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制度・動向

2026/9/15

国際結婚後の姓、6か月の壁 〜氏の変更届の落とし穴〜 

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

外国人と結婚した日本人は、婚姻の日から6か月以内に届出をすれば、家庭裁判所の許可を得ることなく外国人配偶者の姓(日本語読み)に変更することができます。しかし、この6か月という期限を知らずに過ぎてしまい、後から変更しようとして手続きが複雑になってしまうケースが見られます。夫婦の姓のあり方についてはさまざまな考え方がありますが、どのような選択をするにしても、まずは制度上の期限や仕組みを正しく理解しておくことが大切です。今回は、国際結婚の手続きの中で見落とされがちな、姓の選択に関する期限と仕組みについて整理してお伝えします。

戸籍法107条2項に基づく氏の変更届とは

外国人と婚姻した日本人が、自分の姓を外国人配偶者の姓に変更したい場合、戸籍法107条2項に基づく「外国人との婚姻による氏の変更届」を市区町村の窓口へ提出することで、家庭裁判所の許可を得ずに氏を変更することができます。この届出ができるのは、婚姻の日から6か月以内に限られています。婚姻届と同時に提出することも可能です。

「6か月以内」の起算点に関する注意点

この6か月は、日本の市区町村へ婚姻届を提出した日からではなく、婚姻が法的に成立した日から起算されます。たとえば、外国の方式で先に婚姻が成立し、その後に日本側で婚姻の届出を行った場合は、日本での届出日ではなく、海外で婚姻が成立した日を基準に6か月を数える必要があります。この点を誤解し、日本での婚姻届提出日を基準に考えてしまうと、実際には期限を過ぎてしまっているというケースも起こり得ます。

6か月を過ぎてしまった場合の対応

婚姻の日から6か月を過ぎてしまうと、戸籍法107条2項の届出だけで氏を変更することはできなくなります。この場合は、戸籍法107条1項に基づき、家庭裁判所の許可を得た上で氏の変更を届け出る必要があります。107条1項の手続では、氏を変更することについて「やむを得ない事由」があることを裁判所に認めてもらう必要があり、単に「配偶者の姓を名乗りたい」という希望だけでは、107条2項の届出のように無条件で認められるわけではありません。手続きの手間や、許可を得るまでの時間もかかることになります。

変更できる氏の範囲には制限がある

戸籍法107条2項の届出で変更できる氏は、日本人配偶者の戸籍の身分事項欄に記載されている、外国人配偶者の氏と同一のものに限られます。多くの場合、この氏はカタカナで表記されています。外国人配偶者の氏と日本人配偶者の氏を組み合わせた複合姓(いわゆるダブルネーム)にしたい場合は、107条2項の届出だけでは変更できず、婚姻の日から6か月以内であっても、家庭裁判所の許可を得る107条1項の手続が必要になります。「6か月以内だから届出だけで自由な姓にできる」というわけではない点に注意が必要です。

外国人配偶者が日本人の姓を名乗る場合の仕組み

これまで説明してきたのは、日本人配偶者が外国人配偶者の姓に変更する場合の手続きです。逆に、外国人配偶者が日本人配偶者の姓を名乗りたい場合は、仕組みが異なります。外国人には日本の戸籍がないため、戸籍法に基づく氏の変更手続きの対象にはなりません。実務上は、住民票上の通称名として日本人配偶者の姓を登録する方法が一般的です。通称名は、住民票や在留カードの記載とは別の枠組みで運用されており、法律上の氏そのものを変更するものではない点で、日本人配偶者側の戸籍法上の手続きとは性質が異なります。この違いを理解しておかないと、「配偶者と同じように届け出れば同じ手続きになる」と誤解してしまうことがあります。

