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制度・動向

2026/5/4

在留資格を左右する日本語力 〜新要件と学習の場の種類・探し方・活用法まで〜 

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

「日本語がうまくなくても、仕事さえできれば在留資格はもらえる」——そう思っている方は、今でも少なくないと思います。しかし実は今、その常識が大きく変わりつつあります。

日本語能力は、在留資格の取得・更新に直接影響するものへと変わりつつあります。外国人の方にとっても、外国人を雇用する企業の人事担当者の方にとっても、知っておかないと後になって困ることになりかねない話ですので、ぜひ最後までお読みください。

在留資格ごとに、求められる日本語レベルはこれだけ違う

在留資格と日本語能力の関係を一言で言うと、「資格の種類によって、求められるレベルがまったく違う」ということです。代表的な資格ごとに整理しておきましょう。

特定技能1号は、日本語能力試験N4レベル、もしくは国際交流基金が実施するJFT-Basicへの合格が就労の条件になっています。N4は日常生活に支障のない基礎的な日本語力で、買い物・病院・役所で簡単なやりとりができる程度のレベルです。

育成就労(2027年4月から本格施行)は、入国時点ではN5相当で構いませんが、特定技能1号に移行する際にはN4以上が必要です。日本に滞在する間に、着実にレベルアップしていかなければなりません。段階的な日本語能力の向上が制度の前提として組み込まれているという点で、従来の技能実習制度とは大きく異なります。

永住許可については、2026年現在、日本語能力の要件を明確化する方向で検討が進んでいます。具体的なレベルはまだ確定していませんが、N3程度が今後の要件目安として検討されています。N3は日常的な話題なら会話に参加でき、仕事の指示を理解したりメールを読み書きしたりできる中級入口のレベルです。現在永住を目指している方にとっては、早めに意識しておきたい変化です。

帰化申請では、現行でも「日本社会に融和していること」が審査基準のひとつとされており、日本語での面接・会話能力が実質的に確認されています。さらに今、居住要件の見直し(5年→10年へ)も2026年4月1日より審査の運用において原則10年以上に引き上げる旨が公表され、制度全体として「日本社会になじんでいること」をより重視する方向への転換が続いています。

高度専門職ポイント制度では、N1レベル(CEFR C1相当)の取得が加点対象となっています。N1は学術・法律・ビジネスの高度な文書を読みこなせるレベルで、永住・帰化申請においても強力なプラス材料となります。

JLPTの各レベルと在留資格との関係を、以下の表にまとめました。

JLPT

CEFR

日常会話レベル感

できること(目安)

在留資格との関係

N5

A1

ひらがな・カタカナが読める初歩レベル

「これはいくらですか」「トイレはどこですか」程度の短い会話

育成就労・入国時の最低要件(A1相当/N5相当)

N4

A2

日常生活に支障のない基礎的な日本語力

買い物・病院・役所で簡単なやりとりができる。短い文章の読み書き可

★特定技能1号の最低要件。育成就労・特定技能移行時。永住・帰化審査の参考水準(A2相当/N4)

N3

B1

日常的な話題なら会話に参加できる中級入口

仕事の指示を理解できる。ニュースを大意で理解。メールを読み書きできる

帰化申請の実質的な日本語確認の目安水準。永住許可の今後の要件目安(検討中)

N2

B2

複雑な内容もほぼ理解できる上級入口

ビジネス場面の対応が可能。新聞・テレビのニュース理解。専門的な話題も概ね理解

★技人国・対人業務の要件(2026年4月15日〜)CEFR B2相当=N2以上。BJT400点以上も相当

N1

C1

幅広い場面で高度な日本語が使いこなせる

学術・法律・ビジネスの高度な文書の理解・作成。ネイティブに近い運用力

高度専門職ポイント加算。帰化・永住の強力なプラス材料となる

★印は在留資格申請に直接関わる要件です。N3・N5の欄は現時点での目安・参考水準です。CEFRのA1〜C2は欧州言語共通参照枠。JLPTとの対応は国際交流基金等の見解による目安です。

技人国に、2026年4月から新しい日本語要件が加わった

次のポイントは、まさに今起きている変化です。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)に、2026年4月15日から日本語能力に関する新たな取り扱いが加わりました。

これまで技人国には、明確な日本語能力試験の合格要件はありませんでした。ところが今回から、一定の条件を満たす就労者が対人業務に従事する場合には、CEFR B2相当——日本語能力試験でいえばN2以上に相当する言語能力を示す資料の提出が求められることになりました。なおBJT(ビジネス日本語能力テスト)400点以上もN2相当として認められます。

この変更の背景には、専門職として許可を受けながら実際には単純労働に従事しているケースが問題視されていたことがあります。日本語でのコミュニケーション能力を確認することで、本当に専門的な業務に就いているかどうかを判断しやすくするという意図があります。

念のために補足しておくと、今回の変更はすべての技人国ビザに一律にN2が必要になったということではありません。規模が小さめの企業カテゴリーに就労していて、かつ対人業務に従事するケースが対象です。また、日本の大学・専門学校を卒業している方は証明書類が不要という例外もあります。ただし方向性として、日本語能力の確認を厳格化していく流れは明確です。

日本語を学ぶ場は、こんなにたくさんある

「では実際に、どこで日本語を学べばいいのか」と思う方も多いと思います。実は日本では、学習の場の選択肢が思っている以上に豊富に用意されています。大きく3種類に整理してみましょう。

有料の日本語専門機関(日本語学校など)は、有資格の教師のもとで体系的なカリキュラムで学べる環境です。文部科学省が2024年度から創設した「日本語教育機関認定制度」により、認定を受けた機関(2025年12月時点で64機関)が質の保証された教育を提供しています。ただし費用は決して安くありません。

