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入管、経営・管理ビザFAQ更新 ~現場の不安にどう応えたか~
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
2025年10月16日に施行された在留資格「経営・管理」の許可基準厳格化をめぐり、現場では大きな混乱が続いています。とりわけ、印度カレー店や中国料理店など、外国人が個人事業主として営んでいる小規模な飲食店等の経営者の間で、「自分たちも3,000万円を準備しなければ事業を続けられないのではないか」という不安が広がっています。こうした状況を受け、2026年6月26日、出入国在留管理庁が「特にお問合せが多い質問」というFAQの形で、改めて運用の考え方を整理して公表しました。今回はこのFAQの内容に加え、厳格化に至った背景や、現場で起きている動きについても整理してお伝えします。

2025年10月の厳格化で何が変わったのか
まず前提として、2025年10月16日の改正で何が変わったのかを振り返ります。経営・管理ビザの許可基準には、常勤職員を1人以上雇用すること、事業の用に供される財産の総額が500万円以上から3,000万円以上に引き上げられたこと、申請者または常勤職員が一定水準の日本語能力を有すること、申請者が経営管理分野の学位または3年以上の実務経験を有すること、そして事業計画書について中小企業診断士・公認会計士・税理士いずれかの確認を受けることという、複数の要件が新たに加わりました。
特に3,000万円という数字のインパクトが大きく、これが「全ての経営・管理ビザ保持者が現金で3,000万円を用意しなければならない」という誤解を生んだ要因の一つになったと考えられます。
なぜここまで厳格化されたのか
ここで、厳格化に至った背景にも触れておきたいと思います。従来の資本金500万円という基準は、2006年に現行の枠組みが定められて以来、約20年間にわたり据え置かれてきました。その間に日本の物価や経済規模が大きく変化したこともあり、国際的に見ても極めて低い水準となっていたことが指摘されています。
その結果、実際には事業活動をほとんど行わず、法人登記だけを形式的に行ういわゆるペーパーカンパニーを設立して在留資格を取得する事例や、移住の手段として制度が利用される事例が後を絶たなかったとされています。こうした実態のない経営活動が、結果として「お金で買えるビザ」と揶揄される状況を生み、制度全体の信頼性を損なう要因になっていました。今回の厳格化は、こうした不正・不当な利用を排除し、実体のある経営活動のみを在留の対象とすることを狙いとして行われたものです。
実際、改正後の新規申請件数には大きな変化が表れています。報道によれば、改正前5か月間の月平均申請件数が約1,700件であったのに対し、改正後5か月間は月平均約70件にまで減少し、約96%の減少幅となっているとされています。もっとも、この減少分のすべてが不適切な案件だったと断定できるわけではなく、実態ある小規模経営者にどの程度の影響が及んでいるのかについては、今後も丁寧な検証が必要だと考えられます。
FAQで示された4つの重要なポイント
今回更新されたFAQでは、特に問い合わせが多かった4つの論点について、丁寧な説明が行われています。
一つ目は、経過措置の対象期間についてです。改正前から経営・管理ビザで在留している方については、施行後3年が経過するまで、つまり2028年10月16日までの間は、新基準を満たしていないことのみを理由に在留期間更新が不許可になることはないと明記されました。
二つ目は、経営状況や納税状況に問題がなくても更新が認められないケースがあるという点です。労働基準法や最低賃金法といった労働関係法令の遵守状況、社会保険・雇用保険・労災保険の加入や納付状況、事業に必要な許認可の取得状況などに問題がある場合は、審査において消極的な要素になるとされています。これは厳格化が単に資本金の額だけを見ているわけではなく、経営者としてのコンプライアンス全般を見ているという姿勢を示すものです。
三つ目は、経過期間後の取り扱いです。施行後3年を経過した後の更新申請であっても、改正後の基準に適合していない場合に一律不許可となるわけではありません。経営状況が良好で、法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新までに基準を満たす見込みがある場合は、その他の在留状況も総合的に考慮して許否が判断されるとされています。
四つ目は、個人事業主に関する誤解の解消です。個人事業主が3,000万円の資本金を準備する必要があるという情報は事実ではないと明確に否定されました。3,000万円という基準は、法人の場合は資本金額を指しますが、個人事業主の場合は事業所の確保や雇用する職員の給与1年分、設備投資経費など、事業を営むために実際に投下されている総額を指すものとされています。つまり、現金を新たに積み増す必要があるという話ではなく、すでに事業のために使っているお金の積み上げで判断されるという考え方です。
5万筆を超える署名活動
こうした厳格化に対する不安の高まりは、具体的な行動にもつながりました。報道によれば、2026年5月13日、制度の見直しを求める市民らが参議院議員会館で集会を開き、約5万3千筆の署名と要請書を出入国在留管理庁に提出したとされています。参加者からは、資本金3,000万円要件や常勤職員要件、手数料の引き上げなどが、小規模事業者や地域社会に深刻な影響を及ぼすという訴えがあったと報じられています。これに対し、入管庁側は内部で共有・報告するという趣旨の回答にとどまったとされており、現時点で制度そのものの見直しに直結する動きは確認されていません。
秩序と共生は両輪である
政府が掲げる「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」では、法やルールを逸脱する行為に対しては公正・厳正に対処する一方で、外国人と日本人がともに安全・安心に生活し、共に繁栄する社会の実現を目指すとされています。私自身も、この方針における「秩序」と「共生」は、どちらか一方を優先するものではなく、両輪として機能するべきものだと考えています。
制度の不正利用を排除しようとする厳格化の方向性自体には合理性がある一方で、労働関係法令を守り、社会保険料や税金をきちんと納め、地域社会の一員として事業を営んできた外国人経営者の方々まで、一律に厳しい基準で評価されてしまうことには注意が必要です。今回のFAQ更新は、そうした実態を踏まえ、現場の不安に応えるための取り組みの一つと受け止めることができるでしょう。
経営・管理ビザをお持ちの皆さんへ
経過措置の期間が設けられているとはいえ、2028年10月16日以降は改正後の基準が本格的に適用されます。今のうちから、労働保険や社会保険の加入・納付状況、納税状況、必要な許認可の取得状況などを点検し、改善できる点があれば早めに対応しておくことをおすすめします。また、個人事業主の方は、事業のために投下している総額をどのように証明できるかを、決算資料や経費の領収書等を通じて整理しておくことも重要です。
まとめ
経営・管理ビザの厳格化は、制度の不正利用を防ぎ、実体のある経営活動を支援するという目的のもとで進められていますが、断片的な情報による不安が先行してしまった面もありました。今回のFAQ更新により、経過措置の内容や個人事業主の取り扱いについて、より正確な情報が示されています。とはいえ、改正後の基準への対応は決して簡単なものではなく、早めの準備が欠かせません。
今回のコラムの内容はいかがだったでしょうか。皆さんの率直なご感想やご意見を、お気軽にお問合せフォームからお聞かせいただければと思います。
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