見落としがちな専門的財産〜権利関係・知的財産・海外資産編〜
前回の記事「60歳から始める財産目録作成〜現代に必要な新しい視点とは〜」はお読みいただけましたでしょうか。多くの方から「デジタル遺産について初めて真剣に考えました」というお声をいただき、同世代の皆様の意識の高さを実感しております。
今回は、財産目録を作成する際に、デジタル資産以外でも見落としがちな専門的な財産について詳しく解説します。私が親の相続で実際に経験したのも、「こんなものも財産になるの?」という驚きでした。
特に私たち60代の方は、バブル期からの長い人生の中で様々な権利や資産を取得されているケースが多く、それらが思わぬ価値を持っていることがあります。「大した価値はない」と思い込んでいた財産が、実は相続税の計算に大きく影響することも少なくありません。

忘れられがちな権利関係の財産
ゴルフ会員権
バブル期の投資、今の価値は?
バブル期に購入されたゴルフ会員権をお持ちの方は多いのではないでしょうか。当時は数百万円で購入したものの、現在の価値を把握していない方が大半です。
ゴルフ会員権の種類と特徴:
預託金制
ゴルフ場に預託金を預け、退会時に返還される仕組み
多くの場合、ゴルフ場の経営状況により返還額が変動
経営破綻により預託金が戻らないリスクもある
株主制
ゴルフ場運営会社の株主となる権利
会社の業績により配当がある場合も
会社の資産価値に連動して価値が決まる
会員制
会員権そのものに価値がある
人気コースでは購入時より高値で取引されることも
私の知人は、30年前に800万円で購入した会員権を「もう価値はない」と思っていましたが、調べてみると人気コースで400万円の価値があることが判明しました。逆に、別の方は預託金制の会員権でゴルフ場が経営破綻し、価値がゼロになってしまったケースもあります。
リゾート会員権・その他の会員権
多様化する会員権サービス
主な会員権:
ホテルチェーンの会員権(プリンスホテル、東急ホテルズ等)
別荘地の利用権(軽井沢、箱根、伊豆等のリゾート地)
タイムシェアリング権利(海外リゾートの定期利用権)
スポーツクラブの会員権(入会金を支払った老舗クラブ等)
高級レストランの会員権(銀座の老舗料亭、会員制クラブ等)
これらの中には、相続時に名義変更手続きが必要なものや、相続人に引き継げないものもあります。特にタイムシェアリング権利については、海外の法律が関係するため、専門的な調査が必要になることがあります。
互助会の積立金
意外に見落とされやすい財産
冠婚葬祭の互助会に加入されている方は多いと思います。月々少額ずつ積み立てているため忘れがちですが、長年積み立てると相当な金額になっていることがあります。
確認すべきポイント:
積立金の総額
満期時の受取額
途中解約時の取り扱い
相続時の手続き方法
利息や配当の有無
私の知人は、お母様が30年間積み立てていた互助会の積立金が150万円になっていることが相続後に判明し、「まったく知りませんでした」と驚いていました。これらは通帳に記載されないため、契約書類の確認が重要です。
知的財産権と事業関連資産
知的財産権
創作活動や発明の成果も立派な財産
技術者、企業経営者、文筆活動や芸術活動をされている方は、個人名義の知的財産権を持っている場合があります。
著作権
本、論文、写真、音楽等の創作物
ブログやYouTubeなどのデジタルコンテンツ
印税や使用料の将来的な収入も含む
創作者の死後70年間存続するため、長期的な価値がある
特許権・実用新案権
技術者や研究者が個人名義で取得した発明
企業在籍中の発明でも個人名義の場合がある
ライセンス料収入がある場合は安定した資産となる
商標権・意匠権
個人事業主が取得したブランド名やロゴ
デザインに関する権利
事業継続により価値が維持される
私が知っている技術者の方は、退職後に個人名義の特許3件を保有していることに気づき、ライセンス収入として年間約50万円の収益があることが判明しました。
事業関連資産
個人事業主の方は要注意
有形の事業資産:
事業用の機械・設備
商品在庫
車両・工具類
農業関連では農機具、農産物在庫
無形の事業資産:
売掛金、受取手形
営業権(のれん):長年培った顧客基盤や信用
