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2026/8/3
支援業務は委託と自社どちらが得か 〜判断の分かれ目〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
特定技能外国人の受け入れを検討している企業の担当者からよく聞かれるのが、「支援業務は登録支援機関に委託すべきか、それとも自社でやるべきか」という悩みです。人手不足を背景に特定技能制度の活用を検討する企業は増えていますが、実際に受け入れを決めた後になって初めて、この支援業務の重さに気づくケースも少なくありません。どちらにもメリットとデメリットがあり、正解は企業の規模や体制によって変わります。今回は、この分岐点をどう見極めればよいのかについて、実務の観点から整理してお伝えします。

1号特定技能外国人支援計画とは
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、「1号特定技能外国人支援計画」の作成と実施が法律上義務づけられています。これは、外国人が日本で安定的かつ円滑に働き、生活できるようにするための支援計画で、具体的には次の10項目から構成されています。事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保および生活に必要な契約の補助、生活オリエンテーション、公的手続への同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進の支援、転職支援(人員整理等がある場合)、そして3か月に1回以上の定期面談です。
このうち、事前ガイダンスは在留資格の申請前に、労働条件や活動内容、入国手続きなどについて本人がわかる言語で3時間以上かけて説明することが求められる項目です。住居確保の支援では、1人当たり7.5平方メートル以上の居室を確保し、賃貸契約を外国人本人が結ぶことが難しい場合には企業が契約主体となって借り上げるといった対応も一般的です。このように、10項目それぞれに具体的な基準が定められており、形だけ整えればよいというものではありません。
この支援計画は、単なる書類上の手続きではありません。実施が不十分と判断されれば、特定技能外国人の受け入れそのものが認められなくなる可能性があり、企業にとって軽視できない義務です。特定技能 支援10項目という言葉で検索する担当者の多くは、初めての受け入れを控えて、何をどこまで準備すればよいのか具体的なイメージがつかめずにいる方だと思います。
登録支援機関に委託する場合
登録支援機関とは、出入国在留管理庁の登録を受け、受入れ企業に代わって支援計画の全部または一部を実施できる外部機関です。全国で1万件を超える機関が登録されており、その数は年々増加を続けています。選択肢が多い分、どこに委託すればよいか迷う担当者も少なくありません。支援計画の全部の実施を委託した場合、受入れ企業が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされるため、法令上の要件を確実にクリアしながら、社内の負担を大きく減らすことができます。
費用の相場は、特定技能外国人1人あたり月額2万円から4万円程度が一般的で、平均は3万円弱という調査結果もあります。仮に月3万円で5年間委託し続けた場合、単純計算で1人あたり合計180万円程度のコストになります。複数名を受け入れている企業では、この費用が積み重なっていくことになります。
ここで見落とされがちなのが、委託したからといって企業の責任がすべてなくなるわけではないという点です。支援業務の実施主体は登録支援機関に移りますが、受入れ機関としての最終的な責任は依然として企業側に残ります。委託先の支援内容に不備があれば、受入れ企業自身が指導や改善命令の対象になり得ることは押さえておく必要があります。委託料の安さだけで機関を選び、実際には支援の質が伴っていなかったというケースでは、結局のところ企業側がそのしわ寄せを受けることになります。
自社で支援を行う場合
登録支援機関を使わず、自社で10項目の支援をすべて実施する方法もあります。委託費用が発生しないため、長期的かつ多人数の受け入れを想定している企業では、ランニングコストを大きく抑えられるという利点があります。また、外国人本人との距離が近くなり、社内に外国人雇用のノウハウが蓄積されていくという副次的なメリットもあります。
一方で、自社支援を行うには一定の要件があります。過去2年間に中長期在留者(就労資格を持つ者)の受け入れまたは管理を適正に行った実績があることなどが求められ、初めて外国人を受け入れる企業がいきなり自社支援に切り替えるのは難しい場合があります。また、支援担当者が入管法や労働法の知識を一から習得する必要があり、初年度は月に100時間を超える工数がかかるという試算も見られます。制度改正への継続的なキャッチアップも自社の責任で行う必要があり、片手間でできる業務ではありません。
人事部門でよくある失敗として、採用は決まったものの「支援は現場で何とかなるだろう」と考え、母国語での対応者や緊急連絡の担当者を決めないまま在留申請の手続きを進めてしまうケースがあります。結果として、支援体制の説明が不十分になったり、入社後の相談対応が遅れたりするリスクが生じます。自社支援を選ぶのであれば、支援責任者と支援担当者を明確に定め、実施スケジュールをあらかじめ具体的に組んでおくことが欠かせません。
分岐点はどこにあるのか
これらを踏まえると、判断の分かれ目はおおむね次のように整理できます。初めて特定技能外国人を受け入れる企業、外国人材の母国語に対応できる担当者がいない企業、支援業務に割ける人的リソースが限られている企業は、登録支援機関への委託が現実的な選択肢になります。一方、すでに一定の受け入れ実績があり、専任の支援担当者を置ける体制が整っている企業、長期にわたって多数の特定技能外国人を受け入れる予定がある企業は、自社支援によって長期的なコストを抑えつつ、社内にノウハウを蓄積していくという選択肢が視野に入ってきます。
