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ベトナム人の帰化申請 ~急増する申請数と、国籍離脱の特殊なルールを理解する~ 

ベトナム人の帰化申請 ~急増する申請数と、国籍離脱の特殊なルールを理解する~ 

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

 在日ベトナム人の人口は令和6年末(2024年12月末)時点で63万4,361人と、中国に次ぐ第2位の規模に達しています(出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数について」より)。技能実習・特定技能・技術人文知識国際業務(技人国)など多様なルートで来日した方が長期定着を重ね、帰化申請を検討するケースが年々増えています。法務省民事局発表資料(2025年公表)によると、令和6年(2024年)の帰化許可者数における国籍別順位では、かつて上位の常連だったベトナムがネパールに追い抜かれる形となりましたが、毎年一定数の方が日本国籍を取得しており、今後も増加傾向が続くと見られています。

 ベトナム籍の方の帰化申請には、他の国籍と異なる重要な特徴があります。それは「国籍離脱のタイミング」が韓国や中国と逆になるという点です。今回はこの点を中心に、書類取得の注意事項・素行要件の確認ポイントなどを合わせて整理します。

2026年4月施行——審査運用の見直しで何が変わったか

 2026年3月27日、法務省は帰化申請の審査運用に関する重要な見直しを発表しました。4月1日以降の帰化審査から、次の2点が変更されています。

居住要件の運用見直し(実質10年以上に)

 国籍法上の居住要件は「引き続き5年以上日本に住所を有すること」のままですが、審査運用上は「原則10年以上」の居住実績が求められるようになりました。5年という数字はあくまで法律上の最低ラインであり、実際の審査では10年を目安とした運用がなされます。

 この背景には、永住許可とのバランスの問題がありました。永住許可はガイドライン上「原則10年以上」の居住を求めているのに対し、帰化の運用上の基準がそれより緩かったという指摘が長年あり、2025年11月に高市首相が法務大臣に見直しの検討を指示したことが今回の変更につながっています。技能実習・特定技能・技人国といった就労ルートで来日したベトナム籍の方の中には、5〜7年程度の在留でそろそろ帰化を考えているという方も少なくありません。そうした方にとっては、今回の運用変更が申請スケジュールに直接影響する可能性があるため、現在の居住年数を改めて確認しておくことが必要です。

納税・社会保険料の確認期間が大幅に拡大

 従来は「直近1年分」の確認が基本でしたが、4月1日以降は納税が「直近5年分」、社会保険料が「直近2年分」に確認範囲が拡大されました。「申請直前だけ納付を整えれば大丈夫」という考え方は通用しなくなっています。住民税・国民年金・国民健康保険(または社会保険)について、在留期間を通じた適切な納付管理が、帰化申請の成否を左右する重要な要素となりました。技能実習・特定技能歴がある方は、雇用形態の変化に伴って保険の種類が切り替わっている時期があることも多く、切り替え時の手続き漏れがないかを特に確認しておくことが重要です。

帰化申請の基本要件——居住要件と就労資格の関係

 通常の帰化申請では「引き続き5年以上日本に住所を有すること」が居住要件です。ベトナム籍の方の場合、この「引き続き」という点に注意が必要です。

 1回の渡航で連続して3か月以上日本を離れた場合、居住期間がリセットされてしまうとされています。また、1年間の累計で100日以上日本を離れた場合も「引き続き」の要件が満たされなくなる可能性があります。出張・出産・帰省などの理由であっても考慮されないケースがあるため、帰化申請を視野に入れている方は渡航記録の管理を意識しておくことが重要です。

 また、5年の在留期間のうち直近3年以上は就労系在留資格(技人国・特定技能等)で在留していることが実務上求められます。留学ビザで来日し、その後就労ビザに切り替えたというルートの方は、就労ビザ取得後の期間と留学期間の合算で計算することになりますが、留学中に資格外活動(アルバイト)のルール違反があった場合はその違反時点からの5年起算となるため、過去の在留状況の整理が欠かせません。

ベトナム籍特有の最大の注意点——国籍離脱のタイミングが逆になる

ベトナム籍の方の帰化申請で、他の国籍と最も異なる点が「国籍離脱の順序」です。

 韓国や中国の場合、まず日本への帰化が許可された後に元の国籍喪失手続きを行うという流れが一般的です。しかしベトナムの場合は、日本国籍取得の許可が下りる前の段階で、ベトナム国籍の離脱手続きを完了しておく必要があります。ベトナム国籍法も日本の国籍法と同様に二重国籍を認めていないため、日本国籍を取得する時点でベトナム国籍を離脱(実質的に無国籍となる)しなければならないという仕組みになっているんです。

 実務上の手順としては、帰化申請を法務局に受理された後、審査が進んで「許可の見込みがある」という段階に達すると、法務局から国籍離脱の指示が出ます。その指示を受けてから駐日ベトナム大使館で国籍離脱の手続きを行うという流れになります。法務局の指示を待たずに自己判断で先行して国籍離脱をしてしまうと、万が一帰化が不許可になった場合に無国籍となるリスクがあるため、必ず法務局の指示のもとで進めることが鉄則です。

 なお、ベトナム国籍離脱には一定の条件があり、次のいずれかに該当する場合は離脱が認められません。

  • ベトナムでの税金の滞納がある場合

  • 刑事上の責任が継続している場合

  • 現役の公務員・軍関係者である場合

 申請前に駐日ベトナム大使館に確認し、自身が離脱可能な状況にあるかを事前に把握しておくことが重要です。

必要となる本国書類——「登記事項摘録書」と各種証明書

 ベトナム籍の方が帰化申請で提出する本国書類は、ベトナムの行政機関で発行される「登記事項摘録書(事項摘録書)」を中心とした複数の証明書です。主なものは次のとおりです。

