質問にお答えします〜公正証書遺言の実際はどのようなものですか?〜
前回までの記事について、多くの読者の方からご質問をいただきました。その中でも特に多かったのが、「公正証書遺言の実際の手続きについて知りたい」というご要望でした。
読者Aさんからのご質問: 「コラムを読んで遺言書の重要性は理解できましたが、公正証書遺言を作る場合、実際に公証役場ではどのような手続きが行われるのでしょうか?初めて行く場所なので不安です。時間はどのくらいかかりますか?費用は?持参するものは?具体的な流れを教えてください。」(いただいた実際の質問内容を要約しております。)
同世代の皆様の多くが同じような疑問をお持ちだと思います。確かに公証役場は日常的に行く場所ではありませんから、不安に思われるのは当然です。
今回は、公正証書遺言作成の実際の手続きについて、できるだけ具体的に解説いたします。

- 公正証書遺言とは何か(基本の確認)
- 事前準備段階〜公証人との打ち合わせ〜
- 必要書類の準備
- 公証人との事前相談
- 専門家サポートの重要性
- 作成当日の流れ
- 当事務所での事前準備(推奨)
- 公証役場への訪問
- 本人確認
- 遺言書の読み聞かせ
- 署名・押印
- 当日の注意点・トラブル回避
- 印鑑に関する重要な注意事項
- 当日の発言・態度に関する注意
- 当日の体調管理
- 正本・謄本の交付と保管
- 作成される書類
- 保管方法の重要性
- 費用について
- 公証人手数料(目的財産額別)
- 作成にかかる時間
- 全体のスケジュール
- 作成後の注意点
- 内容変更の必要が生じた場合
- 定期的な見直し
- まとめ:公正証書遺言作成のポイント
- 遺言書作成の真の目的
- 専門家との事前コミュニケーションの本質
- 私たちの使命とサポートの姿勢
公正証書遺言とは何か(基本の確認)
まず改めて確認ですが、公正証書遺言は公証人が作成する公文書としての遺言書です。自筆証書遺言と比較して以下のメリットがあります:
法的効力が確実:公証人が法律的なチェックを行う
紛失・偽造のリスクがない:公証役場で原本を保管
家庭裁判所での検認手続きが不要:すぐに相続手続きに使える
内容の明確性:専門家が関与するため曖昧な表現を避けられる
一方で、自筆証書遺言と比較して手続きが複雑で、費用もかかります。
事前準備段階〜公証人との打ち合わせ〜
必要書類の準備
公正証書遺言を作成する前に、以下の書類を準備する必要があります。ご自身で収集することも可能ですが、行政書士に依頼すれば効率的に準備を進めることができます:
遺言者に関する書類:
印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内)
戸籍謄本
住民票
相続人に関する書類:
相続人全員の戸籍謄本
受遺者(相続人以外に遺贈する場合)の住民票
財産に関する書類:
不動産登記事項証明書(不動産がある場合)
固定資産評価証明書または固定資産税納税通知書
預貯金通帳のコピー
株式等の証券類
保険証券のコピー
公証人との事前相談
必要書類が揃ったら、公証役場に連絡を取り、公証人との事前相談の予約を取ります。この段階で以下のことを行います:
遺言内容の検討:
財産の分割方法の確認
相続人の特定
遺言執行者の指定
付言事項(法的効力はないが家族へのメッセージ)の内容
これらの検討は、法律知識と実務経験を要する複雑な作業です。ご自身で進めることも可能ですが、行政書士と一緒に検討することで、より適切で安心な内容とすることができます。
法的な問題のチェック:
遺留分に関する配慮
税務上の問題点の確認
将来的な変更の可能性の検討
この段階では特に専門知識が重要となり、行政書士のサポートが効果的です。
この事前相談は通常1〜2回行われ、1回あたり1時間程度です。相談料は無料の公証役場が多いですが、事前に確認することをおすすめします。
専門家サポートの重要性
