介護分野で特定技能外国人を採用するには ~4つのルートと「2号なし」という特殊構造を理解する~
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
日本の介護現場は、深刻かつ構造的な人材不足に直面しています。厚生労働省の推計では、2025年度に約32万人、2040年度には約69万人の介護人材が追加で必要になるとされており、国内人材だけでは到底まかないきれない水準です。こうした背景から、外国人介護人材の活用が介護施設・事業所にとって現実的な経営課題になっています。
介護分野で外国人を受け入れる在留資格は、「特定技能」「技能実習(育成就労)」「在留資格『介護』」「EPA」の4種類があります。このうち最も柔軟で即戦力を確保しやすい制度が「特定技能」です。2025年6月末時点で特定技能全体の在留者数が33万6,196人に達する中、分野別では飲食料品製造業に次いで介護が第2位となっており(出入国在留管理庁「令和7年6月末特定技能在留外国人数」より)、介護分野は特定技能制度の中で最も活用が進んでいる分野のひとつです。
今回は、介護事業者が特定技能外国人を採用するうえで知っておくべき制度の全体像を、他の在留資格との比較を交えながら整理します。

まず4つの在留資格を整理する——何が違うのか
介護分野で外国人を受け入れる4つの在留資格は、目的・要件・業務範囲がそれぞれ異なります。混同しやすい部分なので、整理しておきます。
在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格を取得した外国人に付与される在留資格で、在留期間の更新制限がなく、日本人と同様の幅広い業務に従事できます。家族帯同も可能で、最も安定した長期定着を実現できる在留資格ですが、介護福祉士資格の取得という高いハードルがあるため、採用の即効性という点では課題があります。
EPA(経済連携協定)は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国のみを対象とした特別な受け入れルートで、相手国政府機関と国際厚生事業団が一元的に管理します。候補者は来日後に就労・研修を通じて介護福祉士の取得を目指すという制度で、採用ルートや選考プロセスが特定技能と大きく異なります。
技能実習(育成就労)は、2027年からの育成就労制度への移行が予定されています。「技術移転」という制度目的上、即戦力採用とは異なる性格を持っています。
特定技能は、一定の技能・日本語能力を持つ即戦力外国人材を幅広い国籍から採用できる制度です。採用のルートが複数あり、既に日本に在留している方からの採用も可能なため、最も機動性が高い制度といえます。
特定技能「介護」の取得ルートは4つある
特定技能「介護」が他の分野の特定技能と異なる最大の特徴のひとつが、取得ルートの多様性です。次の4つのルートのいずれかから取得できます。
①介護技能評価試験+日本語試験の合格
介護技能評価試験(学科40問・実技5問)と、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)またはJLPT N4以上の日本語試験、さらに介護日本語評価試験に合格することが必要です。他の分野の特定技能は日本語試験が1種類ですが、介護分野はコミュニケーション能力が業務に直結するため、介護日本語評価試験が追加で課されています。これが他分野にはない介護固有の特徴です。試験は日本国内だけでなく、バングラデシュ・カンボジア・インドネシア・ミャンマー・ネパール・フィリピン・スリランカ・タイ・ベトナムなど14か国でも実施されています。
②技能実習2号の修了
介護分野の技能実習2号を良好に修了した方は、試験免除で特定技能1号に移行できます。現場経験があるため即戦力として機能しやすく、受け入れ側にとっても安心感があります。
③介護福祉士養成施設の卒業
日本国内の介護福祉士養成施設を卒業した留学生は、介護福祉士試験を受験することなく特定技能1号の要件を満たします。日本語能力・介護知識の両面で高い水準が期待できる人材です。
④EPA介護福祉士候補者としての4年間就労
EPA介護福祉士候補者として4年間、就労・研修に適切に従事した方は、特定技能の試験が免除されます。
最重要の注意点——介護は特定技能2号が存在しない
特定技能制度の全16分野の中で、介護分野だけが特定技能2号の対象外となっています。これは介護事業者にとって採用計画上の最重要事項です。
