建設業で特定技能外国人を採用するには ~JAC・CCUS・国交省認定、手続きと費用の全体像~
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
建設業界は「2024年問題」による時間外労働の上限規制適用以降、人手不足がさらに深刻化しています。2025年6月末時点で約4万人の特定技能外国人が建設分野で就労しており、16分野の中で第4位の規模に達しています(出入国在留管理庁「令和7年6月末特定技能在留外国人数」より)。今後もさらなる増加が見込まれる中、初めて建設分野で特定技能外国人の採用を検討している事業者の方にとって、まず知っておくべきことがあります。
建設分野の特定技能は、16分野の中で最も手続きが複雑とされる分野です。他の分野にはない「JAC(一般社団法人建設技能人材機構)への加入」「建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録」「国土交通省による建設特定技能受入計画の認定」という3つの固有要件があり、これらを正しい順序で整備しなければ入管への在留資格申請に進むことができません。
今回は、建設事業者が「採用を決めた」という段階から「外国人が現場に立つまで」の全体の流れを時系列で整理し、各段階で発生する費用の目安も合わせてお伝えします。

まず確認すること:建設業許可は取得済みか
建設分野の特定技能外国人を受け入れるための大前提として、受け入れ事業者が建設業許可を保有していることが必要です。建設業法上の建設業許可を持っていない事業者は、特定技能外国人を受け入れることができません。
また、建設業許可は有効期限があり、更新を怠って失効している場合も同様に受け入れができません。現在の許可の有効期限を確認し、受け入れ手続きの期間中に失効しないよう注意が必要です。
STEP 1:JACへの加入(手続き開始から最初に着手)
建設業許可の確認ができたら、最初に着手するのがJAC(建設技能人材機構)への加入です。JACは建設分野の特定技能において、他の分野の「協議会」に相当する機能を果たす機関で、加入は受け入れの必須要件です。
JACへの加入には2つのルートがあります。
①JAC正会員団体(建設業者団体)の会員として間接的に加入する方法
全国建設業協会・日本建設業連合会・全国中小建設業協会など、JACの正会員である建設業者団体に加入することで、間接的にJACに加入したことになります。この場合、JACへの年会費は発生しませんが、所属する建設業者団体の会費が別途必要になります。すでに建設業者団体に加入している事業者は、まずこのルートで対応できるかを確認するのが先決です。
②JACの賛助会員として直接加入する方法
正会員団体に加入していない、または加入が難しい場合は、JACの賛助会員として直接加入します。賛助会員の年会費は24万円(法人の場合)です。毎月25日の午前12時(土日祝の場合は翌営業日)までに申し込みが完了すると、翌月の第2営業日に承認されます。
受入負担金(月額)
JACへの加入後、特定技能外国人1人を受け入れるごとに受入負担金が月額で発生します。金額は1人あたり月額12,500円が目安です(2026年時点)。受入負担金は事業者が負担するものであり、外国人労働者本人に負担させることは禁じられています。
STEP 2:CCUSへの登録(JACと並行して進める)
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、建設技能者の就業実績・資格・社会保険加入状況などを蓄積・管理する業界共通のプラットフォームです。特定技能外国人を受け入れる場合、受け入れ事業者(事業者登録)と特定技能外国人本人(技能者登録)の双方がCCUSに登録されていることが義務付けられています。
CCUSの事業者登録には、資本金規模に応じた登録料がかかります。技能者登録の費用は技能者1人あたり2,500円(長期登録の場合)です。CCUSの登録が完了して事業者IDが発行されるまで待ってから、次のステップである受入計画の申請に進む必要があります。「申請中」の状態では受入計画の申請ができないため、このタイミングの管理が重要です。
なお、2025年8月1日から2026年3月31日の間に能力評価を申請した方については、CCUSの能力評価手数料が建設業振興基金により全額支援される制度が設けられています(最新情報はJAC公式サイトでご確認ください)。
STEP 3:建設特定技能受入計画の認定申請(国土交通省)