行政書士を交えた事前準備が必須
公正証書遺言の作成においては、行政書士等の専門家を交えた事前の十分な打ち合わせが必須です。理由は以下の通りです:
事前打ち合わせで決めた内容と当日の発言が食い違うと、作成が中止になる場合がある
法的な専門知識が必要な内容の検討
公証役場ごとに異なる作法や手続きへの対応
トラブルの未然防止
行政書士によるトータルサポート
もちろん、必要書類の収集や遺言内容の検討は、ご自身で進めることも可能です。しかし、確実で安心な遺言書作成のために、多くの方が行政書士のサポートを活用されています。
例えば、当事務所では以下のようなトータルサポートを提供しております:
初回相談:遺言書作成の方針決定
相続人関係図の作成:正確な相続関係の整理
財産目録の作成支援:見落としがちな財産の発見
遺言書原案の作成:法的に有効な内容の検討
証人の手配(オプション):信頼できる証人の紹介
このようなワンパッケージでのサポートにより、遺言者の方は安心して遺言書作成に臨むことができます。
公証役場ごとの違いへの対応
公証役場によって、細かな手続きや作法が異なる場合があります。専門家は各公証役場の特徴を把握しており、事前に確認することで当日のスムーズな進行を確保できます。
作成当日の流れ
当事務所での事前準備(推奨)
当事務所では、公証役場にお伺いする前に、依頼人の方に当事務所にお集まりいただき、公証役場での作業の予習をする時間を設けることをお勧めしております。
事前準備の内容:
遺言書の最終内容確認
公証役場での流れの説明
想定される質問への回答練習
必要書類の最終チェック
印鑑の印影確認
当日の注意事項の再確認
この時間を設けることで、依頼人の方の不安を軽減し、公証役場でも落ち着いて手続きを進めることができます。初めて公証役場を訪れる方にとって、事前の「予習」は心理的な支えとなります。
依頼人への寄り添いとして: 同世代として、専門家として、皆様が安心して重要な手続きに臨めるよう、このような事前準備の時間も大切にしております。
公証役場への訪問
当日の持参物:
印鑑(実印)
印鑑登録証明書(原本)
身分証明書(運転免許証、パスポート等)
証人2名(または公証役場で手配)
証人について: 証人は以下の条件を満たす必要があります:
成年者(18歳以上)
相続人、受遺者、その配偶者及び直系血族でないこと
公証人の配偶者、四親等以内の親族、書記及び使用人でないこと
証人の手配方法:
知人や友人に依頼する
公証役場で紹介してもらう(有料:通常1人当たり1万円程度)
行政書士を通じて依頼する(専門家のネットワークを活用)
証人の手配が困難な場合は、行政書士に相談すれば適切な証人を紹介してもらえます。
本人確認
公証役場に到着すると、まず厳格な本人確認が行われます:
身分証明書による確認
印鑑照合(印鑑登録証明書との照合)
本人の意思確認(遺言能力があることの確認)
高齢者の場合、認知症等により遺言能力に疑問がある場合は、医師の診断書の提出を求められることもあります。
遺言書の読み聞かせ
公証人が作成した遺言書の内容を、遺言者と証人の前で読み上げます。この際:
内容の確認:
財産の記載に間違いがないか
相続人の氏名・続柄に誤りがないか
遺言者の意図が正確に反映されているか
修正がある場合: その場で修正可能な軽微な内容であれば修正しますが、大幅な変更が必要な場合は後日再度作成することになります。
署名・押印
内容に問題がなければ、以下の順序で署名・押印を行います:
遺言者の署名・押印(実印)
証人2名の署名・押印
公証人の署名・押印
この時点で公正証書遺言が正式に成立します。
当日の注意点・トラブル回避
印鑑に関する重要な注意事項
印影の一致確認が最重要
当日持参する印鑑の印影が、提出した印鑑登録証明書の印影と異なると、作成が中止になってしまいます。
事前確認のポイント:
前日までに必ず印影確認を行う
印鑑登録証明書と実際の印鑑を照合
