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就労系ビザ

2026/2/25

経営・管理ビザの今と今後~ 適正化の波が申請・更新の現場を変える ~

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

外国人が日本でビジネスを立ち上げ、経営者・管理者として活躍するための在留資格が「経営・管理」です。インバウンド需要の拡大や日本市場へのアジア系起業家の関心の高まりを背景に、申請件数は増加傾向にあります。その一方で令和7年に閣議決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対策」では、この在留資格に対する政府の"適正化の視線"が明確に示されました。さらに2025年10月16日には、制度創設以来最大規模ともいえる許可基準の改正が施行されています。今回はまず制度の基本と改正内容を整理した上で、政府が「今すぐ動く」と宣言している施策の中身と、申請・更新への実務的な影響をお伝えします。

経営・管理ビザとは何か

対象となる活動

経営・管理の在留資格は、外国人が日本で事業の経営または管理に従事するための資格です。2015年に「投資・経営」から現在の名称に変更され、純粋な投資活動より実際の事業運営への関与が重視されるようになりました。主な対象活動は、代表取締役・個人事業主として事業を運営する「事業の経営」、部長・工場長等として従事する「事業の管理」、そして取締役として経営方針の決定に参画する活動の三つです。

在留期間と更新

当初の許可は1年の場合が多く、その後の事業実績をもとに更新を重ねることで3年・5年へと在留期間が伸びていきます。更新審査では、申請時の事業計画が実際に履行されているか、税金・社会保険料等の公租公課を適切に納付しているか、事業が継続的に運営されているかといった点が確認されます。

2025年10月16日施行 新しい許可基準の全容

改正の背景

これまでの経営・管理ビザは、資本金500万円さえ用意すれば取得のハードルが比較的低く、実態のないペーパーカンパニーの設立や、事実上の移住目的での悪用が問題視されていました。政府はこうした状況を是正し、「真剣に日本経済に貢献する意思と能力を持つ起業家」を選別するため、制度の大幅な見直しに踏み切りました。

新基準の5つのポイント

① 資本金等の基準:500万円→3,000万円へ大幅引き上げ

法人の場合は払込済資本金(株式会社の資本金の額、または合同会社等の出資総額)が3,000万円以上必要です。資本準備金や利益剰余金との合算は認められません。個人事業主の場合は、事業所の確保費用・常勤職員1年分の給与・設備投資経費など、事業運営のために実際に投下されている総額が3,000万円以上必要です。

② 常勤職員の雇用義務化:選択制から必須へ

旧制度では「常勤職員2名以上の雇用」または「資本金500万円以上」のいずれかで足りましたが、新制度では資本金要件に加えて1名以上の常勤職員の雇用が必須となりました。対象となる常勤職員は、日本人・特別永住者・永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者に限られます。技術・人文知識・国際業務等の就労系在留資格を持つ外国人は含まれません。

③ 日本語能力要件の新設:JLPT N2相当以上

申請者本人、または②の常勤職員のいずれかが、CEFR B2相当(JLPT N2以上等)の日本語能力を有することが求められます。日本語能力要件を満たすための常勤職員については、就労系在留資格を持つ外国人も含まれます。

④ 申請者の経歴・学歴要件の新設

次のいずれかを満たすことが必要です。申請する事業分野に関する博士・修士・専門職学位を有していること、または事業の経営・管理の実務経験が3年以上あること(在留資格「特定活動」に基づく起業準備活動の期間も含む)です。

⑤ 事業計画書への専門家確認の義務化

提出する事業計画書について、中小企業診断士・公認会計士・税理士などの専門家が「合理的かつ実現可能なものであること」を評価・確認した文書の添付が必要となりました。なお、この専門家確認の業務は、行政書士・弁護士による申請書類作成とは別のサービスとして位置づけられています。

政府が「今すぐ動く」と宣言している施策

総合対策では、「経営・管理」の適正化に向けて「速やかに実施する」と明記された施策が二つあります。「将来的に検討する」ではなく、すでに動き始めている、あるいは即座に動かす具体的なアクションです。