  • 出生摘録書(申請者本人の出生証明)

  • 結婚摘録書(婚姻している場合)

  • 離婚公証証明書(離婚歴がある場合)

  • 死亡登録摘録書(父母・子が死亡している場合)

  • 養子縁組証明書(該当する場合)

  • 戸籍簿(家族本):両親・兄弟姉妹全員の記載があるもの

  • 国籍証明書:駐日ベトナム大使館・総領事館で取得

 このうち国籍証明書は本人がベトナム大使館・総領事館に直接申請して取得する必要があります。国籍証明書には有効期限があるため、取得のタイミングを申請スケジュールに合わせて調整することが必要です。

 登記事項摘録書はベトナム国内の行政機関(戸籍登録を管轄する人民委員会等)で発行されます。ベトナム在住の親族に代理取得を依頼できるケースもありますが、地方部では行政機関の整備状況に差があり、書類の保管状況が良くないために取得に時間を要したり、一部の書類が存在しないというケースもあります。準備には数か月以上かかることを想定して、早めに動き出すことが現実的です。

 すべての本国書類はベトナム語で発行されるため、日本語翻訳文と翻訳者の氏名・住所・翻訳日の記載が必要です。翻訳の内容に誤りや不整合があると法務局での受理に影響することがあるため、正確な翻訳文の準備が求められます。

素行要件——技能実習・特定技能歴がある場合の確認事項

 帰化申請の審査において、ベトナム籍の方で技能実習・特定技能歴がある場合は、在留中の遵法状況が特に丁寧に確認されます。

 過去にオーバーステイ(在留期間超過)・不法就労・資格外活動違反(留学中のアルバイト時間超過等)があった場合は、帰化申請の審査で素行要件を満たさないと判断される可能性があります。こうした違反歴がある場合、その時点からの在留状況をあらためて整理し直すことが必要になるため、申請前に現在の在留状況が問題ないことを確認しておくことが重要です。

 技能実習期間中の転籍(制度上認められない転籍)・失踪経歴がある方については、審査が大幅に難しくなります。現在の在留状況が適法であることを前提としつつ、過去の経歴を正直に整理したうえで専門家に相談することをお勧めします。

 また2026年4月以降の審査運用の見直しにより、過去の税金・社会保険料の納付状況の確認期間が拡大されています。住民税・国民年金・健康保険(または社会保険)の支払い状況が広い範囲で確認されるため、現在および過去の納付漏れがないかを事前に確認しておくことが、審査通過の前提条件になります。

帰化後の名前について

 ベトナム語の名前はアルファベット表記が基本であるため、帰化後の日本の戸籍にどのように記載するかを事前に検討する必要があります。ベトナム語の発音に近い片仮名表記を戸籍名として設定する方法、漢字に近い音の日本語名を選ぶ方法などがあります。

 帰化申請書類には「帰化後の氏名」を記載する欄があり、この段階で確定させることになります。名前は生涯にわたる事項ですので、家族と十分に話し合ったうえで決定することをお勧めします。

専門家の支援を活用する——長丁場を乗り越えるために

 帰化申請は、申請書類の作成から提出・審査・許可まで、すべての主体はあくまでも申請者ご本人です。行政書士はその手続きを支援する立場であり、申請そのものを代行するものではありません。しかし、この支援という役割が、実際の手続きの中で非常に大きな意味を持つなんです。

 帰化申請は受理から許可まで1年以上を要することが珍しくなく、その間に審査の運用基準が変わることもあります。今回の4月1日施行の見直しが申請済みの方にも適用されるという異例の対応がまさにその例です。ベトナム籍の方は国籍離脱のタイミングという他国にない手続き上の特殊性もあり、審査の進捗に応じて適切なタイミングで動く必要があります。そうした局面ごとの判断を一緒に整理できる専門家の存在は、長い審査期間を通じて大きな安心につながります。

 また、2026年度中には帰化申請の手数料が大幅に値上げされる可能性も検討されていると伝えられています。現時点では確定情報ではありませんが、こうした制度・費用面の動向をタイムリーに把握し、申請のタイミングや準備の進め方に反映させるためにも、専門家との継続的な関わりが助けになります。国籍離脱・書類準備・審査対応と複数の山場があるベトナム籍の方の帰化申請だからこそ、早い段階から専門家に相談しながら進めることが確実な道につながるんです。

準備のポイント——早めのスタートが成功の鍵

 ベトナム籍の方の帰化申請は、国籍離脱のタイミングという他国にない手続き上の特殊性と、本国書類の取得に要する時間を合わせると、準備開始から申請受理・許可まで2年前後かかることも珍しくありません。

 特に、ベトナム国内の親族に書類取得を依頼する場合は、書類の発行・翻訳・日本への郵送に数か月を要することがあります。申請を考えている方は、「来年申請したい」という場合は今すぐ準備を始めることが現実的な目標達成への道です。


 今回の内容はいかがでしたでしょうか。「自分の在留状況で申請できるか確認したい」「書類の準備の進め方を相談したい」「4月以降の運用変更が自分にどう影響するか確認したい」など、ご感想やご質問がありましたら、お問い合わせフォームからお気軽にお聞かせください。

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