BLOG

お役立ちBLOG

就労系ビザ

2025/8/31

経営・管理ビザ改正 ~新基準で誤解しやすいポイント~ 

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

日本で起業を考えている外国人の方にとって、「経営・管理」の在留資格は、事業を実現するための重要な選択肢です。2025年10月16日に許可基準が改正され、資本金等の基準の引き上げに加え、常勤職員の雇用、日本語能力、申請者の経歴・学歴など、準備段階で確認すべき事項が増えました。

ただ、「3,000万円を用意すればよい」「日本語能力試験に合格しなければ申請できない」といった断片的な理解では、準備の方向を間違えてしまうことがあります。

私自身、外資系IT企業で外国人材と協働し、その後は国内企業で新規事業の立ち上げや事業運営に携わってきました。その経験からも、起業の準備では、資金・人材・事業内容のつながりを確かめることが大切だと感じています。

今回は、改正後の新基準について誤解しやすい点を中心に、「自分の場合は何を確認すればよいか」を整理します。

3,000万円を用意すれば、それだけで申請できるのでしょうか

新基準で注目されているのが、3,000万円以上という事業規模の要件です。しかし、この金額を満たすだけで「経営・管理」の許可が認められるわけではありません。

事業所の確保、対象となる常勤職員の雇用、日本語能力、申請者の経歴・学歴なども確認する必要があります。さらに、実際に事業の経営・管理に従事することや、事業の安定性・継続性を説明できることも重要です。

ここで注意したいのは、法人と個人事業主では、3,000万円の確認方法が異なることです。

法人の場合は、株式会社の払込済資本金の額や、合同会社等の出資の総額で確認されます。「会社の預金口座に3,000万円ある」「借入金と資本金を合わせれば3,000万円になる」というだけで、資本金等の要件を満たすとはいえません。

個人事業主の場合は、会社の資本金ではなく、事業所の確保、雇用する職員の給与1年間分、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額で確認されます。生活費や個人的な支出まで、事業の資金として一緒に計算できるわけではありません。

また、資本金の額と、日々の経営で必要となる運転資金は、それぞれ確認する必要があります。採用後の給与、家賃、仕入れなどを支払いながら事業を続けられるか、収入と支出の見通しも立てておきましょう。

事業計画や収支の組み立て方は、当サイトの「経営・管理ビザで切り開く新たなビジネスチャンス」で詳しく取り上げています。

常勤職員は、誰を雇用してもよいのでしょうか

改正後は、資本金等の要件に加えて、1人以上の常勤職員を雇用することが必要となりました。資金と雇用のどちらかを選べばよい、という仕組みではありません。

この雇用要件の対象となるのは、日本人、特別永住者、または「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の在留資格を持つ外国人です。

「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格を持つ外国人を雇用すること自体は可能ですが、その方だけを雇用しても、この常勤職員の雇用要件を満たすことにはなりません。

例えば、システム開発会社を設立し、「技術・人文知識・国際業務」で働く外国人エンジニアを採用する場合を考えてみましょう。これは説明のための仮定ですが、開発業務に必要な人材を確保できていても、新基準の雇用要件については別に確認が必要です。

また、業務委託先や派遣会社から来ている職員を、そのまま自社の常勤職員として扱うこともできません。雇用する相手の在留資格だけでなく、雇用形態や勤務実態まで確認することが大切です。

採用計画では、「要件を満たすために誰を雇うか」とともに、その方にどの業務を担当してもらい、継続的な雇用をどう支えるかを考えておきましょう。

経営者本人が日本語能力試験に合格する必要がありますか

日本語能力については、申請者本人、または常勤職員のいずれかが、所定の水準を満たすことが求められます。そのため、経営者本人が必ず日本語能力試験に合格しなければならない、という制度ではありません。

水準は「日本語教育の参照枠」のB2相当とされ、外国人については、日本語能力試験のN2以上や、BJTビジネス日本語能力テストの400点以上などが確認方法として示されています。日本の高等教育機関の卒業など、試験以外の確認方法もあります。

「日常会話ができるから大丈夫」と自己判断するのではなく、どの確認方法に当てはまり、何の資料を提出できるかを調べる必要があります。

ここで、先ほどの雇用要件との違いに注意してください。日本語能力を満たす人として確認される常勤職員には、就労系在留資格を持つ外国人も含まれます。

つまり、雇用要件を満たす職員の範囲と、日本語能力を満たす職員の範囲は同じではありません。

仮に、日本語能力の資料がない永住者を常勤職員として雇用し、それとは別に、N2以上を持つ就労系在留資格の職員を雇用する場合には、それぞれの役割を分けて確認することになります。

日本語能力のある外部通訳や顧問に相談できるというだけでは、申請者または常勤職員について求められる要件を満たしたことにはなりません。

修士の学位があれば、専攻に関係なく対象になりますか

申請者の経歴・学歴については、事業の経営または管理について3年以上の経験があること、または、所定の分野に関する博士・修士・専門職の学位を取得していることが求められます。

