遺言書の書き方と種類を完全解説 - おひとり様・子なし夫婦の備えとして
こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 代表の樋口裕昭です。最近前職の友人・知人から遺言書に関する相談が増えてきています。具体的には、「子どもがいないので、財産をどうしたらいいかわからない」「独身で一人暮らし、もし何かあったときのことが心配」「夫婦二人だけなので、お互いに何かあったらと思うと不安で…」といった相談が多いように感じます。
実は、こうした声は世の中一般的にも決して珍しいものではありません。現在の日本では、単身世帯が全世帯の約38%を占め、夫婦のみの世帯も約20%となっています。つまり、子どもがいない世帯が全体の6割近くにもなっているからなんです。
1. なぜ今、遺言書が必要なのか
① 現代社会の変化が生む新たな課題
従来の日本では「家督相続※」の考え方が根強く、長男が家を継ぐという慣習がありました。しかし、現在は核家族化が進み、おひとり様や子なし夫婦世帯が当たり前になっています。※「家督相続」=昔の制度で、家の財産や地位を長男が一括して受け継ぐこと
この変化によって、「誰に財産を渡したいのか」「どのように財産を活用してほしいのか」といった意思表示の重要性が格段に高まっているのです。
② 遺言書があることのメリット
あなたの想いを確実に実現できる 法定相続では、配偶者や兄弟姉妹などに財産が分配されますが、必ずしもあなたの想いと一致するとは限りません。遺言書があれば、お世話になった方への感謝の気持ちを形にしたり、支援したい団体への寄付も可能になります。
残された人の負担を軽減できる 遺言書がないと、相続人同士で遺産分割協議※を行う必要があります。これは時間もかかり、場合によっては関係性に亀裂が生じることも。遺言書があれば、こうした負担を大幅に減らせます。※「遺産分割協議」=相続人全員で遺産をどう分けるかを話し合って決めること
相続手続きがスムーズになる 銀行口座の解約や不動産の名義変更など、相続手続きは複雑です。遺言書があることで、これらの手続きが格段にスムーズになります。
③ 一方で、こんな誤解もあります
「財産が少ないから必要ない」 実は、財産の多少は関係ありません。むしろ、少額の財産でも「誰に渡すか」が明確でないと、手続きが複雑になることがあります。
「まだ若いから大丈夫」 遺言書は高齢者のためだけのものではありません。人生には予期せぬ出来事もあります。元気なうちに準備しておくことが大切です。
「家族に不安を与えてしまう」 むしろ逆です。遺言書があることで、家族は「きちんと考えてくれている」と安心感を得られます。
「一度書いたら変更できない」 遺言書は何度でも書き直すことができます。新しい遺言書を作成すれば、古い遺言書は自動的に無効になります。人生の変化に合わせて内容を見直すことも大切です。
2. 実は見落としがちな課題とは
① おひとり様・独身の方が直面する問題
「親しい友人に財産を残したい」「お世話になった施設に寄付したい」と思っても、遺言書がないとこれらの想いは実現できません。法定相続人※である兄弟姉妹や甥姪に財産が渡ることになります。※「法定相続人」=法律で定められた相続の権利を持つ人(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)
また、身元保証人や緊急連絡先の問題、デジタル遺品の管理など、おひとり様特有の課題も増えています。独身の方こそ、自分の意思を明確に残しておくことが重要です。
② 子なし夫婦・お二人様世帯が見過ごしやすいリスク
夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、残された配偶者が全財産を相続できると思われがちですが、実際は異なります。子どもがいない場合、亡くなった方の親や兄弟姉妹も相続人になるのです。
つまり、夫婦で築いた財産の一部を、配偶者以外の人と分けることになる可能性があります。これは多くの子なし夫婦が知らない事実です。
③ 認知症への備えも重要
遺言書は判断能力がしっかりしているうちに作成する必要があります。認知症が進行してからでは、有効な遺言書を作ることができません。「そのうち」と先延ばしにしていると、手遅れになる可能性があります。
3. 遺言書の種類と書き方を知ろう
では、実際に遺言書を作成するとして、どのような種類があるのでしょうか。日本の法律では、主に3つの方式が定められています。
① 自筆証書遺言 - 手軽に始められる遺言書
全文、日付、氏名を自分の手で書き、押印する遺言書です。
良い点
費用がほとんどかからない(紙とペンがあれば作成可能)
思い立ったときにすぐ作成できる
内容を誰にも知られずに済む