オンラインの自習コンテンツでは、文部科学省が無料で提供している「つながるひろがるにほんごでのくらし(通称:つなひろ)」が代表的です。20言語に対応し、生活場面ごとに学べる動画教材が約200本用意されており、JLPTのA1〜B1レベルをカバーしています。自分のペースで、自宅にいながら学べる点が大きな利点です。また放送大学でも、外国人向けの基礎的な日本語講座をオンラインで配信しています。

地域の日本語教室は、市区町村や国際交流協会が運営する教室で、費用は無料か非常に安価です。国は「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」により、地方公共団体による日本語教育体制の整備を財政支援しており、主要都市を中心に公的な日本語教室の整備が着実に進んでいます。

地域の日本語教室——メリットとデメリットを正直に

地域の日本語教室のメリットは、まず費用の安さ(多くは無料か数百円程度)、次に自治体や外郭団体が運営主体という安心感、そして地域の日本人ボランティアと直接つながれることです。日本人の友人ができる可能性があり、日本語の上達だけでなく日本社会に溶け込んでいくうえでも大きな意味を持ちます。

一方でデメリットも率直にお伝えします。指導するのはボランティアが中心なので、体系的なカリキュラムがあるわけではありません。開催頻度は週1回・期間は半年程度が一般的で、N2やN1を目指す本格的な試験対策には向いていません。地域の日本語教室は「生活に必要な日本語を身につけながら、地域とのつながりをつくっていく場」として位置づけるのが最も適切です。

主要地域の日本語教室——それぞれの特徴と探し方

地域ごとの窓口と特徴をまとめておきます。

東京都には「東京日本語教室サイト」があります。東京都つながり創生財団が運営しており、都内62の区市町村ごとに教室を検索できます。ほとんどが無料か低料金で、板橋区・足立区・新宿区など外国人住民が多い地域では教室数も比較的充実しています。

神奈川県は「かながわでにほんご」(かながわ国際交流財団運営)がポータルサイトになっています。県内の日本語教室マップも掲載されており、横浜・川崎といった大都市だけでなく、県内各地の教室を地図から探せます。

名古屋市には「なごにほ」(名古屋国際センター運営)という検索システムがあります。曜日・時間・地域から市内の教室を絞り込んで探せます。愛知県は製造業が盛んで外国人労働者が多い地域でもあり、教室の数・種類ともに充実しています。

大阪市・大阪府は大阪国際交流センターが初級・オンライン・ビジネス日本語など複数のコースを提供しているほか、大阪市教育委員会のページにも識字・日本語教室の一覧がまとめられています。大阪府内全域を対象とした識字・日本語センターの教室検索も活用できます。

埼玉県は埼玉県国際交流協会が窓口です。川口市・草加市など東京近郊に外国人住民が集中する地域も多く、地域密着型の教室が展開されています。

千葉県は千葉県国際交流センターが日本語教室一覧を公開しています。

上記以外の地域にお住まいの方は、「市区町村名+日本語教室」で検索するか、お近くの国際交流協会にお問い合わせください。文部科学省の「つなひろ」はオンラインで全国どこからでも無料で利用できます。

知っておきたい2つの落とし穴

日本語学習には、あらかじめ知っておくべき落とし穴が2つあります。

1つ目は「情報の問題」です。地域の日本語教室は各市区町村や国際交流協会が独自に運営しているため、情報が一か所にまとまっていないことが多くあります。「調べたが見つからなかった」「近くに教室はないと思っていた」という方でも、実際には近所に教室が存在するケースが少なくありません。まず積極的に探してみることが大切です。

2つ目は「カリキュラムの問題」です。民間の日本語学校に入ろうとした場合、学校側には決まった授業の進め方があって、学習者の現在のレベルに合わせてカスタマイズしてもらえるわけではありません。たとえばN3レベルの方がN2を目指す場合、N3スタートのカリキュラムしか選択肢がなく、すでに知っている内容をもう一度やることになってしまう——そんなケースが実際に起きています。

この2つに共通するのは、「今の自分のレベルに合った学習の道筋を、誰かが全体的に管理してくれているわけではない」という現実です。だからこそ、自分でゴールを設定し、逆算して学習を組み立てていくことが重要になります。「どのレベルを目指すべきかわからない」という方は、ハローワークのキャリアコンサルタントや自治体の外国人相談窓口に相談してみるのも一つの方法です。

外国人本人と企業、それぞれに備えてほしいこと

在留資格ごとの日本語レベルの目安を、改めて整理しておきます。

  • 特定技能1号を目指す方:N4(またはJFT-Basic合格)

  • 育成就労で入国する方:N5相当から開始、特定技能移行時にはN4以上

  • 技人国で対人業務に就く方:N2相当またはBJT400点以上(2026年4月15日からの新取り扱い)

  • 永住許可・帰化を視野に入れている方:N3〜N2程度

こうした目安を頭に入れておくだけで、学習のゴールが明確になります。日本語学習はもはや「あったほうがいい」ではなく、「なければ困る」時代に入っています。

企業の人事担当者の方へは、技人国ビザを持つ外国人社員が中規模以下の会社に在籍し、対人業務に従事している場合、今回の変更が次回の更新審査に影響する可能性があります。早めに該当者を把握し、必要な準備を進めることをお勧めします。


今回のコラムでは、日本語能力と在留資格の関係から、学習の場の種類・特徴・探し方まで幅広くお伝えしました。「自分のケースはどうなるのか」「社内の外国人社員の更新に影響が出るのか」など、具体的な状況についてお知りになりたい点がありましたら、行政書士に相談してみることも選択肢のひとつです。また今回の内容についてのご感想やご意見をお持ちでしたら、お問い合わせフォームからお気軽にお聞かせいただければ幸いです。

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