混同しやすいポイントの整理

国際結婚に伴う姓の手続きは、誰が、どの姓に、どの範囲まで変更したいのかによって、適用される制度が異なります。日本人配偶者が外国人配偶者の記録どおりの氏に変更する場合は107条2項、複合姓にしたい場合や6か月を過ぎた場合は107条1項、外国人配偶者側が日本人配偶者の姓を名乗りたい場合は住民票上の通称名制度、というように、それぞれ異なる枠組みで対応することになります。同じ「姓を変えたい」という希望であっても、状況によって必要な手続きが変わる点を押さえておくことが重要です。

子どもの氏との関係も見落とされやすい

夫婦の姓の選択は、生まれてくる子どもの氏にも関わってきます。日本の戸籍実務では、子どもは親の氏を名乗ることが原則とされており、外国人親の氏へ子どもを変更したい場合には、戸籍法107条4項に基づく別の手続きが必要になります。夫婦がどちらの姓を名乗るかを決める場面と、子どもがどちらの姓を名乗るかを決める場面は、法律上は別の手続きとして整理されている点も、あわせて理解しておきたいポイントです。夫婦間の姓の変更だけを済ませて満足してしまい、子どもの氏の扱いについて後から気づくというケースも見られます。

具体的なケースで考える

たとえば、日本人と外国籍の方が海外で先に婚姻登録を行い、その3か月後に日本の在外公館へ婚姻の届出をしたとします。この場合、6か月のカウントは在外公館への届出日からではなく、海外で婚姻が成立した日から始まります。仮に、日本での届出から6か月以内に氏の変更届を提出したとしても、海外での婚姻成立日から数えるとすでに6か月を超えていれば、107条2項の届出は受理されない可能性があります。海外での婚姻を伴うケースでは、この起算点のずれに特に注意が必要です。

必要となる書類の一般的な流れ

戸籍法107条2項の届出を行う際は、一般的に、外国人配偶者の氏が記載された戸籍謄本(本籍地以外の窓口へ届け出る場合)や、婚姻を証明する書類が必要となります。婚姻届と同時に提出する場合は、婚姻届の記載内容と整合性が取れているかどうかも確認されます。事前に必要書類を市区町村の窓口やホームページで確認しておくと、当日の手続きがスムーズになります。

手続きを検討する際に気をつけたいこと

婚姻を予定している方、あるいは最近婚姻した方で、外国人配偶者の姓を名乗ることを検討している場合は、婚姻成立日から6か月というタイムリミットを意識しておくことが大切です。特に、海外で先に婚姻手続きを行う予定がある場合は、その婚姻成立日がいつになるのかを事前に確認しておくと、期限の見落としを防ぐことができます。すでに6か月を過ぎてしまっている場合でも、家庭裁判所の許可を得る手続きの道が閉ざされているわけではないため、諦めずに必要な手続きを確認することをおすすめします。

まとめ

外国人配偶者の姓に変更したい場合、婚姻の日から6か月以内であれば、家庭裁判所の許可を得ずに市区町村への届出のみで変更できます。しかし、この期限を過ぎると家庭裁判所の許可を得る手続きが必要になり、複合姓にしたい場合も同様に家庭裁判所の許可が必要です。また、外国人配偶者が日本人配偶者の姓を名乗る場合は、戸籍法上の手続きとは異なる住民票上の通称名の仕組みで対応することになります。国際結婚に伴う姓の選択は、状況によって適用される制度が異なるため、婚姻を予定している段階から手続きの流れを確認しておくことをおすすめします。子どもの氏の扱いについても、夫婦間の姓の変更とは別の手続きが必要になる場合がある点をあわせて押さえておくと、後になって慌てずに済みます。

「国際結婚 姓 変更 6か月」「外国人配偶者 氏の変更届」といった形で検索して情報を探している方も多いかと思いますが、婚姻の成立時期や希望する姓の内容によって必要な手続きは異なります。手続きの流れについて不安がある場合は、婚姻手続きを進める前に一度専門家へご相談いただくことをおすすめします。


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