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制度・動向

2025/9/8

外国人材のトラブル予防~採用時の確認と入社後の対応~

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

外国人材を受け入れる企業では、在留資格の確認、労働条件の説明、日々のコミュニケーションなど、さまざまな場面で戸惑うことがあるのではないでしょうか。

私自身、外資系企業で長年働く中で、国際的な職場での意思疎通の難しさと、お互いの理解を確かめることの大切さを経験してきました。同じ説明を聞いていても、前提としている知識や仕事の進め方が違えば、受け止め方にずれが生じることがあります。

ただし、問題をすべて「文化の違い」で片付けてしまうと、説明不足や社内の管理体制など、本来見直すべき原因を見落としてしまいます。

外国人材のトラブル予防では、採用時に必要な確認を行い、入社後も本人が理解できる説明と相談の機会を用意することが大切です。今回は、企業が取り組みやすい順序で、そのポイントを整理します。

採用時は、在留カードと実際の仕事を照らし合わせます

外国人材を採用する際には、在留カードの原本を確認し、顔写真や記載事項を本人と照合します。そのうえで、在留資格、在留期間の満了日、就労制限の有無などを確認してください。

重要なのは、「在留カードを持っているから働ける」と判断しないことです。予定している仕事が、その方に認められた活動に該当するかを確認する必要があります。

例えば、就労系の在留資格では、認められる活動の範囲があります。「特定活動」の場合には、旅券に添付された指定書などで、個別に指定された活動を確認します。

「留学」や「家族滞在」の方を雇用する場合は、資格外活動許可の有無と内容を確認してください。許可があっても、就労時間や従事できる業務などに条件があります。

採用担当者だけでなく、実際に仕事を指示する部署にも、担当可能な業務の範囲を共有することが大切です。採用時の説明と、現場で任せる仕事が食い違わないようにしましょう。

なお、在留カードの様式は変更されているため、見慣れた位置だけを探すのではなく、最新の公式案内に沿って確認してください。カードの見方は、出入国在留管理庁「在留カードとは?」で確認できます。

番号照会だけで、カードの真正性は判断できません

在留カード等番号失効情報照会は、入力したカード番号の失効情報を確認するためのサービスです。「失効していない」という結果だけで、目の前のカードが真正であると保証されるわけではありません。

実在する有効な番号を悪用した偽造カードもあるため、番号照会に加え、原本の券面、本人との照合、ICチップの読取などを組み合わせて確認することが重要です。

出入国在留管理庁が公開している読取アプリでは、ICチップの情報を読み取り、券面との照合や偽変造の確認に役立てることができます。利用方法は、出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」をご確認ください。

ただし、読取に失敗しただけで、直ちに偽造と断定することも適切ではありません。端末や読取方法の問題、ICチップの故障なども考えられます。公式の案内に沿って再確認し、疑義が解消しない場合には、地方出入国在留管理官署へ相談しましょう。

確認の目的は、本人を疑うことではなく、本人と企業の双方が安心して働ける状態を確かめることです。採用時の確認手順を定め、担当者によって対応が大きく変わらないようにしておくとよいでしょう。

入社後も、期限と業務変更を継続して確認します

採用時に確認しても、その後の更新や異動で状況が変わることがあります。在留資格の管理は、入社時だけで終わるものではありません。

企業では、在留資格、在留期間の満了日、資格外活動許可の条件などを管理し、本人と担当部署が早めに準備を始められるようにします。管理方法は、会社の規模に合った一覧表やシステムで構いません。

在留期間の満了日と、在留カードの有効期限は、同じとは限りません。例えば、永住者には在留期間の満了がありませんが、カードには有効期限があります。管理する日付が何を意味するのかを区別してください。

更新・変更申請中に在留期間の満了日を迎える場合には、一定の条件で特例期間が認められることがあります。「日付を過ぎたので直ちに就労できない」「申請中なので期限を気にしなくてよい」のどちらにも決めつけず、申請した事実と適用条件を確認しましょう。

配置転換や昇進の際には、新しい業務が現在の在留資格で認められるかを確認します。役職名だけで判断せず、実際の仕事内容を整理することが大切です。

判断が難しい場合、就労資格証明書は確認方法の一つになります。ただし、取得は任意であり、認められる活動の範囲を広げる許可ではありません。詳しくは、当サイトの関連記事「就労資格証明書の活用法|転職・昇進時の確認」をご覧ください。

カードの写しや確認記録を保存する場合は、利用目的を明確にし、閲覧できる担当者、保管方法、不要になった際の処分方法も定めましょう。原本を会社が預かり続ける運用は避けてください。

労働条件は、総支給額と手取りの違いまで説明します

労務面の行き違いを防ぐには、雇用契約の段階で、本人が理解できる言語や方法を使って労働条件を伝えることが重要です。

給与については、総支給額だけでなく、税金や社会保険料などが控除されることを説明しましょう。控除項目と理由が分からないままでは、給与明細を見て「聞いていた金額と違う」と感じる可能性があります。

