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相続開始後の初動対応~遺言書発見から7日間でやるべきこと

相続開始後の初動対応~遺言書発見から7日間でやるべきこと

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

 大切な方が亡くなられた直後は、深い悲しみの中で葬儀の手配や関係者への連絡など、やるべきことが山積みになります。そんな中で遺言書が見つかったとき、「これをどうすればいいのか」「すぐに開けていいのか」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。

 相続手続きには法律で定められた期限があり、特に相続開始直後の初動対応は非常に重要です。誤った対応をしてしまうと、後々大きなトラブルに発展したり、法的なペナルティを受けたりする可能性もあります。

 今回は、遺言書が見つかってから最初の7日間に焦点を当て、相続人が取るべき具体的な行動を時系列で解説します。落ち着いて一つずつ対応していけば大丈夫ですので、ぜひ参考にしてください。

遺言書発見直後:まず確認すべきこと

遺言書の種類を確認する

 遺言書が見つかったら、まず何よりも「どの種類の遺言書か」を確認することが重要です。遺言書には主に以下の種類があり、それぞれ取り扱いが異なります。

自筆証書遺言(自宅等で保管)は、被相続人が自分で全文を手書きで作成し、自宅や貸金庫などで保管していた遺言書です。封がされている場合と、されていない場合があります。この遺言書は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

自筆証書遺言(法務局保管制度利用)は、被相続人が自分で作成し、法務局(遺言書保管所)に預けていた遺言書です。この場合は、家庭裁判所での検認手続きが不要です。

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成した遺言書です。通常、表紙に「公正証書遺言」と記載されており、公証人の印章が押されています。この遺言書は、検認手続きが不要で、すぐに内容を確認できます。

秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま、遺言書の存在だけを公証人に証明してもらった遺言書です。実務上はあまり使われていませんが、この遺言書も家庭裁判所での検認が必要です。

絶対にしてはいけないこと

遺言書を発見したときに、絶対にしてはいけないことがあります。

 まず、封印されている遺言書を勝手に開封してはいけません。民法では、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとで開封しなければならないと定められています。これに違反して勝手に開封すると、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。

 また、遺言書の内容を改ざん・隠匿・破棄することも厳禁です。これらの行為は相続欠格事由に該当し、相続権を失うだけでなく、刑事責任を問われる可能性もあります。

 遺言書を見つけた時点での状態を写真に撮っておくことをお勧めします。後々のトラブル防止に役立ちます。

1日目〜3日目:緊急対応と情報収集

相続人全員への連絡

 遺言書が見つかったことを、できるだけ早く相続人全員に知らせましょう。連絡が遅れると、「遺言書を隠しているのではないか」という疑念を持たれる原因になります。

 この段階では、遺言書の詳細な内容を伝える必要はありません。「遺言書が見つかりました。種類は〇〇遺言で、今後の手続きについて追ってご連絡します」という程度で十分です。

 連絡する相続人の範囲ですが、法定相続人全員に連絡することが原則です。配偶者、子ども、直系尊属(両親・祖父母)、兄弟姉妹など、被相続人との関係によって相続人は変わります。疎遠になっている親族がいる場合でも、法定相続人であれば必ず連絡が必要です。

死亡届の提出(7日以内)

 相続手続きとは別に、亡くなられてから7日以内に市区町村役場へ死亡届を提出する必要があります。通常は葬儀社が代行してくれることが多いですが、確実に提出されたか確認しておきましょう。

 死亡届が受理されると、火葬許可証が発行されます。また、死亡の事実が戸籍に記載されるため、その後の相続手続きに必要な戸籍謄本の取得が可能になります。

遺言執行者の確認

 遺言書に遺言執行者が指定されているかを確認します。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。

 遺言執行者が指定されている場合、その方に連絡を取り、就任を承諾してもらう必要があります。遺言執行者は就任を辞退することもできますので、早めに意思確認をしましょう。

 遺言執行者が指定されていない場合は、相続人全員で協力して手続きを進めるか、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることになります。この点については別のコラムで詳しく解説します。

財産の概要把握

 相続財産の全体像を把握するための情報収集を始めます。この段階では詳細な調査は不要ですが、おおよその財産内容を把握しておくことが重要です。

 不動産については、固定資産税の納税通知書や権利証(登記識別情報)を探します。預貯金は、通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵便物を確認します。有価証券は、証券会社からの取引報告書や残高証明書を探します。

