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親に遺言を勧めたい~80代からでも遅くない理由

親に遺言を勧めたい~80代からでも遅くない理由

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

 皆さんの中には、80代以上の親御さんに遺言書の作成を勧めたいと考えながらも、「縁起でもない」「まだ早い」と言われるのではないかと躊躇している方も多いのではないでしょうか。また、親子間でお金や相続の話をすることに心理的な抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、遺言書は決して「縁起が悪いもの」ではありません。むしろ、残される家族への最後の思いやりであり、相続トラブルを未然に防ぐための重要な準備です。最近では、80代、90代になってから遺言書を作成される方も増えており、「遅すぎる」ということはありません。

 今回は、親世代に遺言書作成を勧める際のアプローチ方法と、80代からでも遅くない理由について詳しく解説します。

なぜ今、遺言書が必要なのか

高齢化社会と相続トラブルの増加

 日本は超高齢社会を迎え、相続に関するトラブルも年々増加しています。最高裁判所の統計によれば、家庭裁判所での遺産分割調停の件数は年間1万件を超えており、そのうち約3分の1が遺産総額1,000万円以下の「普通の家庭」での争いです。

 「うちには大した財産がないから大丈夫」と考えるのは危険です。むしろ、財産が少ないからこそ、分割方法を巡って相続人間で対立が生じやすいのです。

認知機能低下のリスク

 80代以上になると、認知機能の低下リスクが高まります。厚生労働省の調査では、85歳以上の約4人に1人が認知症を発症しているとされています。

 遺言書を作成するには「遺言能力」、つまり遺言の内容を理解し、その結果を認識できる判断能力が必要です。認知症が進行してからでは、法的に有効な遺言書を作成することが困難になります。親御さんが元気で判断能力がしっかりしている「今」こそが、遺言書作成のベストタイミングなのです。

親に遺言書作成を切り出す方法

タイミングと切り出し方

 遺言書の話を切り出すのは確かに難しいものです。しかし、以下のようなタイミングを活用すると、自然な形で話題にすることができます。

話題にしやすいタイミング

  • 年末年始やお盆など、家族が集まる機会

  • 親の誕生日や敬老の日などの節目

  • 親が体調を崩した後の回復期

  • 知人や親戚の相続トラブルの話題が出たとき

  • テレビや新聞で相続に関するニュースを見たとき

 切り出し方としては、「万が一のときに、私たち子どもが困らないようにしておきたい」という視点で話すと、親御さんも受け入れやすくなります。「お父さん(お母さん)に何かあったとき、私たちが揉めたら悲しいから」といった表現も効果的です。

遺言書のメリットを具体的に伝える

 親世代に遺言書作成を納得してもらうには、具体的なメリットを分かりやすく説明することが重要です。

 遺言書があると、相続手続きが大幅に簡素化されます。例えば、遺言書がない場合、銀行口座の解約や不動産の名義変更には相続人全員の実印と印鑑証明書が必要になります。相続人が遠方に住んでいたり、連絡が取りにくい関係だったりすると、書類を集めるだけで数ヶ月かかることも珍しくありません。

 一方、公正証書遺言があれば、遺言執行者が単独で手続きを進められるため、他の相続人の協力を得る必要がなく、スムーズに財産を引き継ぐことができます。

 また、遺言書で財産の分け方を明確にしておけば、相続人間での話し合いが不要になり、トラブルの芽を事前に摘むことができます。特に、不動産など分割しにくい財産がある場合や、相続人の経済状況に差がある場合は、遺言書で親の意思を明確にしておくことが重要です。

80代からでも遅くない3つの理由

1. 公正証書遺言なら専門家のサポートで安心

 80代の方が遺言書を作成する場合、公正証書遺言をお勧めします。公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法的に無効になるリスクがほとんどありません。

 作成の流れは以下の通りです。まず、行政書士などの専門家に相談し、財産状況や相続人の情報を整理します。次に、遺言の内容について専門家と相談しながら原案を作成します。その後、公証役場で公証人と面談し、遺言内容を確認した上で、証人2名の立会いのもとで遺言書に署名・押印します。

