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就労系ビザ

2026/3/1

「技・人・国」ビザの今とこれから ~「名ばかり専門職」への監視が始まる ~

皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。

「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)は、エンジニア、通訳、マーケター、デザイナーなど、幅広い専門職の外国人が就労するための在留資格です。就労系在留資格の中で最も取得件数が多く、日本で働く外国人の職場に最も身近な在留資格といえます。ところが2026年1月23日に閣議決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対策」では、この技人国についても適正化の方針が明示されました。それだけではなく、2024年においても、技人国の不正運用に対する取締りが実際に刑事事件として顕在化しています。本稿では制度の基本を整理しながら、実際に起きた逮捕事件の内容、政府の対応方針、そして雇用企業・在留外国人双方にとっての実務的な対応について解説します。

技術・人文知識・国際業務とはどのような在留資格か

対象となる活動と3つの分野

技人国は「技術」「人文知識」「国際業務」の三分野をひとつの在留資格に統合したものです。

技術分野は、理工系の専門知識を要するエンジニア・プログラマー・建築士等の業務が対象です。人文知識分野は、法律・経済・経営・社会学等の人文系の素養を要する企画、マーケティング、人事、財務等の業務が対象です。国際業務分野は、翻訳・通訳・語学指導、外国語を用いた広報・PR・貿易業務等が対象で、この分野のみ大学卒業の学歴が不要な代わりに「3年以上の実務経験」が必要となります(翻訳・通訳・語学指導については大学卒業のみで可)。

許可の主な要件

申請が許可されるための主な要件は以下の三点です。第一に、従事しようとする業務が上記いずれかの分野に該当すること。第二に、申請者が大学・短期大学・専修学校の関連分野を修了していること、または10年以上(国際業務は3年以上)の実務経験を有すること。第三に、日本人と同等額以上の報酬が支払われることです。

特に審査で重視されるのが「専攻と業務の関連性」です。たとえば情報工学専攻の方がシステムエンジニアとして採用されるケースは関連性が明確ですが、文学部卒の方が同じSE職に就く場合は、その業務で文学部での素養がどう活かされるかを説明する必要があります。

在留期間

許可される在留期間は5年・3年・1年・3か月のいずれかで、審査の結果や雇用先の安定性等により異なります。

実際に起きた逮捕事件―群馬県の事例から考える

事件の概要

2024年5月、群馬県で人材派遣会社の社長らが入管法違反の疑いで逮捕されました。技人国という専門的な在留資格を持つベトナム人女性らを、約4年間にわたって建築資材工場でタイル張りなどの単純作業に従事させていたというものです。

この事件のポイントは次の三点に整理できます。

  • 技人国の在留資格を持つ外国人を採用・派遣したにもかかわらず、実際の業務は「タイル張り」という専門知識とは無関係の単純作業だった

  • 派遣元の社長は「担当者に任せていた」と供述したが、法的責任は免れなかった

  • 派遣先の工場側も、受け入れた外国人の在留資格を確認し、適切な業務に就かせる責任があるとみなされた

「知らなかった」「担当者が処理していた」では済まない。この事件はそのことを社会に明示した事例といえます。

なぜ違法なのか

技人国は、専門的な知識や技術を必要とする業務に従事するための在留資格です。ITエンジニア・通訳・企画営業・経理・マーケティングなど、大学や専門学校で学んだ専門知識を活かす仕事が対象となります。一方で、工場でのライン作業、タイル張り、清掃、単純な組み立て作業など、専門知識を必要としない業務への従事は認められていません。これは入管法において明確に禁じられており、違反すれば雇用側・外国人本人の双方が処罰の対象となります。

派遣形態が持つ固有のリスク

今回の事件が示すもうひとつの重要な点は、派遣という雇用形態が持つリスクです。派遣元が「専門職として採用」の建前で在留資格を取得させ、派遣先では実態として単純作業に就かせるという構造が、こうした不正を生みやすくしています。

派遣を活用している企業は次の点を自社で確認する必要があります。

  • 派遣社員として受け入れた外国人の在留資格の種別と有効期限

  • 自社での業務内容が、その在留資格の範囲内にある専門的業務かどうか

  • 業務内容に変更・拡張があった場合、在留資格との整合性が維持されているか

「派遣会社任せにしていた」は通用しないということを、群馬の事件は改めて示しています。

政府が問題視している「資格外業務への従事」

制度の趣旨と現実のずれ

前述の総合対策では、技人国について「資格該当性のない業務に従事させている疑いのある受入れ機関や派遣先における活動状況を調査し、審査の厳格な運用を行うとともに許可の在り方を検討する」と明記されています。