 また、借入金やローンなどのマイナスの財産も確認が必要です。クレジットカードの明細書や金融機関からの借入明細書などをチェックしましょう。

 最近では、ネット銀行やネット証券、仮想通貨など、書類が残らないデジタル資産も増えています。パソコンやスマートフォンのメールやブックマークから手がかりを探すことも大切です。

4日目〜7日目:遺言書の種類別手続き

【ケース1】自筆証書遺言(自宅等保管)の場合:検認手続き

 自宅や貸金庫などで保管されていた自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

 検認とは、遺言書の形式や状態を確認し、偽造や変造を防止するための手続きです。検認を受けないと、遺言書を使って不動産の名義変更や銀行口座の解約などができません。

検認申立ての流れ

 検認の申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。申立てに必要な書類は以下の通りです。

 家庭裁判所の申立書(裁判所のウェブサイトからダウンロード可能)、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺言書のコピー(封印されていない場合)、収入印紙800円分、郵便切手(裁判所により異なる)などが必要です。

 申立てから検認期日までは通常1〜2ヶ月かかります。検認期日には、申立人と可能な限り多くの相続人が立ち会います。ただし、他の相続人が欠席しても検認手続きは実施されます。

 検認期日当日は、家庭裁判所で遺言書を開封し、裁判官が遺言書の状態(用紙、筆記具、日付、署名、押印など)を確認します。検認が終わると「検認済証明書」が発行され、これを遺言書に添付することで各種相続手続きが可能になります。

検認における注意点

 検認は遺言書の「存在と状態」を確認する手続きであり、遺言書の内容が法的に有効かどうかを判断するものではありません。検認を受けた遺言書でも、後に無効と判断される可能性はあります。

 また、検認を受けずに遺言を執行したり、検認を受ける前に家庭裁判所以外で開封したりすると、5万円以下の過料に処せられる可能性がありますので注意が必要です。

【ケース2】自筆証書遺言(法務局保管制度利用)の場合

 被相続人が法務局の自筆証書遺言保管制度を利用していた場合、手続きの流れが大きく異なります。

法務局の自筆証書遺言保管制度とは

 自筆証書遺言保管制度は、2020年7月から始まった制度で、法務局(遺言書保管所)が遺言書を預かり、適切に保管してくれるものです。この制度を利用すると、遺言書の紛失や改ざんのリスクがなくなり、さらに家庭裁判所での検認手続きも不要になるという大きなメリットがあります。

遺言書の存在を確認する方法

被相続人がこの制度を利用していたかどうかは、以下の方法で確認できます。

 まず、遺言書保管事実証明書の請求があります。相続人等が全国の遺言書保管所に対して、特定の被相続人の遺言書が保管されているかどうかを確認できます。被相続人の死亡後であれば、この証明書を請求することで遺言書の有無が分かります。

 次に、遺言書保管通知です。遺言者が遺言書保管時に「死亡時通知」を希望していた場合、法務局が遺言者の死亡を確認すると、あらかじめ指定された相続人等に対して遺言書が保管されていることを通知してくれます。

 さらに、関係遺言書保管通知として、相続人の一人が遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けた場合、法務局は他の相続人全員に対して遺言書が保管されていることを通知します。これにより、一部の相続人だけが遺言内容を知っているという不公平な状況を防ぐことができます。

遺言書の内容を確認する手続き

法務局に保管されている遺言書の内容を確認するには、以下の2つの方法があります。

 遺言書情報証明書の交付請求では、相続人等が遺言書保管所に対して、遺言書の内容が記載された証明書の交付を請求できます。この証明書があれば、不動産の相続登記や銀行口座の解約などの相続手続きを進めることができます。全国どこの遺言書保管所でも請求可能で、郵送での請求もできます。

 遺言書の閲覧請求では、遺言書保管所でモニター画面による閲覧、または遺言書原本の閲覧ができます。原本の閲覧は、遺言書を保管している遺言書保管所でのみ可能です。

 いずれの手続きも、請求者が相続人であることを証明するために、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本や請求者自身の戸籍謄本などが必要になります。手数料は、遺言書情報証明書の交付が1通1,400円、モニター閲覧が1回1,400円、原本閲覧が1回1,700円です(2024年時点)。

 法務局保管制度を利用していた場合の最大の利点は、検認手続きが不要であることです。通常の自筆証書遺言では検認に1〜2ヶ月かかりますが、この制度を利用していれば、遺言書情報証明書を取得後すぐに相続手続きを開始できます。