2020年から法務局で保管してもらえるようになった(保管手数料:3,900円)
法務局での自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は、検認※手続きが不要になります。
※「検認」=家庭裁判所で遺言書の存在・形式・状態を確認する手続きです
注意点
法的な決まりを守らないと無効になる
字が読めなかったり、紛失したりするリスク
法務局に預けない場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要(手数料:800円)
費用目安(ご自身で行われる場合)
作成費用:ほぼ0円
法務局保管:3,900円
検認手続き:800円
向いている方 比較的シンプルな内容で、費用を抑えたい方。ただし、法務局での保管制度の利用をおすすめします。
② 公正証書遺言 - 最も確実な方法
公証人という法律の専門家が作成し、公証役場で保管される遺言書です。
良い点
法的に間違いがなく、最も確実
紛失や改ざんの心配がない
相続時の手続きがスムーズ
専門家のアドバイスを受けながら作成できる
注意点
財産額に応じて費用がかかる
証人2名の立会いが必要
完全に秘密にはできない
費用目安(ご自身で行われる場合)
財産1,000万円以下:約2万3,000円
財産3,000万円:約2万9,000円
財産5,000万円:約4万3,000円
証人2名:各1万1,000円程度
向いている方 確実な遺言書を残したい方、財産関係が複雑な方、家族間のトラブルを避けたい方。
③ 秘密証書遺言 - あまり使われない方法
内容は秘密にしつつ、遺言書の存在だけを証明してもらう方式です。実際の利用は少ないのが現状です。
良い点
内容を完全に秘密にできる
パソコンでの作成も可能
注意点
手続きが複雑で費用もかかる(公証人手数料:1万1,000円)
結局、家庭裁判所での検認手続きが必要
法的な不備があると無効になるリスク
4. 遺言書の文例・ひな形と書き方のポイント
基本的な文例・ひな形
全財産を配偶者に相続させる場合
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、
妻 山田花子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
第2条 遺言者は、この遺言の執行者※として、
次の者を指定する。
住所 東京都港区南青山〇丁目〇番〇号
氏名 未来扶桑 太郎
職業 行政書士
令和〇年〇月〇日
遺言者 山田一郎 ㊞※「遺言執行者」=遺言の内容を実現するために手続きを行う人
おひとり様が友人に遺贈する場合
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、
友人 田中次郎(昭和〇年〇月〇日生)
住所 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号
に遺贈※する。
令和〇年〇月〇日
遺言者 山田花子 ㊞※「遺贈」=遺言によって相続人以外の人に財産を渡すこと
書き方のポイント
日付は正確に:「令和〇年〇月吉日」は無効
氏名は戸籍通りに:通称やペンネームは不可
押印は必須:認印でも可、スタンプ印は避ける
訂正は慎重に:書き直しを推奨
5. あなたに合った遺言書の選び方
選択の基準として、以下の点を考慮してみてください。
費用を重視したい → 自筆証書遺言(法務局保管制度を利用)
確実性を重視したい → 公正証書遺言
内容が複雑 → 公正証書遺言
まずは気軽に始めたい → 自筆証書遺言
ただし、「とりあえず自筆証書遺言を作って、後で公正証書遺言に切り替える」という方法もあります。大切なのは、まず一歩を踏み出すことです。
6. まとめ - 今から始める安心の備え
人生100年時代と言われる現在、遺言書は決して縁起の悪いものではありません。むしろ、自分らしい人生の締めくくりを考える、前向きな準備といえるでしょう。
おひとり様も子なし夫婦も、「もしものとき」に備えることで、今をより安心して過ごすことができます。そして何より、あなたの大切な想いを確実に実現できるのです。
「まだ早い」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、元気なうちに準備しておくことが何より大切です。遺言書作成や相続について疑問がある方は、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
あなたの状況に合わせて、最適な方法をご提案いたします。初回相談は無料ですので、まずは気軽にお問い合わせフォームからお話を聞かせてください。
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