JACへの加入が完了し、CCUSの事業者登録が完了したら、国土交通省(地方整備局等)への「建設特定技能受入計画」の認定申請に進みます。この手続きは建設分野特有のものであり、他の分野には存在しません。入管への在留資格申請の前に必ずこの認定を受ける必要があります。
申請はオンライン(外国人就労管理システム)で行います。審査には標準的に2か月程度を要しますが、書類の不備・修正対応が多く発生することもあるため、余裕を持って着手することが重要です。
受入計画の認定申請で必要となる主な書類は16点にのぼります。主なものとして、雇用契約書・雇用条件書・重要事項事前説明書・JAC会員証明書・CCUS事業者ID証明・建設業許可証明・ハローワーク求人票などがあります。これらの書類間で記載内容(所定労働時間・休日日数・賃金額・昇給条件等)が一致していることが審査で厳しく確認されます。
審査で不認定になりやすい3つのポイント
実務上よく問題になるのが次の3点です。①JACへの加入やCCUS事業者IDが「申請中」の状態で申請してしまうケース。登録完了・会員証発行を待ってから申請することが必要です。②日本人求人との報酬差。ハローワーク求人票で「月給25万円〜」と掲載しているのに、特定技能外国人の基本賃金が23万円では同等以上と認められません。「日本人と同等以上の報酬」が求められます。③月給制以外での雇用。建設分野の特定技能外国人は月給制が必須で、日給制・時給制では認定されません。
STEP 4:在留資格申請(入管)
国土交通省から建設特定技能受入計画の認定を受けたら、ようやく入管への在留資格申請に進めます。海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書交付申請、日本国内で在留資格変更(技能実習からの移行等)の場合は在留資格変更許可申請を行います。
在留資格申請では、受入計画の認定書・雇用契約書・支援計画書・特定技能外国人の試験合格証明書等が必要になります。建設分野も他の特定技能分野と同様に、受け入れ事業者は「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、義務的支援を提供する必要があります。自社で支援を実施できない場合は登録支援機関に委託することができます。
費用の全体像:初年度はいくらかかるか
建設分野の特定技能は、他の分野と比べて受け入れ費用が高くなる傾向があります。1人採用する場合の初年度費用の目安は次のとおりです(JAC賛助会員として直接加入する場合)。
JAC賛助会員年会費:24万円
受入負担金:約15万円(12,500円×12か月)
CCUS登録費用(事業者・技能者):約1.5〜5万円
在留資格申請・行政書士報酬:数万円〜(自社申請の場合は印紙代等のみ)
登録支援機関への委託料(委託する場合):月額2〜5万円程度
これらを合計すると、初年度は50万円前後以上になるケースも珍しくありません。2人目以降は年会費が増加しない分、受入負担金・CCUS技能者登録費用等が追加される形になります。採用計画の段階から費用を十分に見込んだ予算設計が不可欠です。
業務区分の統合:3区分で柔軟な就労が可能に
建設分野の特定技能の業務区分は、かつて19区分に細分化されていましたが、現在は「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分に統合されています。この統合により、同じ区分内であれば複数の作業種別に柔軟に従事させることができるようになっており、現場での運用の自由度が高まっています。
また、受け入れ人数の上限は常勤職員数以内とされており、外国人労働者の数が自社の常勤日本人職員数を超えることはできません。小規模な建設事業者では上限が低くなるため、受け入れ可能人数を事前に把握しておくことが重要です。
手続き全体のスケジュール感
JACへの加入着手から外国人が現場に立つまで、順調に進んでも4〜6か月程度かかることが一般的です。受入計画の審査で修正・追加資料の対応が生じた場合はさらに延びることがあります。「来月から現場に入ってほしい」という短期間での対応は現実的に難しいため、採用計画の段階から逆算して早めに動き出すことが、建設分野で特定技能を活用するうえでの最重要ポイントです。
今回の内容はいかがでしたでしょうか。「自社の状況で受け入れが可能か確認したい」「手続きの進め方を具体的に相談したい」など、ご感想やご質問がありましたら、お問い合わせフォームからお気軽にお聞かせください。
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