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行政書士資格

2026/2/13

生成AIと行政書士業務のかかわり~40年のIT経験から語る活用と可能性~

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

私は1986年から約40年間、IT業界の最前線で働いてきました。1980年代のコンピュータのダウンサイジング化に始まり、インターネットの普及、ネットワークセキュリティの重要性の高まり、スマートフォンをはじめとするパーソナルデバイスの爆発的な広がり、そして近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進まで――IT業界における40年間の進化の歴史を、まさに体現してきました。

外資系企業や日本企業で、技術革新の波に直接触れながら、ビジネスがどう変わっていくのかを目の当たりにしてきた経験を持つ行政書士として、今回は「AIと行政書士業務」というテーマでお話ししたいと思います。

そして今、生成AIの登場により、私たちは新たな大きな変革期を迎えています。これは単なる技術の進歩ではなく、仕事のやり方、そして生活のあり方そのものを変える力を持っています。より専門的知的パフォーマンスの発揮が求められる行政書士だからこそ、生成AIの恩恵を大きく受けられる職業だと考えています。

90年代のインターネット以来の大変革

インターネットが一般に普及し始めた1990年代、情報へのアクセス方法そのものが民主化され、誰もがグローバルな情報ネットワークにつながる時代が到来しました。

そして現在、AIの登場によって、私たちは再び大きな変革期を迎えています。インターネットが「情報へのアクセス」を民主化したとすれば、AIは「知的作業の生産性」を劇的に向上させつつあります。時間の面でも、質の面でも、これまでとは次元の異なる効率化が可能になっているのです。

数時間かかっていた法令調査が数分で完了し、文書作成の下準備がほんの数秒で整う。行政書士として提供できるサービスの質とスピードが、かつてないほど高まっています。

しかし同時に、この変化は厳しさも伴います。生成AIが作り出したコンテンツが氾濫する時代だからこそ、受け取る情報の真偽を見極める能力が求められます。生成AIが作成した文書を鵜呑みにせず、専門家としての知見で評価し、修正する力が必要です。送り手としても、受け手としても、情報の選別と見極めが求められる――それが、AI時代の新たな課題なのです。

行政書士業務での具体的な生成AI活用法

実は、仕事の労力のうち約20%が「探す作業」に費やされているという調査結果があります。これを月間で換算すると、約32時間――つまり丸4日分もの時間が、探すことだけに消えている計算になります。生成AIは、この時間的ロスを劇的に削減してくれます。

私自身、開業してから様々な場面で生成AIを活用してきました。具体的にどのような活用ができるのか、実際の業務に即してご紹介します。

調査・文書作成での基礎的な活用

在留資格申請や遺言作成といった業務では、最新の法令や判例、行政の運用方針を把握することが不可欠です。生成AIを使えば、関連する法令の検索、改正内容の確認、統計データの収集が短時間で可能になります。

文書作成においても、申請書類の下書き、契約書のドラフト、説明資料の骨子など、基本的な文章構造を持った「叩き台」を短時間で用意できます。こうした「力仕事」を生成AIに任せることで、クライアントとの対話や、個別事情への配慮、最終的な品質確認に集中できるようになります。

ただし、生成AIの出力は必ず一次情報で確認する必要があります。法令、官公庁の資料など、信頼できる情報源で正確性を検証することは、専門家としての責任です。

企画立案の壁打ち相手として

一人で業務を進める士業にとって、企画を検討する際の「壁打ち相手」がいないことは大きな課題です。

私は週3回のブログ投稿を続けていますが、テーマ選定や構成案の作成に生成AIを活用しています。「読者が知りたいと思うテーマは何か」「どのような構成で説明すれば分かりやすいか」といった問いを生成AIに投げかけることで、一人では思いつかなかった視点や切り口が見えてきます。

YouTubeコンテンツの企画でも同様です。生成AIとの対話を通じて、視聴者目線でのストーリー展開を検討できます。一人で考えていると煮詰まってしまうような場面でも、生成AIとの対話によって視点が広がります。

実際、構成案の作成から本文の下書きまで、生成AIを活用することで30分〜1時間程度で完成させられるようになりました。以前であれば4〜5時間はかかっていたことを考えると、大幅な時間短縮です。もちろん、専門的な正確性の確認や、個人の経験に基づく内容の追加など、人間による最終的な編集作業は不可欠です。

学習支援の先生役として

行政書士は常に学び続ける職業です。法改正への対応、新しい業務分野への挑戦、専門知識の深化――学習は業務の一部と言っても過言ではありません。

私は研修で学んだ内容について、不明点や深掘りしたいところを生成AIに質問する形で学習を進めています。問答形式でアウトプットを作成することで、単に読むだけよりも効率的で深い学習ができています。

例えば、在留資格の複雑な制度体系を学ぶ際、生成AIと対話しながら理解を深めました。具体的な疑問を、その場で質問して解決できます。さらに、学んだ内容を文書として作成し、生成AIに添削してもらうことで、知識の定着が一人でも可能になります。

ただし、法律の正確性については、必ず公式資料で最終確認することが重要です。生成AIは学習の効率を高める優れたツールですが、法令の解釈や適用については、一次情報での検証が欠かせません。

経営補佐役として

一人で事務所を運営する行政書士にとって、専門業務だけでなく、経営面での判断も重要な仕事です。しかし、マーケティング戦略の立案や事業計画の策定は、必ずしも得意分野とは限りません。

