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留学・特活
2026/3/4
留学ビザと資格外活動の今後 ~「出稼ぎ留学」に終止符を打つ政府の対策 ~
皆さん、こんにちは。未来扶桑行政書士事務所 行政書士の樋口裕昭です。
日本で学ぶ外国人留学生の数は、コロナ禍からの回復を経て再び増加傾向にあります。留学生は「留学」という在留資格で在籍期間中の学業を主たる活動としており、就労はあくまで「資格外活動許可」を得た上でのアルバイトに限られます。ところが、この資格外活動をめぐっては以前から様々な問題が指摘されてきました。2026年1月23日に閣議決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対策」では、「留学」在留資格の適正化について複数の方針が示されています。本稿では、留学ビザの基本的な仕組みを整理しながら、今後の制度変更の方向性と、留学生を雇用する企業・雇用主が知っておくべき実務的なポイントを解説します。

在留資格「留学」の基本的な仕組み
在留期間と許可の概要
「留学」の在留資格は、日本の大学・大学院・短期大学・専修学校・高等学校・日本語学校等に在籍し、教育を受けることを目的とした在留資格です。在留期間は学校の種別や課程によって異なり、4年・3年・2年・1年・6か月・3か月等が付与されます。
許可にあたっては、受け入れ機関(大学・専修学校等)が適正に運営されていること、申請者が学業に専念できる経済的基盤を有することなどが審査されます。
資格外活動許可とアルバイト
留学生が日本でアルバイトをするには、「資格外活動許可」を取得する必要があります。許可を受けた留学生のアルバイトには以下のルールが適用されます。
週28時間以内(在籍する学校の長期休業期間中は1日8時間・週40時間まで拡大)
風俗営業関連の業務は禁止
複数の事業所で働く場合は合計時間で管理
雇用する企業側にも「資格外活動許可の範囲内で就労させる義務」があります。週28時間を超えさせた場合は不法就労助長罪に問われる可能性があります。在留カードに「資格外活動許可あり(週28時間以内)」の記載があっても、この時間制限は常に適用されます。
政府が問題視している「留学」の実態と施策の全体像
四層構造で進む適正化
総合対策における「留学」関連の施策は、一つのテーマにとどまらず、①在留資格の許可・管理の在り方、②不法就労対策のインフラ整備、③大学等受け入れ機関への規律強化、④留学生への支援制度の見直しという四つの層にわたって展開されています。これを順に解説します。
①資格外活動許可の管理の在り方の検討
総合対策は、「留学生の資格外活動の実態等を踏まえつつ、資格外活動許可及びその管理の在り方について検討する」と明記しています。
これは「出稼ぎ留学」と呼ばれる問題に対応するものです。名目上は留学生でありながら、実態としてはアルバイトを主目的として来日し、週28時間の上限を常態的に超えて就労するケースが長年問題視されてきました。今後、資格外活動許可の付与条件の見直し、許可の細分化、違反時の取り消しルールの厳格化といった方向での改正が検討される可能性があります。
②不法就労対策のインフラ整備(すでに実施中)
総合対策には「速やかに実施する」とされる施策が複数盛り込まれており、不法就労対策については現在進行形で整備が進んでいます。
具体的には、偽造・変造在留カード対策として「在留カード等読取アプリケーション」および「失効情報照会」の普及促進とその機能充実が進められています。このアプリを使えば、雇用主がスマートフォンで在留カードをスキャンするだけでカードの真偽と失効情報を確認できるようになります。政府は事業主に対してこのアプリの使用確認を厳格化する方針を示しており、採用時の在留カード確認が事実上の義務として強化される方向です。
また、外国人雇用状況の届出制度についても、未届・虚偽届出への対応として都道府県労働局・ハローワークと警察等関係機関との連携強化、さらに出入国在留管理庁と厚生労働省の連携強化が盛り込まれています。届け出を怠った場合の罰則(30万円以下の罰金)の適用がより厳格に運用される可能性があります。
さらに、令和9年3月以降には、入管庁が関係機関(国民健康保険・年金・地方税・医療保険等)とマイナンバーを活用して情報を双方向に連携させる仕組みが本格稼働する予定です。留学生の実際の在籍状況・収入状況・保険加入状況等が横断的に把握できるようになることで、制度の不正利用の発見が格段に容易になります。
③大学・専修学校等の受け入れ機関への規律強化
総合対策では、外国人留学生に対する支援の適正化として、大学等の受け入れ機関への規律も強化されます。「外国人留学生の在籍管理の適正を欠く大学等の指定・公表」および「在籍管理の適正性も注視した上での経営に課題を抱える大学等への指導強化」が明記されています。