受け入れ人数の規模も判断材料のひとつです。1人だけを受け入れる企業であれば、月額数万円の委託費用はそれほど大きな負担にはなりませんが、10人、20人と受け入れ人数が増えていくと、委託費用の総額も比例して膨らみます。ある程度の規模になった段階で、自社支援への切り替えを検討し始める企業が多いのも、このためです。逆に、受け入れ人数が少なく、かつ複数の業種・拠点にまたがって外国人材が分散しているような企業では、委託によって一定の支援品質を担保する方が合理的な場合もあります。
なお、一度登録支援機関に委託した後で自社支援に切り替えることも制度上は可能です。ただし、担当者の教育やマニュアルの整備、行政への変更届出など事前の準備が必要になるため、切り替えを検討する場合は早めに動き出すことをおすすめします。
A社からB社へ切り替える場合の手続きとリスク
自社支援への切り替えだけでなく、委託先をA社からB社へ変更するというケースも実務ではよく見られます。委託料が相場より高い、支援の質が期待していたものと違う、特定技能外国人本人から不満が出ている、といった理由で見直しを検討する企業は少なくありません。
登録支援機関の変更自体は制度上いつでも可能ですが、進め方には順序があります。まず、現在の委託契約の内容を確認し、解約予告期間や中途解約の条件を把握します。標準的な契約書のひな型では1か月前の予告で解約できる場合が多いものの、独自の条項が加えられている契約もあるため、事前確認は欠かせません。次に、新しい登録支援機関を選定し、現在の契約終了日と切れ目なく開始できるよう調整したうえで、新たな支援委託契約を締結します。その後、支援計画書の登録支援機関名・支援責任者・支援担当者の記載を更新し、変更が生じてから14日以内に、支援委託契約に係る届出書と支援計画変更に係る届出書を管轄の地方出入国在留管理局へ提出します。
切り替えにあたって特に注意したいのが、在留期間更新の直前を避けるという点です。更新申請には支援体制を含めた書類一式の整合性が求められるため、更新時期の直前に委託先を変えると、書類確認に時間がかかり、更新手続き自体が遅れるリスクがあります。更新時期から逆算して、少なくとも2〜3か月前までには変更手続きを完了させておくことが望ましいとされています。
また、支援機関が変わるということは、特定技能外国人本人にとっては生活面の窓口が変わることを意味します。母国語での説明資料を用意し、新しい支援機関の連絡先や面談スケジュールを本人にきちんと共有し、理解と同意を得たうえで進める必要があります。複数名を同時に受け入れている企業の場合は、全員を一斉に切り替えるのではなく、在留期限が遠い方から段階的に進めることで、万一の手続きの遅れによる影響を分散させることができます。
支援機関選びをめぐる近年の動き
登録支援機関の数は2026年6月時点で11,000件を超え、年々増加を続けています。選択肢が広がる一方で、支援の質にはばらつきがあるという指摘も出ています。名義だけの登録にとどまり、実質的な支援業務をほとんど行っていない機関が一定数存在するとの分析もあり、こうした状況を背景に、出入国在留管理庁は2025年4月の制度改正で登録取消処分に踏み切るケースを重ねてきました。今後は支援責任者の講習修了や、支援実績・費用の公表を義務づけるなど、登録支援機関の質を底上げする方向での制度見直しも予定されています。あくまで報道や業界分析ベースの情報であり、正式な制度内容は出入国在留管理庁の公式発表で確認する必要がありますが、支援機関を選ぶ側にとっても、費用の安さだけでなく実際の支援実績を見極める重要性が、これまで以上に増していると言えそうです。
登録支援機関を選ぶ際に確認したいこと
委託を選ぶ場合、費用の安さだけで登録支援機関を選んでしまうと、対応言語が限られていたり、支援内容が最低限にとどまっていたりすることがあります。少なくとも2〜3社に問い合わせ、対応言語、支援地域、夜間・休日の対応可否、面談の方法、自社の業種における支援実績を確認したうえで比較検討することをおすすめします。特に、受け入れ予定の外国人の国籍や、勤務形態(夜間勤務やシフト制など)への理解がある機関かどうかは、入社後のトラブルを防ぐうえで重要な確認ポイントです。
支援計画の実施状況などについては、受入れ機関・登録支援機関ともに出入国在留管理庁への定期的な届出が求められています。届出の頻度やルールは制度改正のたびに見直される部分でもあるため、委託先がこうした運用の変更に確実に対応できているかどうかも、選定時に確認しておきたいポイントです。義務的支援に加えて、日本語能力試験の受験費用補助といった任意的支援を独自に用意している機関もあり、外国人材の定着率を重視するのであれば、こうした付加的なサービスの充実度も比較材料になります。
まとめ
登録支援機関への委託と自社支援、どちらが正解というものではなく、自社の受け入れ実績や体制、費用対効果を踏まえて判断すべき問題です。委託は法令対応の確実性と社内負担の軽減が魅力ですが、費用と、委託後も残る企業側の責任を忘れてはいけません。自社支援はコストを抑えられる一方で、一定の要件と継続的な工数が求められます。登録支援機関 委託費用や特定技能 支援計画 自社対応といったキーワードで検索する担当者の多くは、まさにこの費用と労力のバランスをどう取るかで悩んでいるのだと思います。どちらを選ぶにしても、10項目の支援内容を正しく理解したうえで、自社に合った体制を選択していただければと思います。
今回のコラムの内容はいかがでしたでしょうか。皆さんの感想やご意見を、お問合せフォームからお気軽にお聞かせいただけますと嬉しいです。
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