BLOG
お役立ちBLOG
身分系ビザ
永住許可の今とこれから~ 審査厳格化と取消制度が変える「永住者」の意味 ~
2026年10月2日更新
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
「永住許可」は、日本に在留する外国人にとって最も安定した法的地位を与える在留資格です。就労制限がなく、在留期間の更新も不要という大きなメリットから、多くの外国人が長期的な目標として永住許可の取得を目指しています。しかし、令和7年に閣議決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対策」では、永住者の在留資格をめぐって審査の厳格化、許可基準の見直し、そして取消制度の本格運用という三方向からの制度改革が明示されました。すでに永住許可を持っている方にも、これから申請を目指す方にも直接影響する内容です。本稿では、永住許可の基本的な仕組みを整理した上で、今後の変化の方向性を詳しく解説します。

在留資格「永住者」の基本的な仕組み
永住者の地位とメリット
「永住者」の在留資格を取得すると、以下のような安定した地位が得られます。就労活動に制限がなく、どのような仕事でも従事できます。在留期間は「無期限」であるため、毎回の更新申請が不要です。ただし在留カード自体の有効期間(16歳以上は7年)の更新手続きは引き続き必要です。家族を日本に呼び寄せる際の「家族滞在」への移行も、安定した在留実績として評価されます。これらの点から、永住許可は「日本に永く住むための最も強固な在留資格」として位置づけられています。
現行の許可要件
永住許可申請には、以下の要件を満たす必要があります。
居住要件:引き続き10年以上日本に在留していること(うち5年以上就労または居住の在留資格であること)
素行要件:素行が善良であること(交通違反の累積、税金・年金の滞納なども審査対象)
独立生計要件:独立した生計を営めること(一定の収入・資産)
国益要件:永住を認めることが日本の利益に合すること
公的義務の履行:税金・社会保険料の納付が適正に行われていること
一方、日本人・永住者・特別永住者の配偶者は居住要件が「実態ある婚姻から3年以上かつ日本に1年以上在留」に短縮されます。また、高度専門職ポイント制度では70点以上で3年、80点以上で1年の居住で申請可能という大幅な短縮特例があります。
総合対策が示す「永住者」制度の三つの変化
①審査の厳格な運用(現在進行中)
総合対策では、永住者について「審査の厳格な運用を行う」と明記されています。特に大きな変化をもたらすのが、マイナンバーを活用した情報連携の本格稼働(令和9年3月以降)です。入管庁が国民健康保険料・国民年金保険料の納付情報、地方税の課税情報、医療保険の被保険者情報等を関係機関から直接取得できるようになります。これにより、税金や社会保険料の滞納が申請時点だけでなく、在留中の実態ベースで把握されるようになります。永住申請の直前だけ納付を整えるといった対応では通らなくなる可能性が高まります。また、素行要件の審査においても、交通違反の記録、刑事処分歴、住所変更の未届等が従来以上に厳密に確認される方向です。
②許可基準の見直し(検討中・令和9年以降)
総合対策には「永住許可基準について、永住許可を行う趣旨を踏まえた独立生計要件や国益要件に関する見直し」が盛り込まれています。独立生計要件については、収入の安定性・継続性の評価方法が変わる可能性があります。国益要件については、「日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの受講を条件とすること等の検討」が明記されており、日本語能力や社会制度の理解度が新たな審査要素として加わる可能性があります。具体的な改正内容はまだ確定していませんが、令和9年(2027年)の施行を見据えた準備が進む方針です。
③永住許可の取消制度の本格運用(令和9年目途)
今回の総合対策で最も大きな変化の一つが、永住者の在留資格取消制度の本格運用です。「永住者の在留資格の取消しについて、ガイドラインの策定を含め、運用開始に向けて必要な準備の推進(令和9年)」と明記されています。令和6年(2024年)の改正出入国管理及び難民認定法により、永住者が税金・社会保険料を正当な理由なく滞納した場合、在留資格の取消対象となる規定がすでに成立しています。令和9年を目途にそのガイドラインを策定し、実際の取消運用を開始する準備が進んでいます。「一度取得したら安泰」だった永住許可が、今後は「公的義務を履行し続けることが維持条件」となるという根本的な変化です。さらに取消事由の拡大についても「さらなる検討を推進」とされており、将来的には対象が広がる可能性もあります。
