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ネパール人の帰化申請 ~急増する申請数の背景と、書類準備・素行要件の注意点~

ネパール人の帰化申請 ~急増する申請数の背景と、書類準備・素行要件の注意点~

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

 ネパール人の帰化許可者数は、法務省民事局発表資料(2025年公表)によると令和6年(2024年)に585人となり、令和2年(2020年)の100人から4年間で約6倍弱に急増しました。国籍別の帰化許可者数ランキングでも、令和2年の8位から令和6年には3位へと一気に駆け上がり、これまで常連だったベトナム・ブラジル・フィリピンを追い抜いた形になっています。

 この急増の背景には、来日から10年前後を経たネパール人在留者が帰化の居住要件を満たす年齢帯に差しかかってきたこと、そして令和6年末(2024年12月末)時点で在留者数が23万3,043人(前年末比32.2%増)と在留外国人全体の中で5位に浮上するほど規模が拡大していることがあります(出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数」より)。

 今後もさらに申請件数が増えることが予想される中、ネパール籍の方の帰化申請に特有の書類・手続き・審査上の注意点を整理します。

2026年4月施行——審査運用の見直しで何が変わったか

 2026年3月27日、法務省は帰化申請の審査運用に関する重要な見直しを発表しました。4月1日以降の帰化審査から、次の2点が変更されています。

居住要件の運用見直し(実質10年以上に)

 国籍法上の居住要件は「引き続き5年以上日本に住所を有すること」のままですが、審査運用上は「原則10年以上」の居住実績が求められるようになりました。5年という数字はあくまで法律上の最低ラインであり、実際の審査では10年を目安とした運用がなされます。

 この背景には、永住許可とのバランスの問題がありました。永住許可はガイドライン上「原則10年以上」の居住を求めているのに対し、帰化の運用上の基準がそれより緩かったという指摘が長年あり、2025年11月に高市首相が法務大臣に見直しの検討を指示したことが今回の変更につながっています。冒頭でご紹介したとおり、ネパール籍の方は「来日から10年前後を経た方が帰化要件を満たす年齢帯に差しかかってきた」という背景が急増の要因のひとつです。この運用変更はそうした方々にとってタイムリーな情報であり、現在の居住年数が10年に達しているかどうかを改めて確認しておくことが出発点となります。

納税・社会保険料の確認期間が大幅に拡大

 従来は「直近1年分」の確認が基本でしたが、4月1日以降は納税が「直近5年分」、社会保険料が「直近2年分」に確認範囲が拡大されました。「申請直前だけ納付を整えれば大丈夫」という考え方は通用しなくなっています。住民税・国民年金・国民健康保険(または社会保険)について、在留期間を通じた適切な納付管理が、帰化申請の成否を左右する重要な要素となりました。ネパール籍の方に多い個人事業主・飲食店経営者の場合は、確定申告の状況とあわせて過去数年分の納付状況を一度整理しておくことをお勧めします。

重要:4月1日より前に申請済みの方にも適用される

 今回の運用変更で特に注意が必要なのは、この見直しが2026年4月1日以降に新たに申請する方だけでなく、すでに申請済みで審査中の方にも適用されるという点です。通常、法令や運用の変更は経過措置を設けて新規申請からの適用とするケースが多いのですが、今回はそうではありません。4月1日より前に申請を受理されていた方も、審査の継続中であれば新たな運用基準のもとで審査が進められます。すでに申請中の方は、過去の納付状況の再確認や、居住期間の実態が新基準に照らして問題がないかを改めて点検しておくことが求められます。

帰化申請の基本要件——居住・就労ビザの関係を確認する

 通常の帰化申請では「引き続き5年以上日本に住所を有すること」が居住要件です。ネパール籍の方で最も多いルートは「留学→就労」の経路ですが、この場合の居住要件には注意が必要です。

 5年間の在留のうち、直近3年以上は就労系在留資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能など)で在留していることが実務上求められます。たとえば2年間留学ビザで在留し、その後3年間就労ビザで在留した場合は要件を満たします。しかし、留学期間中に資格外活動(アルバイト)でのルール違反があった場合は、その違反時点から改めて5年を起算するという厳しい運用がなされることがあります。