これは、日本語学校や専修学校の中に、就労目的の入学を実質的に黙認し、在籍管理が形骸化しているケースが問題視されてきたことへの対応です。在籍管理が不適正な機関は名称を公表され、経営が悪化している機関には行政指導が入ることになります。これが実施されれば、「許可が下りやすい入学先」として機能してきた一部機関の選択肢が絞られ、留学資格の許可審査そのものが厳格化される可能性があります。
なお、支援制度の見直しという観点では、主として日本人の博士後期課程への進学を支援する奨学金事業について、事業目的に照らして「外国人留学生への生活費相当額の支援は行わない」という見直しも明記されています。留学生支援のあり方全体が目的適合性の観点から見直される流れにあります。
④在留カードとマイナンバーカードの一体化(令和8年6月~)
総合対策には、「在留カード等とマイナンバーカードの原則一体化」も盛り込まれています。令和8年6月を目途に「特定在留カード等」の運用が開始される予定であり、将来的にはすべての在留外国人がこれを取得することを目指す方針です。この一体化が実現すれば、雇用企業が従業員の在留状況を確認する際の手続きも変化し、従来の在留カードの確認方法が更新されます。雇用企業は早めにこの変化を把握しておくことが望ましいといえます。
加えて、留学生に関連する租税条約についても、外国人留学生等の給与の免税規定を有する条約の見直しを条約相手国に働きかけることが方針として示されています。現在、一部の国との租税条約では日本でのアルバイト収入が免税となっているケースがありますが、今後この優遇措置が縮小される可能性があります。
留学生を雇用する企業が今すぐ確認すべきこと
在留カード読取アプリの導入
在留カード等読取アプリケーションは法務省が提供する無料の公式アプリです。採用時にこのアプリで在留カードを読み取ることで、カードの真偽と失効の有無をその場で確認できます。政府は今後このアプリの使用確認を厳格化する方針を示しているため、早めに導入しておくことをお勧めします。アプリで確認した際は、確認日時・確認結果・担当者名を記録に残す習慣をつけておくと安心です。
出入国在留管理庁 在留カード等読取アプリケーションサポートページ
資格外活動許可の確認は採用時と継続管理の両方で
留学生をアルバイトとして雇用する際の確認手順として、採用時には在留カードの表面で在留資格が「留学」であること、裏面で「資格外活動許可あり(週28時間以内)」の記載があることを確認します。在留期間の有効期限も必ず確認してください。
採用後も、学校への在籍が継続していること、在留期間が更新されていることを定期的に確認することが重要です。卒業・退学・除籍になった時点で留学の資格要件を失うため、そのままアルバイトを続けさせることは不法就労に当たります。
長期休業期間中の特例は証明書の確認が必要
夏季・冬季・春季等の長期休業期間中は週40時間(1日8時間)まで就労できますが、この特例はあくまで「学校が定める長期休業期間中」に限られます。学校ごとに期間が異なるため、留学生本人から在学校の休業期間を示す書類(学校が発行する証明や学事暦のコピー等)を提出してもらい、管理台帳に記録しておくことをお勧めします。
複数事業所での合計時間管理
留学生が他のアルバイト先でも働いている場合、すべての就労先を合算した時間が週28時間以内でなければなりません。他の事業所での勤務時間を申告させる仕組みを設け、合計が上限を超えないよう管理することが雇用企業の責任です。
外国人雇用状況の届出は期限内に
外国人を雇用・離職させた場合、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています。雇入れ日・離職日それぞれから2週間以内が期限で、怠ると30万円以下の罰金の対象となります。総合対策では届出制度の運用強化が明示されており、従来以上に厳格な対応が求められます。
その他の当サイトのご参考記事
留学に関するそのほかの関連記事を以下の通りご案内いたしますので是非ご参考になさっていただければ幸いです。
特定活動46号で広がる可能性〜日本の大学卒業留学生の新たな就労の道
まとめ
留学制度の適正化は、資格外活動の管理見直しにとどまらず、不法就労対策のインフラ整備、受け入れ機関への規律強化、支援制度の見直しという多面的な取り組みとして進んでいます。マイナンバーを活用した情報連携(令和9年3月以降)や在留カードとマイナンバーカードの一体化(令和8年6月目途)が実現すれば、行政による実態把握が飛躍的に高まり、制度の不正利用が従来よりも容易に発覚するようになります。
雇用企業にとっては、採用時の在留カード確認・読取アプリの活用、労働時間の適正管理、外国人雇用状況届出の確実な履行という基本三原則を今のうちに徹底しておくことが、リスク回避の第一歩です。
今回のコラムはいかがでしたか?「読取アプリの具体的な使い方が知りたい」「長期休業期間の証明書はどう取得すればいいか」など、実務的なご疑問やご意見がございましたら、ぜひお問合せフォームからお気軽にお聞かせください。
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