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制度・動向

2026/8/26

「同じ会社だから安心」の落とし穴 〜更新不許可の共通パターン〜 

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

在留資格の更新申請で最も多い誤解のひとつが、「前回許可されたのだから、今回も同じように許可されるはずだ」という思い込みです。転職をしていなくても、業務内容の変化や給与の変動、雇用形態の変更などがあると、審査の評価は前回とは変わります。今回は、継続して同じ会社に勤めているにもかかわらず更新が不許可となってしまうパターンについて、実務の視点から整理してお伝えします。

在留資格の更新は「前回の延長」ではない

在留期間更新許可申請は、あくまで申請時点における状況を審査する手続きです。前回許可されたという事実は、今回の審査結果を保証するものではありません。出入国在留管理局は、更新のたびに現在の在留状況が在留資格の要件を満たしているかどうかを、その時点の資料に基づいて改めて確認しています。「同じ会社に勤め続けているから大丈夫」という前提そのものが、実は正確ではないという点をまず理解しておく必要があります。

業務内容が変化しているケース

社内異動による職務内容の変化

転職をしていなくても、社内異動によって担当業務が変わることがあります。技術・人文知識・国際業務の在留資格は、大学等での専攻内容や職歴と、実際に従事する業務内容との関連性が審査されます。たとえば、当初は貿易事務として働いていた方が、社内異動で単純な倉庫作業や接客業務が中心の部署に移った場合、在留資格上認められた業務の範囲から外れてしまう可能性があります。本人にとっては「同じ会社で働き続けているだけ」という認識でも、審査上は業務内容の実態が問われます。

昇進・降格による職務内容の変化

昇進によって管理業務が増える場合や、逆に降格によって専門性の低い業務が増える場合も、在留資格の要件と実際の業務内容にズレが生じることがあります。特に降格の場合、当初許可された在留資格の前提となっていた専門的な業務から離れてしまうと、更新審査で説明を求められる可能性が高くなります。

給与水準の変動

「日本人と同等額以上の報酬」という要件との関係

就労系の在留資格には、日本人が同等の業務に従事する場合と比較して同等額以上の報酬を受けていることという要件があります。会社の業績悪化などにより給与が減額された場合、この要件を満たしているかどうかが改めて審査されます。前回の申請時点では問題がなかった給与水準であっても、その後の減額によって基準を下回っていると判断されれば、更新が認められない可能性があります。

賞与・手当を含めた実質的な報酬の変化

基本給に変化がなくても、賞与や各種手当が減少し、実質的な年収が下がっているケースもあります。給与明細や源泉徴収票の数字だけでなく、前回申請時との比較で報酬総額がどう変化しているかを確認しておくことが大切です。

雇用形態の変更

正社員から契約社員・嘱託への切り替え

会社の事情により、正社員から契約社員や嘱託社員への雇用形態の変更が行われることがあります。雇用形態そのものが直接の不許可事由になるわけではありませんが、雇用の安定性や継続性について、従来よりも詳しい説明が求められる場合があります。契約期間の定めがある雇用形態の場合、在留期間との関係も含めて整理しておく必要があります。

労働時間・勤務日数の変化

フルタイムからパートタイムへの切り替えなど、勤務時間や勤務日数が大きく減少している場合も、就労の実態や報酬水準との関係で審査上の論点になり得ます。

会社側の状況変化

決算内容の悪化

会社の決算が赤字になった場合や、売上が大きく減少している場合、受け入れ企業としての事業の安定性・継続性が審査される中で、従来よりも詳しい説明資料の提出を求められることがあります。特に、外国人労働者の雇用を継続するだけの経営基盤があるかどうかが確認の対象になります。

組織変更・事業内容の変化

会社の組織再編や事業内容の変更により、当初許可された在留資格の前提となっていた部署や事業自体がなくなってしまうケースもあります。この場合、現在の業務内容が在留資格の要件を引き続き満たしているかどうかを、改めて整理して説明する必要があります。