これを平易に言えば、「技人国のビザを持っているにもかかわらず、単純労働や接客・清掃・配膳のような専門性を要しない業務に就かせている企業や派遣先を実際に調査し、問題があれば許可を見直す」ということです。外国人労働者を「専門職として採用した」という建前で技人国を取得させながら、実態は工場ラインや飲食店の調理補助・ホールスタッフとして従事させるケースが問題視されてきました。こうした「名ばかり専門職」に対して、政府は現場への直接調査という形で対処する方針を打ち出しています。

速やかに実施される具体的な施策

総合対策の中で「速やかに実施する」と位置づけられている施策として、資格該当性のない業務に従事させている疑いのある受入れ機関および派遣先の活動状況を実際に調査し、厳格な審査を実施するという対応が明記されています。「調査を検討する」ではなく「調査を実施する」という表現であり、すでに動き出していると見るべきです。群馬県の逮捕事件がその予兆であったとも解釈できます。

出入国在留管理庁は、2026年3月9日より技人国の外国人を派遣する際、派遣元と派遣先の双方に対し、単純労働など資格外の活動をしないと確約する誓約書の提出を義務付けをすでに発表しています。

雇用企業が今すぐ確認すべきこと

業務内容と申請内容の整合性確認

在留資格の申請時に提出した「職務内容説明書」や「雇用契約書」に記載された業務と、実際に従事させている業務が一致しているかを改めて確認することが急務です。異動・配置転換・業務内容の変更があった場合は特に注意が必要です。業務内容が大きく変わった場合は「就労資格証明書」の交付申請を行い、新しい業務が現在の在留資格の範囲内であることを事前に確認する方法もあります。

技人国に該当しない業務の典型例

以下のような業務は、技人国では認められない可能性が高いため、現場での実態を今一度確認してください。

  • 工場ライン作業・組み立て・検品などの単純製造業務

  • 飲食店でのホール接客・料理補助・清掃

  • 倉庫内での仕分け・ピッキング・梱包

  • タイル張り・塗装・土木作業などの現場労働

「外国人だから仕方がない」「語学スキルが活かせる場面もある」という解釈で正当化しようとするケースもありますが、業務の主たる内容が専門性を必要としない単純作業であれば、技人国の範囲外とみなされるリスクがあります。

派遣・業務委託形態での注意点

派遣社員として技人国の外国人材を受け入れている企業は、自社での就労業務が技人国に該当する専門的業務であるかを確認してください。派遣先が「専門職として受け入れたつもりだったが実際の業務は補助的作業が中心だった」という状況は、今後の調査の対象になりえます。

報酬の同等性の再確認

日本人と同等額以上の報酬という要件も、更新審査で継続的に確認されます。同じ業務に従事する日本人社員の給与水準と乖離が生じていないか、定期的に見直すことが望ましいといえます。

その他の当サイトのご参考記事

技術・人文知識・国際業務(技人国)に関するそのほかの関連記事を以下の通りご案内いたしますので是非ご参考になさっていただければ幸いです。

技・人・国ビザ申請で押さえるべき3つのポイントと不許可予防策

ホテル業界の技人国ビザ申請:成功・失敗事例から学ぶポイント

技人国ビザでの転職を成功させる方法―業種変更時の手続きと注意点

技人国ビザ職種別完全ガイド~IT・営業・通訳それぞれの審査基準~

技人国ビザと給与水準~適正な報酬額の判断基準~

まとめ

技人国は日本の産業を支える外国人専門職の中核的な在留資格ですが、制度の趣旨と実態が乖離しているケースへの政府の対応は、令和7年の閣議決定によって明確になりました。群馬県の逮捕事件が示すように、不正な運用は刑事事件に発展する現実的なリスクを伴います。

雇用企業にとって大切なのは、申請書類と実際の業務内容の整合性を常に保つこと、そして派遣先も含めた業務実態の管理を自社の責任として行うことです。外国人材にとっては、自分が実際に従事している業務が在留資格の範囲内にあるかを把握しておくことが在留の安定につながります。判断に迷う場合は、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。


今回のコラムはいかがでしたか?「うちの会社で受け入れている外国人の業務が技人国に該当するか確認したい」「派遣での受け入れで注意すべきことを詳しく知りたい」といったご意見・ご質問がございましたら、ぜひお問合せフォームからお気軽にお聞かせください。皆さんからのフィードバックをお待ちしています。

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