 ネパール人の在留者は宿泊・飲食サービス業での就労が特に多く、留学中の日本語学校在籍時にアルバイトとして飲食店・コンビニ等に勤務していた方が多数います。この「留学中のアルバイト(資格外活動)」については、週28時間という時間制限が設けられており、これを超えて就労していた場合は資格外活動違反として在留歴に記録されます。帰化申請を視野に入れている方は、過去の在留状況を改めて振り返り、問題がないかを確認しておくことが出発点となります。

必要となる本国書類——種類と取得場所を整理する

 ネパール籍の方の帰化申請で提出が必要な本国書類は、大きく「国籍証明書」と「各種証明書」に分かれます。

 国籍証明書は駐日ネパール大使館で取得します。郵送での請求が可能なため、必ずしも大使館に直接出向く必要はありませんが、有効期限があることに注意が必要です。申請スケジュールと取得タイミングを合わせて計画することが重要です。

 各種証明書はネパール本国の行政機関(申請者の本国住所を管轄する行政区役所等)で取得します。主なものは次のとおりです。

  • 出生証明書(申請者本人・兄弟姉妹のもの)

  • 結婚証明書(申請者本人・両親のもの)

  • 離婚証明書(離婚歴がある場合)

  • 家族関係証明書(両親・兄弟姉妹全員の記載があるもの)

  • 死亡登録証明書(父母・子が死亡している場合)

  • 申述書(母または父が申請者・兄弟姉妹の出生について誓約する書面)

 ネパール本国の書類については、現地に住む親族による代理取得が可能なケースが多いです。ただし、地域によって書類の発行形式が一定でなく、結婚証明書や家族関係証明書には原本に写真が貼付されているものもあります。また写しを提出する場合は、本国で公証人の認証印を受ける必要があります。ネパールは国土の85%が山岳地帯であるという地理的特性から、特に地方部出身の方は書類の保管状況に個人差が大きく、書類が整っていないケースや取得に時間を要するケースがあります。余裕をもって準備を始めることが重要です。

書類の翻訳——英語での発行をお勧めする理由

 ネパールの書類は、ネパール語と英語のいずれかで発行を選択できます。帰化申請においては取得した書類すべてに日本語翻訳文の添付が必要ですが、実務的にはネパール語よりも英語で発行してもらい、英語から日本語に翻訳する方がスムーズで費用も抑えられるケースが多いとされています。

 翻訳においては、人名・地名の表記の一貫性が特に重要です。ネパール語・英語双方での表記揺れが生じやすく、書類間で同一人物の名前や地名の表記が異なると法務局の審査で疑義が生じることがあります。複数の書類を取得する際には、名前・生年月日・出身地などの基本情報が統一されているかを必ず確認することが求められます。また翻訳文は部分翻訳ではなく全文翻訳が必要で、翻訳者の氏名・住所・翻訳日の記載が求められます。

素行要件——ネパール籍の方に特に関係する確認ポイント

 帰化申請の審査において素行要件は全国籍に共通して確認されますが、ネパール籍の方の在留パターンを踏まえると、次の3点が特に重要な確認ポイントとなります。

①留学中の資格外活動(アルバイト)の状況

 留学ビザでのアルバイトには週28時間という上限があります。この時間制限を超えて就労していた場合は資格外活動違反となり、帰化申請の素行要件に影響する可能性があります。違反歴がある場合は、その時点から適法に在留した期間を改めて積み重ねることが必要になるため、過去の就労実態を正直に整理したうえで専門家に相談することをお勧めします。

②個人事業主・フリーランスとして働いている場合の確定申告

 ネパール人在留者の中には、飲食店の経営や個人事業として就労しているケースがあります。この場合、毎年の確定申告の状況が帰化審査で重点的に確認されます。確定申告を適切に行っていない場合や、売上と申告内容に大きな乖離がある場合は審査に影響します。フリーランス・個人事業主として働いている方は、過去数年分の申告状況を確認しておくことが重要です。