永住者向けの日本語学習支援
許可基準の見直しと並行して、政府は在日外国人(帯同家族を含む)が日本語や日本の制度・ルールを学習するための環境整備も進めています。総合対策では、生活者として日本に暮らす外国人向けの支援として、オンライン日本語学習教材の充実と、地方公共団体による地域日本語教育の総合的な体制づくりへの財政支援の拡充が明記されています。また、地域の実情に応じた日本語教育の質を高めるためのガイドライン作成も検討されています。
これに加えて、「日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラム」を省庁横断的に創設し、来日前・来日後初期・中期・長期という各段階やライフステージに応じた内容を整備する方向が示されています。こうした学習支援は、今後の在留審査における考慮要素として位置づけられることも検討されており、単なる任意の取り組みにとどまらず、在留資格の審査と連動する仕組みへと発展する可能性があります。
永住許可の取得や維持を目指す方にとっては、こうした公的支援を積極的に活用しながら日本語学習・制度理解を深めておくことが、今後の審査対応という観点からも有益といえます。
今から準備すべきこと
税金・社会保険料の完全納付を最優先に
審査の厳格化と取消制度の本格運用を踏まえると、税金・社会保険料の完全な納付履行が永住許可の取得・維持の両面で最重要事項となります。住民税・所得税の滞納がないこと、国民年金または厚生年金保険料の納付が継続していること、国民健康保険料の滞納がないことが求められます。申請直前に慌てて納付するのではなく、日常的に完全履行する習慣が不可欠です。
届出義務の確実な履行
在留期間中の届出義務(住所変更・勤務先変更等)を確実に履行しておくことも重要です。転居の際の在留カード記載事項変更届、勤務先変更の届出、氏名変更の届出など、変更が生じた際は14日以内に市区町村窓口または入管庁に届け出ることが求められています。これらの未届履歴は素行要件の審査に影響する可能性があります。
素行要件の日常的な管理
交通違反の累積は素行要件の審査で問題視されることがあります。一度の重大な違反だけでなく、軽微な違反の累積も影響し得るため、日常的に法令を遵守する姿勢が求められます。
日本語学習の継続(将来対応)
日本語プログラムの受講が審査の考慮要素となる可能性が検討されていることを踏まえると、前述の地域日本語教育やオンライン教材など、政府・自治体が提供する学習支援を活用しながら日本語能力を高めておくことが、将来の申請を有利に進める備えとなります。
既に永住許可を持っている方へ
取消制度の本格運用(令和9年目途)を控え、すでに永住許可を取得している方にとっても、税金・社会保険料の滞納は今後在留資格取消の直接的なリスクとなります。「永住者だから更新がない=何もしなくてよい」という認識は改める必要があります。在留カード自体の有効期限の更新手続き(16歳以上は7年ごと)と合わせて、公的義務の履行状況を定期的に自己確認する習慣を持つことが大切です。
その他の当サイトのご参考記事
永住許可に関するそのほかの関連記事を以下の通りご案内いたしますので是非ご参考になさっていただければ幸いです。
永住許可申請の要件と準備戦略ー10年ルールと例外規定を徹底解説
帰化と永住、どちらを選ぶ?〜安易に決めてはいけない重要な選択
まとめ
永住者をめぐる制度変化の方向性は、「許可の取得をより厳しく、取得後の維持にも条件を課す」というものです。審査の厳格化はすでに進行中であり、許可基準の見直しと取消制度の本格運用は令和9年を目途に動き出します。一方で政府は、永住者を含む在日外国人が日本語や社会制度を学ぶための環境整備も並行して進めており、学ぶための支援と審査の厳格化が同時に進む形となっています。これから申請を目指す方は早めに要件を整備し、すでに永住許可をお持ちの方は公的義務の履行状況を今一度確認しておくことをお勧めします。
今回のコラムはいかがでしたか?「自分の状況で永住申請できるか確認したい」「既に永住者だが取消リスクが心配」など、ご疑問やご不安がございましたら、お問合せフォームからお気軽にお声がけください。
無断転載・配布を禁じます。
一覧に戻る →