学位で確認する場合、その分野は、経営管理、または申請する事業の業務に必要な技術・知識に関係する必要があります。「修士の学位を持っている」という事実だけで判断することはできません。

例えば、技術に関する学位を生かしてその分野の事業を始める場合には、学んだ内容と事業とのつながりを、学位証明書や履修内容などで説明することが考えられます。

経験で確認する場合も、会社で長く働いた年数が、そのまま経営・管理の経験年数になるとは限りません。担当した業務、権限、責任の範囲などを具体的に整理する必要があります。

在職証明書に肩書だけが記載されている場合には、実際に何を管理し、どのような意思決定を行っていたのかを説明できる資料があるかも確認しましょう。

なお、在留資格「特定活動」に基づく起業準備活動の期間は、経営・管理の経験に含まれるとされています。どの活動期間が対象となるかは、在留資格と活動内容に照らして確認することが大切です。

行政書士への依頼で、事業計画の専門家確認も済みますか

改正後は、在留資格決定時に提出する事業計画について、具体性・合理性・実現可能性を評価する専門家の確認が求められます。

出入国在留管理庁が対象として示しているのは、日本の中小企業診断士、公認会計士、税理士です。行政書士が申請書類を作成・整理する業務と、この専門家による事業計画の確認は、役割が異なります。

行政書士に申請を依頼したからといって、行政書士の資格だけでこの確認まで完了できるわけではありません。申請支援と事業計画の評価について、誰がどこを担当するかを確認しておきましょう。

また、専門家の確認を受けたことが、在留資格の許可や事業の成功を保証するものではありません。売上予測の根拠、採用計画、資金の調達方法など、計画の内容を申請者自身が理解していることも大切です。

私自身の事業運営の経験からも、計画書の数字だけを整えるのではなく、「誰に、何を、どのように提供し、事業を続けていくのか」を説明できることが、準備の出発点になると考えています。

スタートアップビザを使えば、新基準は免除されますか

スタートアップビザは、日本で起業準備を進めるための制度です。「経営・管理」の新基準を免除する制度ではありません。

経済産業大臣の認定を受けた実施団体に起業準備活動計画を提出し、確認を受けたうえで、在留資格「特定活動」の申請を行います。対象となる事業や地域、支援内容は実施団体によって異なります。

2025年10月16日には、この制度の要件も見直されました。3,000万円以上の事業規模となる見込みなど、「経営・管理」への移行を見据えた準備が必要です。

そのため、「資金が足りないので、とりあえず入国してから考える」という使い方では、計画の実現可能性を説明することが難しくなります。

利用を検討する際には、資金調達、採用、事業所、日本語能力などについて、いつまでに何を整えるかを具体化しましょう。制度の概要と実施団体は、経済産業省「外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)」で確認できます。

既に在留している方は、経過措置終了時に必ず帰国するのでしょうか

改正前から「経営・管理」で在留している方については、2028年10月16日までの間に行う更新申請では、新基準に適合していない場合でも、経営状況や適合する見込みなどを踏まえて許否が判断されます。

ただし、経過措置があるから何も準備しなくてよい、という意味ではありません。

また、施行後3年を経過した後の更新でも、資本金等が3,000万円に満たないことだけで、一律に不許可となるわけではありません。経営状況が良好で、法人税等の納付義務を適切に履行し、次回更新までに新基準を満たす見込みがある場合には、その他の在留状況も含めて総合的に判断されます。

経過措置と個人事業主の扱いについては、当サイトの「入管、経営・管理ビザFAQ更新 ~現場の不安にどう応えたか~」でも説明しています。

制度の適正化の動向や、事業実態・納税など更新に向けて確認したい事項は、「経営・管理ビザの今と今後」も併せてご覧ください。

起業の準備は、要件を一つずつ確認することから

経営・管理の新基準は、「資金があるか」だけで判断できるものではありません。雇用、日本語能力、経歴・学歴、事業計画がつながって、実際に事業を運営できる体制となっているかを確認することが大切です。

まずは、自分が既に満たしている事項と、これから準備が必要な事項を整理してみてください。そのうえで、会社設立、採用、資金調達などの順序を検討すると、手戻りを減らしやすくなります。

最新の基準や確認方法は、出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」をご確認ください。

未来扶桑行政書士事務所では、起業を検討している方や、外国人経営者との協業を考えている企業の方に向けて、在留資格の確認と申請準備を支援しています。必要に応じて他の専門家との連携も検討し、事業の実現に向けた準備を一緒に整理します。


経営・管理の申請・更新に関するご相談、この記事へのご感想は、お問合せフォームからお寄せください。

※本記事は2026年10月5日時点の公表情報に基づいています。申請に当たっては、最新の制度・提出書類をご確認ください。

無断転載・配布を禁じます。

    一覧に戻る →

    CONTACT

    お問合せ・申請のご依頼はこちらからお願いします。

    090-1906-7399

    受付時間:9:00~20:00
    土日祝日もご相談対応可能
    メール・公式LINEは、24時間受付

    お問合せフォーム →

    HOME