③社会保険・年金の納付状況

 2026年4月以降の審査運用の見直しにより、納税が直近5年分・社会保険料が直近2年分へと確認期間が拡大されています。住民税・国民年金・国民健康保険(または社会保険)の納付状況が広い範囲で確認されるため、在留期間を通じた納付漏れがないかを事前に確認しておくことが審査通過の前提条件となります。個人事業主の方は特に国民年金・国民健康保険の未納がないかを重点的に確認することをお勧めします。

ネパールは二重国籍を認めないため、帰化後の国籍喪失手続きが必要

 ネパール国籍法も二重国籍を認めていません。日本への帰化が官報告示されて日本国籍を取得した後は、ネパール大使館・総領事館で国籍喪失の手続きを行うことになります。帰化申請における重国籍防止要件については、ネパールも他の国籍と同様に「帰化によってネパール国籍を喪失できること」を確認するものです。

 国籍喪失手続きの際に必要となる主な書類として、ネパール国籍離脱申請書・履歴書・帰化手続きを行っている証拠書類などがあります。手続きの詳細は時期によって変更されることがあるため、最新情報を駐日ネパール大使館で事前に確認することをお勧めします。

帰化後の名前について

 ネパール語の名前はアルファベット(英語)表記が一般的なため、帰化後の日本の戸籍に記載する名前については事前に検討が必要です。ネパール語の発音に近い片仮名表記を設定する方法、または日本名を新たに選ぶ方法などがあります。帰化申請書類の「帰化後の氏名」欄で確定させることになるため、家族と十分に話し合ったうえで決定することをお勧めします。

日本語能力の確認——法務局での面談に備える

 帰化申請の審査過程では、法務局の担当官による面談があります。この面談では日本語でのコミュニケーション能力が確認されます。法律上の明確な基準はありませんが、実務上は日常会話レベルの日本語能力が求められます。法務局によっては小学校2年生程度の漢字の読み書きテストが実施されることもあります。

 ネパール人の方の多くは日本語学校での学習経験があり、長期在住の方は日常会話に支障がないケースがほとんどです。ただし、法務局での面談に向けて事前に確認しておくことで、よりスムーズに対応することができます。

専門家の支援を活用する——長丁場を乗り越えるために

 帰化申請は、申請書類の作成から提出・審査・許可まで、すべての主体はあくまでも申請者ご本人です。行政書士はその手続きを支援する立場であり、申請そのものを代行するものではありません。しかし、この支援という役割が、実際の手続きの中で非常に大きな意味を持つなんです。

 帰化申請は受理から許可まで1年以上を要することが珍しくなく、その間に審査の運用基準が変わることもあります。今回の4月1日施行の見直しが申請済みの方にも適用されるという異例の対応がまさにその例です。ネパール籍の方は本国書類の取得に時間を要するうえ、個人事業主・資格外活動違反歴・確定申告状況など確認すべき事項が多岐にわたります。そうした複数の論点を整理しながら審査期間を乗り越えるためにも、専門家との継続的な関わりが大きな助けになります。

 また、2026年度中には帰化申請の手数料が大幅に値上げされる可能性も検討されていると伝えられています。現時点では確定情報ではありませんが、こうした制度・費用面の動向をタイムリーに把握し、申請のタイミングや準備の進め方に反映させるためにも、早い段階から専門家に相談しながら進めることが確実で効率的な道につながるんです。

準備開始から許可まで——全体のスケジュール感を把握する

 ネパール籍の方の帰化申請は、本国書類の取得・翻訳・整合性確認という準備段階に1〜2か月程度かかることが多く、法務局への申請受理後の審査に8か月〜1年以上を要するのが一般的です。東京をはじめ各地の法務局では申請件数の増加により審査期間が長期化しており、準備開始から許可まで全体で1年半〜2年程度を見込んでおくことが現実的です。

 申請件数が増えているいまだからこそ、「いつかは帰化したい」という気持ちがあるなら早めに準備を始めることが、希望するスケジュールで帰化を実現するうえで最も大切なことです。


 今回の内容はいかがでしたでしょうか。「自分の在留歴で申請できるか確認したい」「書類の準備を何から始めればよいか知りたい」「4月以降の運用変更が自分にどう影響するか確認したい」など、ご感想やご質問がありましたら、お問い合わせフォームからお気軽にお聞かせください。

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