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2026/3/25
国際結婚後の通称使用〜使える場面・使えない場面と法制化をめぐる最新動向〜
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
国際結婚をされた方から、「外国人配偶者の姓に変更したいが、職場では旧姓を使い続けたい」「外国姓のままだと仕事の取引先に名前を覚えてもらいにくい」といった声をよく耳にします。こうした場面で活用できる制度が「通称使用」です。
通称とは、戸籍上の氏名とは別に、日常生活や業務の中で使用する名前のことです。日本では通称使用に関する統一的な法律はなく、場面ごとに使用できるかどうかのルールが異なります。さらに現在、この通称使用を法律で正式に認める「通称使用の法制化」をめぐる議論が国会で活発化しており、国際結婚をしている方にとっても無関係ではない動きが進んでいます。このコラムでは、国際結婚における通称使用の仕組みと実務上の活用方法、そして現在進行形の法制度をめぐる議論をあわせてお伝えします。

通称使用とはどのような制度か
通称とは、社会生活上で継続的に使用している戸籍名以外の名前のことです。国際結婚の場面では、主に次の2つのパターンで通称使用が検討されます。
ひとつは、日本人配偶者が婚姻後も旧姓を通称として使い続けるケースです。外国人配偶者の姓に変更した後でも、職場や取引先では旧姓を通称として名乗り続けたいという方が多くいます。もうひとつは、外国人配偶者が日本語的な読みやすい名前を通称として使用するケースです。読みにくい外国姓に代えて、発音しやすい名前を通称として使う場合がこれに当たります。
通称使用は現時点では「黙示的に認められている」制度であり、使用できる範囲は公的手続きの種類ごとに異なります。
住民票への通称記載制度
通称使用を公的に証明できる手段として、住民票への通称記載があります。住民票に通称が記載されると、住民票の写しを使って通称を証明できるようになります。
この制度は主に外国人住民を対象として整備されてきましたが、2019年の住民基本台帳法施行令の改正により、日本人についても旧姓(旧氏)を住民票に記載できるようになりました。
外国人住民の場合、在留カードに記載されている氏名が住民票に記載される氏名となりますが、日常的に使用している通称名がある場合は、その通称を住民票に併記することを市区町村窓口に申請できます。ただし通称として認められるには、その名前を実際に社会生活上で継続的に使用しており、一定の使用実績があることが求められます。申請方法や必要書類は市区町村によって異なるため、事前に窓口へ確認することをお勧めします。
日本人の旧姓(旧氏)については、婚姻等によって氏が変わった場合に、以前の氏を住民票・マイナンバーカードに記載することができます。この手続きにより旧姓が公的に証明されるようになり、各種手続きでの旧姓使用が実質的にしやすくなりました。
通称使用が認められる主な場面
職場・ビジネス上の使用
職場でのメールアドレス・名刺・社内書類・システムへの登録名などに通称を使用することは、一般的に認められています。ただしこれは各企業の就業規則や慣行に基づくものであり、法律で保障されているわけではありません。会社によっては戸籍名での登録を求める場合もあるため、就職・転職時には事前に確認しておくことが大切です。
近年は旧姓使用を認める企業が増えており、特に大企業では旧姓での社内登録・社外対応を積極的に認める動きが広がっています。
パスポートへの旧姓併記
婚姻による改姓後も旧姓をパスポートに併記することが認められています。パスポートに旧姓が記載されることで、仕事上の渡航や海外での本人確認において旧姓を使用しやすくなります。申請の際には旧姓が記載された戸籍謄本などの証明書類が必要です。
各種民間手続き
銀行口座・クレジットカード・保険契約などの民間手続きでは、各機関の規定に応じて通称使用が認められる場合があります。旧姓が記載された住民票や旧姓併記のパスポートなどを証明書類として活用できるケースが増えています。ただし機関ごとに対応が異なるため、個別に確認が必要です。
通称使用が認められない主な場面
法律上の権利義務に関わる手続き
不動産の登記や相続手続き、遺言書の作成など、法律上の権利義務に関係する公的手続きでは、原則として戸籍上の氏名を使用する必要があります。不動産売買契約や登記申請書には戸籍名を記載しなければなりません。
税務申告・社会保険の手続き
確定申告や年末調整など税務上の書類については、原則として戸籍名または住民票上の氏名を使用します。税務関係は税理士、社会保険関係は社会保険労務士の専門領域となりますので、詳細はそれぞれの専門家にご確認ください。
国際的な場面での限界
国際結婚をされている方にとって特に重要な点が、通称使用が国際的な場面では通用しにくいという点です。パスポートに旧姓を併記することはできますが、国際民間航空機関(ICAO)の基準などとの関係から、海外では戸籍上の氏名が正式なものとして扱われます。海外での銀行口座開設・各種契約・外国の公的手続きにおいては、通称ではなく戸籍名または旅券上の氏名が求められることがほとんどです。この点は、通称使用の実務上の大きな限界のひとつです。
国内における通称使用法制化をめぐる議論
