く
この数字が示しているのは、平均でも1か月前後、資格によっては2か月近くを要するケースが珍しくないという実態です。しかも、この日数は書類に不備がない場合の平均値にすぎません。業務内容説明書の具体性が足りない、学歴と職務内容の整合性に疑問符がつくといった事情で追加資料を求められれば、審査期間はさらに延びます。満了日の直前に申請してしまうと、こうした追加対応をする時間的な余裕そのものがなくなってしまうのです。
申請中に在留期限を過ぎてしまった場合でも、審査結果が出るまで、または満了日から2か月を経過するまでのいずれか早い時点までは、それまでの在留資格のまま日本に滞在し、就労を続けることができます。これは「特例期間」と呼ばれる制度で、法律上は救済措置として用意されています。ただし、この期間に入ると、在留カードの実務上の扱いが通常時とは変わる場面が出てきます。銀行によっては、在留期限が過ぎたカードでは口座の取引に制限がかかることがありますし、マイナンバーカードの機能が自動的に失効してしまうケースもあります。制度上は適法に滞在できていても、生活面での細かな不便が積み重なるのが、ギリギリ申請の隠れたコストだといえます。
「自分は大丈夫」という思い込みの危うさ
満了日直前の申請には、もうひとつ見えにくいリスクがあります。転職や勤務先の変更があった場合、新しい職務内容が在留資格に合っているかどうかが改めて審査されますが、こうした事情変更がある申請ほど、時間の余裕が結果を左右しやすくなります。「前回も問題なく更新できたから今回も大丈夫だろう」という感覚は、状況が変わっていない場合には通用しても、勤務先や職務内容、家族構成などに変化があった場合には通用しません。むしろ変化があるときほど、審査には時間がかかりやすいという前提で動く方が安全です。
3か月前という申請可能時期の初日に動き出す必要はありませんが、少なくとも満了日の2か月前までには申請を終えているという状態を目安にしておくと、書類の不備や追加提出の連絡があっても慌てずに対応できます。逆算して、必要書類の収集や課税証明書・納税証明書の取得といった準備は、さらにその1か月前、つまり満了日のおおむね3か月前から着手しておくのが理想的です。
準備すべき書類は在留資格の種類によって異なりますが、共通して求められることが多いのは、在職を証明する書類、直近の課税証明書や納税証明書、そして社会保険の加入状況がわかる資料です。会社側から発行してもらう必要がある書類も含まれるため、担当部署への依頼から取得まで、想定より時間がかかることも珍しくありません。市区町村役場の窓口が混み合う時期と重なれば、証明書一枚を取るだけでも数日を要することがあります。こうした小さな遅れの積み重ねが、結果として申請全体を後ろ倒しにしてしまうのです。
企業の担当者にとっても他人事ではない
この点は、外国人社員を雇用する企業の担当者にとっても無関係ではありません。社員本人の在留カードの満了日を人事側でも把握し、3か月前を目安に本人へ声をかける体制を整えておくことは、トラブルを未然に防ぐ有効な手段です。特に3月から4月、9月から10月にかけては、入学や新卒採用、人事異動が重なり、入管の窓口が混み合う時期でもあります。この時期に満了日を迎える社員がいる場合は、なおさら早めの準備が望ましいといえます。社員本人任せにせず、社内のスケジュール表などで満了日を一元管理しておくだけでも、直前になって慌てる事態はかなり防げます。
また、企業が用意する必要がある書類、例えば在職証明書や雇用契約書の写し、決算関係の資料などは、経理や総務など複数の部署をまたいで準備することが多く、社員本人だけでは動かせない部分でもあります。人事担当者が早めに全体像を把握し、関係部署に声をかけておくことで、直前になって書類が揃わないという事態を避けやすくなります。在留期間の管理は、個人の問題であると同時に、組織としてのリスク管理でもあるという視点を持っておくことをおすすめします。
まとめ
在留期間更新許可申請は、単なる期間の延長手続きではなく、現在も在留資格の要件を満たしているかどうかを確認するための審査です。だからこそ、書類をそろえる時間、万一の追加提出に対応する時間、そして何より自分自身が落ち着いて手続きに向き合える時間を、あらかじめ確保しておくことが大切なんです。満了日はゴールではなく、そこから逆算してスケジュールを組むための起点として捉え直していただければと思います。
「在留カードの更新はいつから」「更新申請はいつまでに出せばいいか」と検索して不安を解消しようとする方は多いと思いますが、答えはシンプルで、申請可能になる満了日の3か月前から、できるだけ早く動き出すことに尽きます。審査期間の数字は年によって変わりますが、早めの準備が結果を左右するという原則は変わりません。
今回のコラムの内容はいかがでしたでしょうか。皆さんの感想やご意見を、お問合せフォームからお気軽にお聞かせいただけますと嬉しいです。
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