【ケース3】公正証書遺言の場合

 公正証書遺言が見つかった場合は、検認手続きは不要です。すぐに遺言内容を確認し、次のステップに進むことができます。

 ただし、公正証書遺言であっても、相続人全員に遺言の内容を通知することが望ましいです。後々のトラブルを避けるため、透明性を保つことが重要です。

 公正証書遺言の正本または謄本が手元にない場合は、作成した公証役場で再発行してもらうことができます。どこの公証役場で作成されたか分からない場合は、公証役場で遺言検索システムを利用して調べることも可能です。

金融機関への連絡のタイミング

 金融機関への連絡は慎重に行う必要があります。被相続人が亡くなったことを銀行に伝えると、口座が凍結され、引き出しや口座振替ができなくなります。

 葬儀費用の支払いや公共料金の引き落としなど、当面必要な資金を確保してから連絡するのが一般的です。ただし、相続人間でトラブルが予想される場合は、早めに口座凍結を依頼して、勝手な引き出しを防ぐことも検討すべきです。

 なお、2019年7月の民法改正により、遺産分割前でも預貯金の一部を引き出せる制度(遺産分割前の預貯金の払戻し制度)が創設されています。葬儀費用など緊急の資金需要がある場合は、この制度を利用することができます。

専門家への相談

 相続手続きは複雑で、法的な知識も必要になります。最初の7日間のうちに、専門家への相談を検討することをお勧めします。

 行政書士は、遺言書の検認申立て書類の作成、相続人の調査、財産目録の作成などをサポートします。遺言執行者に就任して、遺言内容の実現を全面的にお手伝いすることも可能です。

 相続財産に不動産が含まれる場合は、司法書士による登記手続きのサポートも必要になります。また、相続税の申告が必要な場合は税理士、相続人間でトラブルが予想される場合は弁護士への相談も視野に入れましょう。

 初回相談は無料で行っている専門家も多いので、まずは気軽に相談してみることが大切です。早い段階で専門家のアドバイスを受けることで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

7日間で整えておくべき情報リスト

最初の7日間で、以下の情報をできるだけ整理しておきましょう。

遺言書関連として、遺言書の種類(自筆証書・公正証書・秘密証書)、自筆証書遺言の場合は保管方法(自宅保管または法務局保管)、遺言執行者の有無と連絡先、検認の要否を確認します。

相続人関連では、法定相続人の人数と続柄、各相続人の連絡先、相続人の中に未成年者や認知症の方がいないかを把握します。

財産関連については、不動産の所在地と概算評価額、預貯金の金融機関と支店名、有価証券の保有状況、生命保険の加入状況、借入金やローンの有無と残高を確認します。

その他として、葬儀費用の支払い状況、公共料金等の自動引き落とし状況、被相続人が事業を営んでいた場合はその承継方法を検討します。

この後の主な手続きと期限

 相続手続きには様々な期限がありますので、7日間の初動対応の後も計画的に進める必要があります。

3ヶ月以内には、相続放棄または限定承認の申述(家庭裁判所)を行う必要があります。

4ヶ月以内には、被相続人の準確定申告(税務署)が必要です。

10ヶ月以内には、相続税の申告と納税(税務署)を行わなければなりません。

1年以内には、遺留分侵害額請求権の行使期限があります。

3年以内には、相続登記(不動産の名義変更)を完了させる必要があります。2024年4月から相続登記が義務化されており、正当な理由なく期限内に登記しないと過料の対象となります。

これらの期限を守るためにも、最初の7日間での適切な初動対応が非常に重要なのです。

まとめ

 相続開始直後の7日間は、悲しみの中でも冷静に対応しなければならない重要な期間です。遺言書が見つかったときは、まずその種類を確認し、絶対に勝手に開封しないこと。相続人全員に連絡し、透明性を保ちながら手続きを進めることが大切です。

 自宅等で保管されていた自筆証書遺言の場合は検認手続きが必要になるため、早めに家庭裁判所への申立て準備を始めましょう。一方、法務局の保管制度を利用していた自筆証書遺言や公正証書遺言の場合は検認不要ですが、やはり相続人への通知と情報共有は欠かせません。

 財産の概要把握、遺言執行者の確認、金融機関への対応など、やるべきことは多岐にわたります。一人で抱え込まず、早い段階で専門家に相談することで、スムーズに手続きを進めることができます。


 今回のコラムが、突然の相続に直面された皆さんの初動対応の指針となれば幸いです。相続手続きに関するご質問や不安な点がございましたら、お気軽に当事務所のお問合せフォームからご相談ください。皆さんからのご感想やご意見もお待ちしております。

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