特定技能1号は最長5年間という在留上限があります。他の分野では特定技能2号への移行によって在留期間の上限がなくなりますが、介護分野にはその道がありません。特定技能1号として5年間就労した後のキャリアパスとして用意されているのは、介護福祉士国家試験への合格を経て在留資格「介護」に移行するルートです。
つまり、介護分野で特定技能を活用して長期的に外国人材を定着させるためには、在職中に介護福祉士の取得を目指してもらうことが実質的に必要になります。採用計画の段階から「5年後に介護福祉士を取得してもらい、在留資格『介護』に移行する」という長期ビジョンを描いたうえで、日本語能力向上支援・資格取得支援を受け入れ体制に組み込んでおくことが、人材定着の鍵になります。
2025年4月からの重要な制度変更——訪問介護が解禁
2025年4月より、特定技能外国人の訪問系サービスへの従事が解禁されました。これまで特定技能外国人は施設系サービスでの就労に限定されていましたが、訪問介護・訪問入浴介護・夜間対応型訪問介護・介護予防訪問入浴介護などへの従事が認められるようになっています。
在宅介護は施設介護と並ぶ深刻な人手不足分野であり、この解禁は訪問介護事業所にとって大きな意味を持ちます。ただし、訪問系サービスでの就労にあたっては、一定期間は他の日本人職員とチームでケアにあたるなど、ケアの安全性を確保するための体制を整えることが必要です。
受け入れ人数の上限——常勤職員数がカウントの基準
介護分野の特定技能には、事業所単位での受け入れ人数上限があります。特定技能外国人の受け入れ人数は、事業所の常勤職員数を超えることができません。
この常勤職員数のカウントにおいて注意が必要なのは、技能実習生・特定技能外国人・EPA介護福祉士候補者・学生アルバイトは常勤職員数に含まれないという点です。つまり、日本人等の常勤職員が少ない小規模事業所では受け入れられる特定技能外国人の人数も少なくなります。また、日本人職員が退職して常勤職員数が減少した場合は、受け入れ中の特定技能外国人の人数も見直しが必要となる可能性があります。採用計画の前に、自事業所の常勤職員数を正確に把握することが出発点です。
受け入れ事業所の要件——協議会への加入が必須
特定技能「介護」の受け入れを行う事業所は、厚生労働省が組織する「介護分野における特定技能協議会」への加入が義務付けられています。加入は初めて特定技能外国人を受け入れてから4か月以内に行えばよく、加入費用は無料です。協議会への加入を怠ると、以後の特定技能外国人の受け入れができなくなるため、受け入れ開始後に速やかに手続きを進める必要があります。
また、受け入れ事業所は介護保険法上の適切な事業所であることが前提となります。訪問介護・特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・グループホームなど、対象となる事業所の種別は広く設定されていますが、確認が必要です。
支援計画の作成と登録支援機関の活用
特定技能1号の外国人材を受け入れる事業所は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、計画に基づいた義務的支援を提供しなければなりません。義務的支援の内容には、事前オリエンテーション・住居確保支援・生活オリエンテーション・日本語学習機会の提供・相談・苦情への対応・日本人との交流促進・定期的な面談など10項目があります。
これらの支援を自社で対応しきれない場合は、登録支援機関に委託することができます。特に初めて特定技能外国人を受け入れる事業所は、登録支援機関を活用することで手続きや支援業務の負担を大幅に軽減できます。
国籍別の傾向——インドネシアの急増が顕著
特定技能「介護」分野の国籍別傾向として、ベトナムが最多であることは変わりませんが、インドネシアの急増が近年の特徴です。インドネシアでは技能実習制度の活用が盛んで、技能実習を修了した方の特定技能への移行が多いことに加え、現地での試験実施回数も多く、供給体制が整っています。インドネシア人材はイスラム圏という文化的背景から、ハラール食や礼拝時間への配慮が必要ですが、これらに対応する介護施設での定着率の高さも報告されています。
今回の内容はいかがでしたでしょうか。「特定技能で介護の外国人材を採用したい」「制度の詳細について確認したい」など、ご感想やご質問がありましたら、お問い合わせフォームからお気軽にお聞かせください。
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