 このプロセス全体を通じて、行政書士が書類の準備から公証役場との調整まで全面的にサポートしますので、高齢の方でも無理なく作成できます。

2. 体力や移動が困難でも対応可能

 「もう足腰が弱くて外出が難しい」という方もご安心ください。公証人は、病院や自宅への出張サービスも行っています。体調や移動に不安がある場合でも、遺言書作成を諦める必要はありません。

3. 何度でも書き直しができる

 「今書いても、後で気が変わるかもしれない」という不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。しかし、遺言書は何度でも書き直すことができます。新しい遺言書を作成すれば、前の遺言書は自動的に無効になります。

 まずは今の時点での気持ちを遺言書にしておき、状況が変わったら改めて作成し直せばよいのです。「とりあえず作っておく」という気軽な気持ちで始めることが大切です。

実際に遺言書作成を進めるステップ

ステップ1:財産の棚卸し

 まず、親御さんと一緒に財産の全体像を把握しましょう。不動産、預貯金、有価証券、保険、貴金属など、プラスの財産だけでなく、住宅ローンや借入金などのマイナスの財産も確認します。

 最近では、ネット銀行や証券口座、仮想通貨などのデジタル資産も見落とさないよう注意が必要です。

ステップ2:相続人の確認

 法定相続人が誰になるのかを確認します。配偶者、子ども、孫、兄弟姉妹など、家族構成によって相続人は変わります。疎遠になっている親族がいる場合も、法定相続人であれば権利を持つため、事前に把握しておくことが重要です。

ステップ3:遺言内容の検討

 財産と相続人が明確になったら、誰に何を相続させるかを検討します。この際、以下の点に注意が必要です。

 遺留分に配慮することです。遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹を除く)が最低限受け取れる財産の割合のことで、これを侵害すると後々トラブルになる可能性があります。

 また、不動産は共有名義を避けることも重要です。複数の相続人で不動産を共有すると、後々の売却や管理で揉める原因になります。可能であれば、一人に相続させる形が望ましいでしょう。

 遺言執行者の指定も忘れずに行います。遺言執行者がいれば、遺言内容の実現がスムーズに進みます。行政書士や司法書士などの専門家を指定することも可能です。

ステップ4:専門家への相談

 遺言内容の骨子が固まったら、行政書士などの専門家に相談しましょう。専門家は、法的な問題点がないかをチェックし、遺言書の文案を作成します。また、公証役場との日程調整や必要書類の準備もサポートします。

ステップ5:公証役場での作成

 公証役場で、公証人の面前で遺言内容を確認し、署名・押印します。証人2名の立会いが必要ですが、これも専門家が手配できますのでご安心ください。

行政書士のサポート内容

遺言書作成にあたって、行政書士は以下のようなサポートを提供します。

 まず、遺言内容の相談と文案作成です。お客様のご希望を伺いながら、法的に問題のない遺言内容を一緒に考え、文案を作成します。

 次に、必要書類の取得代行として、戸籍謄本、住民票、不動産の登記事項証明書など、遺言書作成に必要な書類を代わりに取得します。

 公証役場との調整では、公証人との事前打ち合わせや日程調整を行い、スムーズな作成をサポートします。

証人の手配として、公正証書遺言に必要な証人2名を手配します。

 さらに、遺言執行者への就任も可能です。ご希望があれば、行政書士自身が遺言執行者として、遺言内容の実現をお手伝いします。

 費用面についてご心配な方もいらっしゃるかもしれませんが、お客様の状況や遺言内容によって必要なサポートも異なりますので、まずはお気軽にご相談ください。初回相談で、具体的な費用の目安についてもご説明いたします。

まとめ

 80代からの遺言書作成は決して遅くありません。むしろ、今この瞬間が最も適切なタイミングかもしれません。親御さんが元気で判断能力がしっかりしているうちに、家族みんなで話し合い、遺言書という形で親の思いを残しておくことは、残される家族への最大の贈り物です。

 「縁起でもない」という言葉に臆することなく、「家族の将来のため」という前向きな視点で、ぜひ親御さんに遺言書作成を勧めてみてください。専門家のサポートを受けながら進めれば、想像以上にスムーズに作成できるはずです。


 今回のコラムが、皆さんの親御さんとの大切な会話のきっかけになれば幸いです。遺言書作成に関するご質問やご不安な点がございましたら、お気軽に当事務所のお問合せフォームからご相談ください。皆さんからのご感想やご意見もお待ちしております。

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