印鑑の汚れや欠けがないかチェック
疑問がある場合は市区町村役場で再確認
実印は長年使用していると微細な変化が生じることがあります。「普段使っているから大丈夫」と思わず、必ず事前確認を行ってください。
当日の発言・態度に関する注意
事前打ち合わせ内容の厳守
公証人との事前打ち合わせで決めた内容と、当日の発言や態度が食い違うと、作成が中止になる場合があります。
注意すべき点:
事前に決めた遺言内容を変更しない
相続人への感情的な発言を避ける
判断能力に疑問を持たれるような言動を慎む
体調不良の場合は日程変更を検討
対策:
事前打ち合わせの記録を確認
専門家同行の場合は、発言内容を事前相談
当日は冷静かつ明確な意思表示を心がける
当日の体調管理
遺言能力の確認
公証人は遺言者に十分な判断能力(遺言能力)があることを確認する義務があります。
体調管理のポイント:
十分な睡眠と休息
服薬している場合は医師に相談
体調不良時は無理をしない
必要に応じて医師の診断書を準備
正本・謄本の交付と保管
作成される書類
公正証書遺言が完成すると、以下の書類が作成されます:
原本:
公証役場で永久保管
遺言者でも閲覧のみで持ち出し不可
正本:
遺言者に交付
原本と同じ法的効力を持つ
相続手続きで実際に使用する書類
謄本:
遺言者に交付(希望により複数通作成可能)
正本の写し
参考資料として家族に渡すことが多い
保管方法の重要性
正本の保管:
貸金庫での保管が最も安全
自宅保管の場合は耐火金庫等を使用
信頼できる家族に保管場所を伝えておく
謄本の活用:
家族に内容を伝える際に使用
正本紛失時のバックアップ
相続税の試算等に使用
費用について
公正証書遺言の作成費用は、財産額により決まります:
公証人手数料(目的財産額別)
100万円以下:5,000円
200万円以下:7,000円
500万円以下:11,000円
1,000万円以下:17,000円
3,000万円以下:23,000円
5,000万円以下:29,000円
1億円以下:43,000円
計算方法: 財産を相続人別に分けて、それぞれの金額で手数料を計算し、合計します。
計算例: 総財産4,000万円、配偶者に2,400万円、長男に800万円、長女に800万円を相続させる場合
配偶者分(2,400万円):23,000円
長男分(800万円):17,000円
長女分(800万円):17,000円
小計:57,000円
遺言加算:11,000円(財産総額1億円以下のため)
手数料合計:68,000円
消費税(10%):6,800円
総支払額:74,800円
このように、相続人ごとの相続額に応じて個別に計算し、それらを合算した後、消費税を加算します。
その他の費用:
遺言加算:11,000円(財産総額が1億円以下の場合)
証人手数料:1人当たり10,000円程度(公証役場で手配の場合)
正本・謄本の交付手数料:1枚につき250円
上記全てに消費税10%が加算されます
重要な注意事項:
公証人手数料は行政書士等の専門家報酬とは別の費用です
当日、公証役場で直接精算する必要があります
支払いは現金のみで、クレジットカードは使用できません
消費税込みの金額を当日持参してください
事前振込等は受け付けていないため、必要な現金を当日持参してください
正確な金額は事前に公証役場で確認し、お釣りのないよう準備することをお勧めします
出張費用: 遺言者が病気等で公証役場に行けない場合、公証人に出張してもらうことも可能です(手数料の1.5倍+交通費)。
作成にかかる時間
全体のスケジュール
事前準備期間:2〜4週間
必要書類の収集:1〜2週間
公証人との事前相談:1〜2回(各1時間程度)
遺言書案の作成・検討:1週間程度
作成当日:1〜2時間
本人確認:15分程度
内容確認・読み聞かせ:30分程度
署名・押印:15分程度
正本・謄本の交付:15分程度
急ぐ場合は1週間程度での作成も可能ですが、十分な検討期間を設けることをおすすめします。
