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身分系ビザ
2026/8/5
離婚後の配偶者ビザ、放置は危険 〜14日以内の届出義務〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に暮らしていた方が離婚した場合、「在留期間が残っているのだから、期限までは今まで通り暮らせるはずだ」と考えてしまう方が少なくありません。しかし、この理解は正確ではありません。離婚は、その在留資格そのものの前提を失わせる出来事であり、放置しておくと深刻なリスクにつながります。離婚という人生の大きな出来事に直面しているさなかに、在留資格の手続きまで気を配る余裕がないという方も多いと思いますが、だからこそ、何をいつまでにやるべきかをあらかじめ知っておくことが重要になります。今回は、離婚後に必要な手続きと、放置した場合に何が起こるのかをお伝えします。

離婚後14日以内に必要な届出
日本人または永住者の配偶者として「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」の在留資格で在留している方は、配偶者と離婚(または死別)した場合、その事由が生じた日から14日以内に、出入国在留管理庁長官への届出が義務づけられています。届出は地方出入国在留管理局への出頭のほか、郵送やオンラインの電子届出システムでも行うことができます。この届出を怠ると、20万円以下の罰金の対象となるだけでなく、その後の在留資格の変更や更新の審査において、義務を履行していなかったという不利な事情として扱われる可能性があります。
なお、すでに「定住者」の在留資格で在留している方については、この届出義務の対象外です。定住者は配偶者としての身分そのものを在留資格の基礎としているわけではないため、離婚しても届出は不要とされています。この違いを知らずに、定住者の方が不要な届出をしようとして混乱するケースも見られますので、自分の在留資格がどちらに該当するのか、まず確認しておくとよいでしょう。
なぜ離婚で在留資格の前提が崩れるのか
「日本人の配偶者等」という在留資格は、文字通り日本人の配偶者としての身分に基づいて認められているものです。離婚によってその身分そのものがなくなるため、これまでの活動を継続する法的な根拠が失われることになります。在留カードに記載されている在留期限がまだ先であっても、それは「配偶者としての活動を行うことを前提に」与えられた期間にすぎません。前提が崩れた以上、期限まで安泰というわけにはいかないのです。
6か月というタイムリミット
法律上は、正当な理由なく配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合に、在留資格が取消しの対象となると定められています。ここで注意したいのは、6か月が経過した瞬間に自動的に在留資格が消滅するわけではないという点です。取消しの対象になり得るということであり、実際に取り消すかどうかは個々の事情を考慮したうえで判断されます。とはいえ、この規定があることに変わりはなく、「取消しの対象になり得る」状態を長く続けることは、当然ながら望ましくありません。離婚届出後は、できるだけ早期に他の在留資格への変更手続きに着手することが求められています。
離婚後に選べる主な選択肢
離婚後も日本での在留を継続したい場合、主な選択肢は次の3つです。
選択肢1:新たに再婚する
日本人や永住者と新たに再婚する場合、この場合は在留資格変更ではなく在留期間更新許可申請として扱われますが、新しい配偶者との婚姻の実体について、これまでと同様の慎重な審査が行われます。なお、民法上の再婚禁止期間との関係で、再婚相手とすぐに婚姻手続きができないケースもあり、一度本国に戻ったうえで婚姻成立後に改めて呼び戻すという流れを取ることもあります。
選択肢2:就労系の在留資格に変更する
技術・人文知識・国際業務など、就労を目的とする在留資格への変更も選択肢のひとつです。婚姻中から同じ会社に勤務していた場合は、離婚後もその勤務を継続しながら就労系の在留資格に切り替えられることがあります。ただし、就労系の在留資格にはそれぞれ学歴や職務内容の要件があるため、誰でも自由に切り替えられるわけではない点に注意が必要です。
選択肢3:定住者へ変更する
「定住者」の在留資格への変更も、有力な選択肢です。定住者は就労内容に制限がなく、単純労働を含めて幅広い仕事に就くことができるという特徴があります。また、定住者としての在留期間が「日本人の配偶者等」時代の在留期間と通算して5年以上になれば、将来的に永住許可申請の要件を満たすことにもつながります。