取引先との契約上の権利
仕入れ先との優遇取引権
農業関連特有の資産:
農業協同組合の出資金
農地の小作料債権
共有施設(農道、用水路等)の利用権
農業共済の積立金
営業権は目に見えない資産ですが、事業の継続性や顧客基盤に価値がある場合は相続財産となります。特に地域密着型の事業や専門技術を要する事業では、想像以上の価値を持つことがあります。
海外資産という盲点
グローバル化で増加する海外資産
海外不動産 別荘や投資用として海外不動産を所有している場合、日本の相続税の対象となります。
主な海外不動産:
ハワイ、グアム等のリゾート物件
アメリカ、カナダの別荘
アジア諸国の投資用マンション
ヨーロッパの古城やシャトー
海外金融資産
海外銀行の預金(香港、シンガポール等)
海外証券会社の株式
海外の生命保険(外貨建て保険等)
海外の投資信託・ファンド
海外資産の複雑な問題
注意すべき点:
外国税額控除の適用可能性
現地での相続手続きの必要性
為替レートによる評価額の変動
現地の相続法との調整
租税条約の適用関係
外国金融口座報告制度(FATCA)への対応
海外資産は、日本の相続税法と現地の法律の両方を理解する必要があるため、専門家のサポートが不可欠です。また、時差や言語の問題もあり、事前の整理が特に重要となります。
その他の見落としがちな特殊な財産
債権関係
貸付金 友人や親族への貸付金は、回収可能性を含めて評価する必要があります。借用書がない場合でも、振込記録等により証明できれば相続財産となります。
敷金・保証金
賃貸物件の敷金
ゴルフ場などの保証金
電話加入権の保証金
電気・ガス等の保証金
未収金
給与の未払い分
退職金(死亡退職金は別扱い)
家賃収入の未収分
フリーランスの報酬未収分
税金関係
税金の還付金 確定申告により還付される税金も相続財産となります。特に医療費控除や住宅ローン控除等で高額な還付がある場合は重要です。
前払い費用
生命保険の前払い保険料
固定資産税の前払い分
各種年会費の前払い分
これらは金額が小さくても、正確な財産目録作成のためには記載が必要です。
評価・管理の注意点
専門的評価が必要な財産
これらの専門的な財産は、評価方法や相続手続きが複雑な場合が多く、以下の点で専門知識が必要になります:
評価の複雑さ
市場価格がない財産の評価方法
将来収益を含めた評価の考え方
税務上の評価と実際の価値の違い
手続きの特殊性
名義変更に特別な手続きが必要
現地の法律や規制への対応
専門機関での鑑定や調査が必要
税務上の取り扱い
特別な評価減や控除の適用
外国税額控除の計算
申告書への記載方法
定期的な見直しの重要性
これらの専門的財産は、価値が大きく変動することがあります。年に1回程度は現状を確認し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
次回予告と専門家サポートのご案内
今回は専門的で見落としがちな財産について詳しくお話ししました。「こんなものも財産になるのか」という発見はありましたでしょうか。
次回は、これまでお話しした全ての財産を実際にどのように整理し、財産目録として作成していくかの具体的な手順をご紹介する予定です。
今日からできる行動:
バブル期に購入した会員権等の契約書を確認
互助会や積立関係の書類を整理
海外資産の保有状況をチェック
事業関連の契約書や権利関係書類の確認
これらの専門的な財産については、一人で判断することは困難です。6月28日開催のセミナーでは、こうした複雑な財産を含めた遺言書作成の全体的な進め方について、より実践的にお話しいたします。
専門的な財産の評価方法や、複雑な相続に対応する遺言書作成については、専門家にご相談いただくことをお勧めします。
未来扶桑行政書士事務所では、このような複雑な財産を含めた遺言書作成の全体的な進め方について、専門的なサポートを提供しておりますので、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
同世代の仲間として、専門家として、皆様の「安心できる人生の後半戦」をサポートいたします。
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