財産目録作成の実践ステップ
これまでのブログ記事を通じて、財産目録の重要性から専門的な財産、そして公正証書遺言の実際について学んでいただきました。
多くの読者の方から「具体的にどこから手をつければよいのか」「実際の作成手順を知りたい」というご質問をいただきました。そこで今回は、財産目録作成の実践的なステップを詳しく解説いたします。

ステップ1:基本情報の整理(1ヶ月程度)
金融機関の情報整理
通帳とキャッシュカードの確認 まずは手元にある通帳とキャッシュカードをすべて集めて整理しましょう。意外に多くの口座を持っていることに気づかれると思います。
整理すべき項目:
銀行名・支店名
口座番号
口座名義(本人名義か家族名義か)
通帳の最終記帳日
概算残高
ネット銀行・証券口座の確認 第1回のブログでお話ししたデジタル遺産の代表例です。スマートフォンの銀行アプリ、証券アプリを確認し、以下を整理してください:
サービス名
ログインID(メモに残す)
登録メールアドレス
概算残高や評価額
最終ログイン日
このようなデジタル資産は、ご自身で整理することも可能ですが、セキュリティの観点から専門家と相談しながら進めることをおすすめします。
不動産関係書類の確認
権利証・登記識別情報の確認 不動産をお持ちの場合は、以下の書類を探して内容を確認してください:
権利証(登記済証)または登記識別情報通知書
固定資産税納税通知書(最新年度のもの)
不動産売買契約書
住宅ローンに関する書類
共有名義の確認が重要 特に重要なのが、不動産の名義の確認です。私の友人に実際にあった事例をご紹介します。
友人は父と共有名義の土地に二世帯住宅を建てて住んでいました。数年前に父が亡くなり、その後家を建て直す際に、土地の名義変更手続きを行っていないことに気づいたのです。つまり、相続登記が未了のままだったのです。
さらに注意が必要なのは、このような場合、相続税の申告や納税も未了になっている可能性があることです。相続登記と相続税申告は別の手続きですが、どちらも忘れられがちな重要な手続きです。
このような場合、財産目録には以下のように記載する必要があります:
現在の登記名義:「故父○○○○、本人○○○○ 共有持分各2分の1」
実際の状況:「相続登記未了、本人の実質的な持分2分の1」
今後の対応:「相続登記手続きが必要(司法書士相談)」
税務上の確認:「相続税申告の要否確認が必要(税理士相談)」
このように、手続きが未完了の相続財産についても、現状を正確に把握し、財産目録に記載することが重要です。なお、相続登記については司法書士、相続税については税理士の専門分野となりますが、財産目録作成の段階でこうした問題を発見し、適切な専門家につなげることも重要な作業です。
保険関係の整理
生命保険証券の確認 生命保険は相続において特別な扱いを受けるため、詳細な確認が必要です:
保険会社名・商品名
証券番号
契約者・被保険者・受益者
保険金額
解約返戻金の有無と概算額
保険料の支払い状況
見落としがちな保険
勤務先の団体保険
農協・生協の共済
クレジットカード付帯の保険
住宅ローンの団体信用生命保険
これらの保険も忘れずに確認し、必要に応じて保険会社に問い合わせて最新の情報を入手してください。
ステップ2:評価額の調査(1-2ヶ月程度)
不動産の評価確認
固定資産税評価額の確認 固定資産税納税通知書に記載されている評価額を確認します。これは相続税計算の基礎となる重要な数値です。
路線価による概算評価 国税庁のホームページで路線価を確認し、概算での相続税評価額を算出できます。ただし、詳細な計算は専門知識を要するため、正確な評価が必要な場合は専門家にご相談ください。
時価の把握 近隣の売買事例や不動産会社による査定も参考になります。相続税評価額と時価には差がある場合が多いので、両方を把握しておくことが重要です。
金融資産の評価
預貯金の残高確認 各金融機関で残高証明書を取得することも可能ですが、まずは通帳やネットバンキングで残高を確認し、概算額を把握してください。
有価証券の時価評価 株式や投資信託については、評価基準日(通常は相続開始日)での時価で評価します。証券会社から定期的に送られる取引残高報告書も重要な資料となります。
変動する資産の注意点 株式、投資信託、外貨預金等は日々価格が変動します。財産目録作成時点での概算額を記載し、定期的な見直しが必要であることを明記しておきましょう。
ステップ3:専門的財産の確認
6月19日記載の「見落としがちな専門的財産」で学んだ財産
6月19日記載の「見落としがちな専門的財産〜権利関係・知的財産・海外資産編〜」でお話しした以下の財産についても、忘れずに確認してください:
権利関係の財産
ゴルフ会員権:契約書で現在の価値を確認
互助会積立金:積立額と満期受取額を確認
その他の会員権:名義変更の可否も含めて調査
知的財産権
著作権:印税等の継続収入がある場合
特許権・商標権:ライセンス収入がある場合
事業用資産:営業権(のれん)等の評価
海外資産
海外不動産:現地の評価額と日本での相続税評価
海外金融資産:為替レートによる円換算額
見落としがちなその他の財産
債権関係
友人・親族への貸付金
保証金・敷金
未収の賃料・利息
税金関係
確定申告による還付金
過納となっている税金
これらの専門的な財産については、評価方法が複雑な場合が多く、専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。
ステップ4:目録の作成と更新
財産目録の記載項目
法定の様式はありませんが、以下の項目を含めることが重要です:
基本項目
財産の種類
所在地・金融機関名等
詳細(地番・口座番号等)
評価額または概算額
名義人
備考(注意事項等)
記載例
【不動産】
種類:宅地
所在:東京都港区南青山四丁目○番○
地積:150.00㎡
持分:2分の1(共有者:妻○○○○)
評価額:3,000万円(固定資産税評価額)
備考:自宅敷地
【預貯金】
金融機関:○○銀行△△支店
種類:普通預金
口座番号:1234567
残高:500万円(令和○年○月○日現在)
名義:本人
定期的な更新の重要性
財産は日々変動するため、以下のタイミングでの更新をおすすめします:
年1回の定期見直し:毎年誕生日や年末等の決まった時期
大きな変化があった時:不動産の売買、大きな資産の購入・売却
家族構成の変化:結婚、離婚、出生、死亡等
健康状態の変化:大きな病気やケガの際
よくある間違いと注意点
「大したものはない」という思い込み 相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人数)を超える方は想像以上に多くいらっしゃいます。「うちには関係ない」と思わず、一度しっかりと計算してみることが重要です。
名義と実質所有者の混同 配偶者名義の預金でも、資金の出所が本人の場合は本人の財産とみなされる可能性があります。名義だけでなく、実質的な関係も整理しておきましょう。
デジタル資産の軽視 6月17日のコラムでお話ししたとおり、ネット銀行、電子マネー、ポイント等も立派な財産です。「たかがポイント」と思わず、きちんと把握しておくことが重要です。
財産目録作成の次のステップ
今回の記事で、財産目録作成の具体的な手順についてお話ししました。これらのステップを実践していただくことで、遺言書作成への確実な第一歩を踏み出せます。
財産目録が完成した後は、以下の内容について検討を進めてください:
財産目録から遺言書作成までの全体的な流れ
60歳が最適なタイミングである理由
遺言書の種類別メリット・デメリット
家族構成別の具体的な作成例
専門家との効果的な連携方法
これらについてより詳しく知りたい方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。皆様のご要望やご意見をお聞かせいただきながら、より実践的で役立つ内容を提供していきたいと思います。同世代として、専門家として、皆様の「安心できる人生の後半戦」をサポートできることを楽しみにしております。
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