一つ目は、同じビルに小さな事務所が集中しているような物件を標的にした実態調査と厳格な処分です。いわゆる「バーチャルオフィス型の事業所」や「名義だけの事務所」への締め付けを意図しています。経営・管理ビザの申請要件として「独立した事業所の確保」が求められていますが、実態を伴わない事務所を使った申請がこれまで一定数存在してきました。今後は同一ビルへの集中状況などを端緒として入管庁が直接実態調査に入り、問題があれば在留資格の取消しや不許可処分を行うという方針が明示されました。

二つ目は、国税の未納・脱税があった外国人の情報を国税庁から入管庁へ提供する範囲を広げ、在留審査に活用するというものです。これまでも税金の納付状況は更新審査で確認されてきましたが、国税庁と入管庁の間で情報共有できる範囲は限られていました。今後はその連携対象を拡充し、税務上の違反があった外国人については入管庁がその情報を受け取って審査に反映できるようになります。平たく言えば、「税金を払っていない外国人経営者は在留資格の更新にも影響が出る」という仕組みが、より実効性のある形で整備されるということです。

この二つの施策は、経営・管理ビザで在留している方にとって直接的な影響を持ちます。事務所の実態確保と公租公課の完全な履行は、今後の在留維持における最低限の前提条件と位置づけてください。

経過措置と更新手続きの留意点

経過措置の概要

2025年10月16日以降に申請した方には新基準が即時適用されますが、施行日前からすでに経営・管理ビザで在留している方(または施行日前に認定証明書交付申請を行い入国待ちの方)には3年間の経過措置が設けられています。2028年10月16日までに行う更新申請については、新基準を満たしていなくても直ちに不許可とはならず、経営状況や新基準を将来的に満たす見込み等を踏まえて個別に判断されます。ただし2028年10月16日以降の更新申請には原則として新基準の充足が必要です。また改正後の新基準に適合していない状態では、経営・管理ビザからの永住許可申請が認められなくなる点にも注意が必要です。

経過措置期間中の更新で特に注意すべきこと

経過措置期間中であっても、更新審査の実務的な厳格化はすでに進んでいます。特に重要なのが公租公課の完全な履行です。法人税・消費税・住民税等の法人税務、代表者個人の所得税・住民税、健康保険料・年金保険料のいずれについても、未納・滞納があると「経営状況が良好でない」と判断され、更新リスクが高まります。前述のとおり税・社会保険情報のマイナンバー連携が本格化するため、未納の状況は審査官の目に以前より明確に映るようになります。

申請時に提出した事業計画と実際の事業活動が大きく乖離している場合は、その経緯を説明する文書を用意することが重要です。また審査の過程で専門家による事業評価書の提出を求められることがありますので、中小企業診断士・税理士・公認会計士等と早めに連携しておくことが望ましいといえます。

2028年10月16日の新基準完全適用に向けては、資本金の増資スケジュール、常勤職員の採用計画、日本語能力要件を満たすための体制整備を、今から逆算して準備を進めておくことが重要です。

その他の当サイトのご参考記事

経営・管理に関するそのほかの関連記事を以下の通りご案内いたしますので是非ご参考になさっていただければ幸いです。

経営・管理ビザ大改正を徹底解説 ~資本金3000万円時代の対応策~

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まとめ

2025年10月16日の改正により、経営・管理ビザは資本金3,000万円・常勤職員雇用必須・日本語能力要件・申請者の経歴要件・事業計画への専門家確認という5つの新基準が課されることになりました。加えて政府はすでに「税・社会保険情報を使って在留中の事業実態を直接確認する」動きを本格化させており、要件を形式的に満たすだけでなく実態の伴った経営を続けることが、これまで以上に不可欠になっています。新規申請を検討している方は5つの要件を最初から念頭に置いた事業設計を、すでにビザをお持ちの方は2028年10月の経過措置終了を見据えた早期準備をお勧めします。


今回のコラムはいかがでしたか?「自分の状況では具体的に何から準備すればよいか」「更新に向けて今何をすべきか」といったご感想・ご質問がございましたら、ぜひお問合せフォームからお気軽にお聞かせください。

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