残業や休日出勤についても、「忙しいときはお願いします」という説明だけでは十分ではありません。所定労働時間、休憩、休日、時間外労働の取扱い、割増賃金などを具体的に伝えます。

年次有給休暇の申請方法や、欠勤・遅刻時の連絡先も、入社時に確認しておくと安心です。会社のルールを説明する際には、法令上の権利と社内の手続きを混同しないことも大切です。

社会保険の説明では、加入が必要となる条件と、医療・年金などの保障の役割を伝えます。年金について、帰国時に脱退一時金を受け取れる可能性だけを強調することは避けましょう。

脱退一時金には受給条件があり、受給すると、それまでの日本の年金加入期間が失われます。詳しくは、当サイトの関連記事「外国人材の脱退一時金|帰国前の確認と企業の対応」で説明しています。

「分かりましたか」から、具体的な確認へ進めます

日々の仕事では、相手が「分かりました」と答えても、指示の内容を同じように理解しているとは限りません。これは外国人材だけに限らず、誰とのやり取りでも起こり得ることです。

業務指示では、担当する作業、期限、完成の状態、困ったときの相談先を具体的に示しましょう。「なるべく早く」「適当にまとめて」といった表現は、受け止め方に幅があります。

例えば、「明日の午後3時までに、確認した内容をA4用紙2枚以内でまとめてください」と伝えると、期限と成果物を共有しやすくなります。

理解を確かめる際も、「どの順序で進めますか」「途中で判断に迷ったら誰に相談しますか」と尋ねると、認識の違いを見つけやすくなります。本人を試すためではなく、説明が十分だったかを確かめる機会として行うことが大切です。

重要な指示は、口頭だけでなく、短い文章や図でも残すと確認しやすくなります。専門用語や社内だけで使う略語は、初めて聞く人にも分かるよう補足してください。

また、外国人材に日本の職場慣行を理解してもらうだけでなく、日本人社員にも、明確な説明や質問しやすい雰囲気づくりを働きかけましょう。

生活面の支援は、必要な情報と相談先を届けます

住居や医療などの困りごとは、仕事にも影響する場合があります。企業がすべてを引き受ける必要はありませんが、本人が適切な窓口へ相談できるようにすることは有効です。

住居については、契約内容、初期費用、退去時の原状回復などを確認できるよう支援します。会社が連帯保証人になる場合は、負担する責任の範囲を十分に検討してください。保証会社や外国人の入居支援サービスなども、選択肢になります。

ゴミの分別や騒音、自転車の駐輪などは、地域や物件ごとにルールが異なります。「日本ではこうする」と一般化せず、居住する自治体や管理会社の案内を使って説明しましょう。

医療機関では、現在、マイナ保険証または資格確認書による資格確認が基本です。マイナンバーカードを持っていることと、健康保険証として利用登録していることは同じではありません。

「資格情報のお知らせ」も、資格確認書とは異なる書類です。本人がどの方法で受診できるかを確認し、病院の予約方法や緊急時の連絡先と併せて案内してください。詳しくは、厚生労働省「資格確認方法について」をご確認ください。

生活面の相談を受ける際には、本人の意思とプライバシーを尊重し、支援に必要な範囲で情報を取り扱うことも大切です。

問題が起きたら、安全確保と事実確認から始めます

予防に取り組んでも、問題が起きることはあります。その際は、まず安全や健康に関わる緊急性がないかを確認し、必要な対応を優先します。

次に、関係者からそれぞれ話を聞き、いつ、どこで、何が起きたのかを整理します。必要に応じて通訳を利用し、相談したことで本人が不利益を受けないよう配慮してください。

原因を考える際には、国籍や文化、本人の能力だけで結論を出さず、指示の内容、仕事量、教育方法、相談体制などにも目を向けましょう。

対応後は、本人に結果と今後の方針を分かる形で伝え、同じ問題を防ぐための手順を見直します。記録を社内で共有する場合も、個人情報や相談内容を必要以上に広げないよう注意が必要です。

在留資格の確認は行政書士、労務・社会保険は社会保険労務士、税務は税理士、法的紛争は弁護士など、内容に応じた専門家へ相談することが、早期の対応につながります。

小さな確認の積み重ねが、安心して働ける職場をつくります

外国人材のトラブル予防は、特別な仕組みを一度つくれば完成するものではありません。採用時の確認、入社時の説明、日々の業務指示、定期的な面談を通じて、認識のずれを早めに見つけることが大切です。

企業のルールを伝えるだけでなく、本人が何に戸惑い、どのような支援を必要としているかを聞くことで、改善すべき点も見えてきます。

未来扶桑行政書士事務所では、外国人材の採用や配置変更に伴う在留資格の確認、申請準備、在留管理に関するご相談に対応しています。必要に応じて各分野の専門家との連携も検討し、企業と外国人材の双方が安心して働ける環境づくりを支援します。


外国人材の採用・在留管理に関するご相談、この記事へのご感想は、お問合せフォームからお寄せください。

※本記事は2026年10月5日時点の公表情報に基づいています。実際の対応に当たっては、最新の制度と個別の状況をご確認ください。

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