生成AIは、経営面での強力な補佐役となります。ターゲット顧客の分析、競合調査、コンテンツマーケティングの企画立案など、経営者としての判断を支援してくれます。

LinkedinなどのSNSでの多言語発信も、生成AIの支援によって実現できました。日本語で書いた内容を英語や繁体字中国語に翻訳し、海外からの問い合わせにも対応できる情報発信が可能になっています。一つの投稿で日英中3言語版を作成し、3日程の短期間で合計540以上のインプレッションを獲得できた事例もあります。

また、財務会計の仕訳で不明な点がある場合にも、生成AIに質問することで基本的な知識を補足できます。もちろん、税務の専門的な判断は税理士の領域ですが、日常的な経理処理における疑問点の解消には、生成AIが役立っています。

IT技術サポート役として

多くの士業にとって、IT技術は必ずしも得意分野ではありません。しかし現代の事務所運営では、ウェブサイトの管理、SNSの活用、オンラインセミナーの開催など、IT技術が不可欠です。

私自身、Google Search Consoleの設定、Googleフォームの作成、YouTubeチャンネルの設定など、生成AIに「IT技術の支援スタッフ」として助けてもらいました。専門用語が多く難解な設定も、生成AIに質問しながら一つひとつ確認することで、自力で完了できました。IT業者に依頼すれば費用がかかりますし、独学には時間がかかります。生成AIに質問しながら進めることで、コストを抑えつつ、自分のペースで必要な技術を習得できました。

さらに、ウェブサイトへのアクセス状況の分析や対策についても、生成AIからアドバイスを受けています。こうしたITコンサルタント的な支援も、生成AIから得られます。

ただし、セキュリティ関連の設定や重要なシステムの変更については、慎重に進める必要があります。

その他の活用

この他にも、手続きフローチャートや組織図、プレゼンテーション資料の図解など、視覚的な資料作成にも生成AIが役立ちます。

特別な技術は不要、ただし原則は守る

「生成AIを使いこなすには、プログラミングの知識や特別な技術が必要では?」そう思われる方もいるかもしれません。しかし、実際には特別な技術は不要です。現代の生成AIツールは、普通に日本語で会話するように使えます。

ただし、守るべき原則があります。それは、コンピュータの大原則である「インプットした内容を上回るアウトプットは出てこない」という点です。

生成AIは魔法の箱ではありません。曖昧な指示には曖昧な答えしか返ってきませんし、不十分な情報からは不十分な結果しか得られません。逆に言えば、具体的で詳細な指示を出せば、それに応じた質の高い出力が得られるということです。

私が実践している効果的な指示の出し方をご紹介します。まず、目的を明確に伝えることです。「来週掲載する在留資格のブログのドラフトを作成してください」だけでなく、「来週水曜日に掲載する、特定技能ビザの申請手続きについて解説するブログ記事のドラフトを作成してください。対象読者は特定技能外国人の雇用を検討している中小企業の経営者で、文字数は3,500字程度、です・ます調で、手続きの流れと必要書類を中心に分かりやすく説明してください」と具体的に伝えます。

ポイントは、対象者や用途を具体的に示すことです。さらに、形式や文字数などの条件を指定し、必要な情報を漏れなく提供することです。

このように、生成AIを使いこなすために必要なのは、プログラミング技術ではなく、「自分が何を求めているのかを明確に言語化する力」なんです。

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まとめ:AI時代の行政書士に求められるもの

IT業界に40年余り携わってきた経験から言えるのは、技術の進歩は常に「人間の能力を拡張する」方向に働いてきたということです。コンピュータのダウンサイジングは情報処理を民主化し、インターネットは情報収集能力を拡張し、スマートフォンはコミュニケーション能力を拡張しました。そして生成AIは、人間の知的作業の生産性を、時間と質の両面で劇的に向上させつつあります。

生成AIの登場によって、定型的な文書作成、情報収集と整理、データの分析、基本的な法令の検索といった「力仕事」は、生成AIに任せることができるようになりました。こうした作業はあくまで「手段」であって、行政書士の本質的な価値ではないと思います。

では、行政書士の本質的な価値とは何か。私はそれは、人間だからこそできる仕事だと考えています。

クライアントの状況を理解し、最適な方針を判断する明確な意思決定と目的設定。不安を抱える外国人の方の話をじっくり聴き、人生の重要な局面である遺言作成に寄り添うクライアントとの信頼関係構築。一人ひとりの学歴、職歴、家族構成、将来の計画といった個別の事情を総合的に判断し、最適な申請方針を立てる柔軟な対応。生成AIが作成した文書の最終的な品質評価と責任。そして、法律の範囲内であっても倫理的に問題がある依頼を断る判断――これらは、生成AIには任せられない人間の役割ではないでしょうか。

生成AIによって定型的な作業から解放されることで、私たち行政書士は、より高度な専門性を発揮する業務に集中できるようになると考えています。生成AIは脅威ではなく、強力な味方です。重要なのは、生成AIの力を借りながらも、行政書士としての専門性、倫理観、そして人間的な温かさを失わないことだと思うんです。技術と人間の専門性を適切に融合させることで、これまで以上に質の高いサービスを提供できる時代が来ています。

継続的な学習と実践、そして失敗から学ぶ姿勢――これらは、AI時代においても変わらず重要です。むしろ、変化の速い時代だからこそ、学び続ける姿勢がより大切になっているのかもしれません。


今回のコラムでは、私のIT業界での経験と、行政書士としての実践から、AIと行政書士業務について考えてきました。皆さんは、生成AI活用についてどのようにお考えでしょうか。実際に業務で活用されている方、これから活用を考えている方、生成AIに対して不安を感じている方――様々な立場からのご意見やご感想を、ぜひお問合せフォームからお聞かせください。皆さんからのフィードバックが、私自身の学びにもつながります。

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