作成後の注意点
内容変更の必要が生じた場合
公正証書遺言は一度作成した後も、以下の場合に変更が必要になることがあります:
財産状況の大幅な変化
相続人の増減(出生、死亡、結婚、離婚等)
遺言者の意思の変更
変更の際は、全部を新しく作り直す必要があります。一部修正はできません。
定期的な見直し
以下のタイミングでの見直しをおすすめします:
大きなライフイベント発生時
財産状況の大幅な変化時
3〜5年に1回程度の定期見直し
まとめ:公正証書遺言作成のポイント
公正証書遺言の作成は確かに手続きが複雑で、当日の注意点も多くありますが、確実性と安全性を考えると、60代の私たちにとって最適な選択肢の一つです。
遺言書作成の真の目的
しかし、何より重要なことは、遺言書を作成すること自体が目的ではないということです。
真の目的は、遺言作成者の意思が何の抑制も受けずに、きちんと遺言書に反映されることです。手続きの完了や書類の作成は、あくまでもその手段に過ぎません。
遺言者の自由意思を尊重し、それを確実に形にすること。これこそが遺言書作成における最も大切な価値です。
専門家との事前コミュニケーションの本質
だからこそ、専門家との事前のコミュニケーションが極めて重要になります。それは単なる「手続きの準備」ではありません。
事前コミュニケーションの真の意味:
遺言者の本当の想いを丁寧に聞き取る
家族への愛情や感謝の気持ちを理解する
財産分割の背景にある考えを把握する
将来への不安や希望を共有する
法律的な制約の中で、最大限意思を反映する方法を一緒に考える
私たちの使命とサポートの姿勢
私たち行政書士は、遺言者の自由意思に寄り添い、それを支えることを使命としています。
私たちが大切にしていること:
遺言者のお気持ちを最優先に考える
どんな小さな想いも見逃さない
法律の専門知識で不安を解消する
家族の幸せを願う気持ちを形にする
人生の集大成としての遺言書作りをサポートする
同世代として、そして専門家として、皆様の「大切な人への想い」を確実に残すお手伝いをさせていただきたいと思っています。
手続きの複雑さや注意点の多さに不安を感じられるかもしれませんが、私たちがしっかりとサポートいたします。安心してご相談ください。
成功のためのポイント:
専門家との信頼関係構築:想いを共有できる専門家選び
十分な事前対話:時間をかけた丁寧なコミュニケーション
事前準備の徹底:必要書類の収集と内容の十分な検討
印鑑の事前確認:前日までに印影の完全一致を確認
当日の注意事項の遵守:事前打ち合わせ内容の厳守と体調管理
公証役場ごとの作法確認:専門家を通じた事前情報収集
定期的な見直し:状況変化に応じた適切な更新
特に、公正証書遺言は複雑な手続きと多くの注意点があるため、専門家のサポートを受けることで、より安心で確実な遺言書作成が可能になります。もちろん費用はかかりますが、あなたの大切な想いを確実に残すための必要な投資と考えることが重要です。
次回は、これまでお話しした財産目録の作成から遺言書作成まで、実践的な手順を最終的にまとめてお話しする予定です。
今回ご説明した公正証書遺言について、より詳しくお知りになりたい方やご質問がある方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
自筆証書遺言と公正証書遺言の詳細比較
どちらを選ぶべきかの判断基準
費用対効果の考え方
専門家との連携方法
このような内容について、同世代として、専門家として、皆様の疑問にお答えいたします。
無断転載・配布を禁じます。
お知らせ&コラム一覧にもどる
Contact
お問い合わせ
どうぞお気軽にご連絡ください。
メールでのお問い合わせが確実です。
090-1906-7399
受付時間
平日 9:00~20:00
メールでお問い合わせ
メールでのお問い合わせは
24時間受け付けております。
ご相談は平日夜・休日対応可能です!