定住者への変更が認められるかどうかは、主に2つの切り口から判断されます。ひとつは、日本での婚姻生活がおおむね3年以上継続していたこと、独立して生計を営める資産や技能があること、日常生活に支障のない日本語能力があること、納税などの公的義務を履行していることなどを総合的に見る切り口です。もうひとつは、日本人との間に生まれた実子を監護・養育している場合で、その子の親権者であり、現に相当な期間その子を養育していることが認められれば、婚姻期間が3年に満たなくても定住者への変更が許可されやすくなります。
子どもがいる場合に特に押さえておきたいこと
離婚を考える際、子どもがいるかどうかは、在留資格の選択に大きく影響します。
「日本人の実子扶養定住」という枠組み
日本人との間に生まれた実子を離婚後も自分が引き取って育てていく場合、婚姻期間の長さにかかわらず、定住者への変更が認められやすくなるという運用があります。これは、日本国籍を持つ子どもが安定した環境で育っていけるようにという人道的な配慮に基づくものです。ここでいう実子には、日本国籍を持つ子だけでなく、日本国籍を持たない実子(それまで「日本人の配偶者等」の在留資格で在留していた子)も含まれます。
認められるための2つの条件
ただし、この扱いを受けるためには、単に子どもがいるというだけでは足りません。子の親権者であること、そして実際にその子の世話を継続的に行っていることの2点が求められます。離婚の際の話し合いで親権をどちらが持つかは、その後の在留資格の選択肢を大きく左右する重要な要素になります。養育の実態を示す資料としては、保育園や学校とのやり取りの記録、子どもの健康保険や医療機関の受診記録、日々の生活費の支出状況などが役立ちます。逆に、子どもの親権を相手方が持ち、自分は養育に関与しなくなる場合は、この「日本人の実子扶養定住」と呼ばれる枠組みは使えなくなります。その場合は、婚姻期間や独立生計要件、日本語能力、公的義務の履行状況といった、通常の定住者要件を満たせるかどうかで判断されることになります。
子育てしながらの生計要件
また、独立の生計を営むに足りる資産または技能があることという要件についても、子どもを養育しながらであれば、より現実的なハードルとして立ちはだかります。離婚直後に専業主婦(主夫)であった場合、速やかに就職活動を行い、安定した収入を確保できることを、雇用契約書などの資料で示す必要があります。子育てをしながらの就職活動には時間的な制約も伴うため、離婚が決まった時点、あるいはその見通しが立った時点から、できるだけ早く動き出しておくことが望ましいといえます。
離婚の話し合いを進める段階から、お子さんの親権や養育の見通しについても、将来の在留資格をどう組み立てるかとあわせて考えておくことをおすすめします。感情的にも大変な時期であることは承知していますが、お子さんの安定した生活のためにも、親権と養育実態、そして在留資格の見通しは切り離さずに検討していただきたいポイントです。
放置した場合のリスク
離婚の届出を怠ったまま、あるいは在留資格の変更手続きを先延ばしにしたまま日々を過ごしていると、次に訪れる更新や変更の申請の場面で、届出義務を怠っていたという事実がマイナスの事情として扱われることがあります。また、6か月を超えて配偶者としての活動を行っていない状態が続けば、在留資格取消手続きの対象になるリスクが現実味を帯びてきます。「離婚しても在留期限まではいられる」という認識のまま放置してしまうと、いざ次の更新のタイミングになって初めて、取り返しのつかない状況に気づくことになりかねません。
まとめ
離婚は、配偶者としての在留資格の前提そのものを失わせる出来事です。14日以内の届出義務、6か月という取消しのリスクライン、そして子どもの有無によって変わってくる定住者変更の可能性。これらを正しく理解し、できるだけ早い段階で次の在留資格をどうするか考え始めることが、離婚後も安心して日本での生活を続けるための第一歩になります。配偶者ビザ 離婚 手続きや離婚後 在留資格変更といったキーワードで検索する方の多くは、まさに今その渦中にいて、何から手をつければよいのか分からず不安を抱えている方だと思います。ひとりで抱え込まず、必要な届出と選択肢を早めに整理していただければと思います。
今回のコラムの内容はいかがでしたでしょうか。皆さんの感想やご意見を、お問合せフォームからお気軽にお聞かせいただけますと嬉しいです。
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