現在、日本国内では通称使用の扱いをめぐる議論が大きく動いています。この動向は、国際結婚をしている方の姓の選択にも将来的に関係する可能性があるため、概要をお伝えします。
世論の現状
内閣府が実施した世論調査では、夫婦の名字の在り方について「夫婦同姓制度を維持した上で旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」と答えた割合が42.2%と最も多く、「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」が28.9%、「現在の夫婦同姓制度を維持した方がよい」が27.0% という結果が出ています。国民の4割超が通称使用の法制化を支持している一方、選択的夫婦別姓の導入を求める声も約3割に上ります。
通称使用法制化の動き
自民党と日本維新の会は連立政権合意で旧姓の通称使用の法制化案を2026年の通常国会に提出する方針を明記しました。これが実現すると、現在は各企業の判断に委ねられている職場での旧姓使用に一定の法的根拠が与えられることになります。
一方で2025年の通常国会では立憲民主・国民民主の各党がそれぞれ選択的夫婦別姓を導入する独自の関連法案を提出し、28年ぶりに衆院法務委員会で審議入りしましたが、国会閉幕に伴い継続審議となりました。
経済界からの声
日本最大の総合経済団体である経団連が、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める政策提言を発表し、通称使用によるトラブルが「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る事象であり、企業経営の視点からも無視できない重大な課題」と指摘しました。ビジネスの現場では姓の管理に伴うコストや混乱が看過できない問題となっており、経済界からも制度整備を求める声が上がっています。
通称使用法制化の限界という指摘
通称使用の法制化に対しては、それで問題が解決するわけではないという指摘も出ています。通称はいかなる制度的工夫を施しても正式な氏名に代わるものではなく、また旅券やマネー・ローンダリング対策など日本以外の国が関わる場面で通称を通用させるためには国際的な合意改訂が必要になるという問題があります。
この点は国際結婚をされている方にとって特に実感しやすい課題です。日本国内では旧姓や通称が使いやすくなったとしても、海外の機関や外国人パートナーの本国での手続きにおいては、戸籍上の氏名が依然として正式なものとして求められる状況は変わりません。
なお、選択的夫婦別姓と通称使用の法制化はそれぞれ別の制度であり、どちらが望ましいかについては国内で様々な意見があります。このコラムでは制度の現状と動向をご説明するにとどめ、賛否についての立場は申し上げません。
通称使用の実績を積み重ねることの重要性
通称使用は「継続的・公然と使用していること」が前提となります。ある場面でだけ通称を名乗るのではなく、名刺・メール署名・SNSアカウントなど日常的な場面での使用実績を積み重ねることが、通称としての信頼性を高めます。
特に外国人配偶者が通称名を住民票に記載申請する際には、その通称名を実際に使用してきた実績を示す資料(名刺・公共料金の明細書・郵便物など)の提出を求められる場合があります。通称として使いたい名前が決まったら、早い段階から継続的に使用し始めることが将来的な手続きをスムーズにします。
通称から法的な姓への統一を検討するタイミング
通称使用には実務上の便利さがある一方、戸籍名と通称名の二重管理が生じることで、各種手続きで混乱が起きることもあります。特に相続・不動産・金融資産に関わる手続きでは戸籍名が必須となるため、通称使用を継続しながらも法的な場面では戸籍名を使うという使い分けが求められます。
通称使用ではなく法的に姓を変更したい場合は、婚姻後6か月以内であれば市区町村への届出で外国人配偶者の姓に変更できます。この期限を過ぎると家庭裁判所での手続きが必要になるため、姓の変更を考えている方は早めに判断することが大切です。
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まとめ
国際結婚後の通称使用は、職場や日常生活の中で柔軟に活用できる実務的な選択肢ですが、使える場面と使えない場面があり、法律上の権利義務に関わる手続きでは戸籍名が原則となります。また国際的な場面では通称の限界が生じやすく、この点は国際結婚ならではの課題といえます。
国内では通称使用の法制化をめぐる議論が進んでおり、制度が変わる可能性もあります。現時点での通称使用の活用方法と、将来的な制度変化の動向の両方を意識しながら、自分のケースに合った姓の管理方法を検討することが重要です。住民票への通称記載申請や、通称使用の範囲・実績の積み方など、個々の状況に応じた判断が必要な場合は、行政書士などの専門家に相談することで整理しやすくなります。
今回のコラムはいかがでしたか?「自分の通称は住民票に記載できる?」「法制化が進んだら何が変わる?」といったご質問や、通称使用でお困りのことがあれば、ぜひお気軽にお問合せフォームからお聞かせください。皆さんからのご意見が、今後のコラムのテーマ選びにも役立っています。
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