特例期間との関係で注意したいこと

在留期間満了日の前に更新申請を行い、結果が出る前に満了日を迎えた場合、特例期間として一定期間は引き続き在留が認められる仕組みがあります。しかし、これはあくまで審査結果を待つための期間であり、不許可となれば特例期間の終了とともに在留資格を失うことになります。業務内容や給与に変化があることを認識しないまま満了日ギリギリで申請し、特例期間中に不許可の連絡を受けてから慌てて対応を検討するというケースも見られます。変化がある場合ほど、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが望まれます。

具体的なケースで考える

たとえば、技術・人文知識・国際業務の在留資格で、当初は自社のシステム開発部門でプログラマーとして採用された方が、その後の人員配置の見直しにより、社内のヘルプデスク業務を中心に担当するようになったとします。ヘルプデスク業務自体が専門性を要しない単純作業に近い内容であれば、在留資格の要件である「専門的な知識や技術を要する業務」との整合性が問われることになります。本人も会社も「部署は変わったが同じIT関連の仕事だから問題ない」と考えがちですが、実際の業務内容の専門性が審査のポイントになります。

こうしたケースでは、業務内容の変化を隠すのではなく、なぜその配置転換が行われたのか、現在の業務にどのような専門性が求められているのかを、申請理由書等で丁寧に説明することが重要です。事実を正確に伝えた上で、在留資格の要件との整合性を示す資料を準備することが、更新審査を乗り切るための基本的な考え方になります。

会社側が更新前に準備しておきたい資料

会社側としては、更新申請の前に、対象となる社員の現在の業務内容を具体的に説明できる資料(業務分掌表、組織図、直近の給与明細など)を整理しておくことが望まれます。特に部署異動や給与改定があった場合は、その経緯や理由を簡潔にまとめておくことで、申請理由書の作成もスムーズになります。

更新申請前に確認しておきたいこと

更新申請を行う前に、前回の申請時と比較して、業務内容・給与水準・雇用形態・会社の経営状況のいずれかに変化がないかを一度整理してみることをおすすめします。変化がある場合は、単に前回と同じ書式で申請書類を作成するのではなく、変化の内容とその理由、現在も在留資格の要件を満たしていることを説明する資料を準備しておく必要があります。特に、給与が減額されている場合や、業務内容が変わっている場合は、事前に整理しておくことで審査への対応がしやすくなります。

なお、確認すべき変化は必ずしもマイナスの内容ばかりではありません。昇給や昇進など、一見プラスの変化であっても、業務内容の専門性が高まったことをきちんと説明できなければ、かえって審査で「実態と申請内容が一致しているか」を細かく問われる場合があります。良い変化・悪い変化のいずれであっても、前回申請時との差分を客観的に整理しておく姿勢が大切です。

継続就労なのに不許可となるケースに共通する傾向

これまで見てきたようなケースに共通するのは、本人も会社の担当者も「同じ会社に在籍し続けているのだから問題ないはずだ」という前提のまま、変化した部分について特に説明を加えずに申請してしまう点です。在留資格の更新審査は、在籍の継続性だけでなく、その時点での業務内容や待遇が在留資格の要件を満たしているかどうかを個別に判断するものです。継続して勤務しているという事実そのものは重要な要素のひとつですが、それだけで許可が保証されるわけではないことを理解しておく必要があります。

まとめ

在留資格の更新申請は、前回の許可の延長ではなく、申請時点の状況に基づく新たな審査です。転職をしていなくても、業務内容・給与水準・雇用形態・会社の経営状況に変化があれば、それが審査結果に影響を与える可能性があります。「同じ会社にいるから今回も大丈夫」と考えず、更新前に一度、前回申請時からの変化を整理してみることをおすすめします。

「在留資格 更新 不許可 同じ会社」「在留期間更新許可申請 給与 下がった」といった形で検索して情報を探している方も多いかと思いますが、審査の結果は個々の状況によって異なります。ご自身やご担当されている外国人社員の状況に変化がある場合は、更新申請の前に一度整理し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。


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